７月の雪あそび｜リアクション

７月の雪あそび

「おや？　ブラックはどこだ」
　写真を撮っていた修は、さっきまで傍にいたブラックを見失った。
　どこへ行った？
　辺りを見回すと、少し離れた場所で一面真っ白い雪から黒い尻尾が覗いている。
　どうやらここは公園のようだ。

　ブラックは雪に飛び込んでいって半分埋まってしまったらしい。
「まったく……好奇心に殺されるなよ」
　やれやれ、と言いながら助けだし、雪と戯れるブラックの写真も忘れず撮る。
「あ、猫さん……」
　公園で雪だるまを作り始めた遠野まほろがこちらに気づいた。
「雪だるま作るの？　あたしも入れて！」
　仲村渠鳴がソリを置いてやってきた。
　初めての雪だるま作りに目を耀かせている。
「俺も混ぜてくれ、手伝おう」
　修も雪だるま作りを手伝うことにした。
「へぇ、それも楽しそうだな！　混ぜてくれよ！」
　志田朝陽も加わった。
「うっ、重い……あんなふわふわした雪だったのに」
「泥を巻き込まないようにな」
　雪玉を押しながら修は思う。
（こんな遊びをしたのはいつぶりだろうな……）
　遊んでいた子供たちも集まって、雪だるま作りに加わる。
（無邪気でいられた時期なんて短かったから）
　今は、大人になることを急がなくていいのだろうか。
　公園の雪を目いっぱい使って、大きな雪だるまが完成した。

「写真も撮れたし、行くとするか」
　修の声に、はしゃいでいた鳴は我に返る。
　気づいたら顔が真っ赤で、手足の感覚もなくなっていて。
　急激に寒さが襲ってきたようで、身震いした。
「雪遊びが楽しくて夢中ではしゃぎ過ぎちゃったみたい。
　ね、この近くでどこかあったかい所、知らない……かな？」
「そうだな……」
　朝陽も考える。旧市街に住んでいる幼馴染の顔が浮かぶ。
　……まだ、会う気にはなれない。
「商店街はどうだ？」
　修が答えた。
「そうだね、一緒に行かない？」
　社交的で明るく、さばけた口調の鳴だが、実は常に冷静さは保っており、羽目を外し過ぎないようにしている。
　だが雪の中子供のように一緒に遊んだことで、いつもより解放的になっているようだ。
「そうだな」
　運転手の風間にはもう少しだけ待ってもらおうか。
　修はそう思いながら、ブラックを呼んだ。

　　　　　　　　　　　　　　○　　　　　　　　　○　　　　　　　　　　○

「お、桜庭。それに弘明寺も」
　調査中の二人と一匹を見つけ、刀が声をかける。
「あ、刀くんだー。雪かき？　お疲れさま」
「よう何か急に寒くなっちゃったな、足元滑らないように気をつけろよ」
「御剣……さんもね」
「ほらにゃーくん、煮干しだぞ」
　こんなときでも持ち歩いている煮干しを、にゃーくんに食べさせる刀。
「今この雪の範囲を調査中なんだ。何かわかったら知らせるね」
「そうか。雪かきが終わったんで猫島軒でラーメンを食べてから帰ろうと思ったんだが、一緒にどうかな？」
「うん、そろそろお昼だし、じゃあ一緒に食べようか」
「猫島軒……美味しいって評判よね」
　三人と一匹は、仲良く猫島軒へ向かったのだった。

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