７月の雪あそび｜リアクション

７月の雪あそび

○耳福池にて

「雪……？　楽しそうなのでコートを着て遊びましょう……」
　御巫時子も雪が積もっていると聞いて、様子を見に行ってみることにした。
　コートを着て、ブーツをはいて手袋をして星ヶ丘寮を出る。
「池が凍っていると聞きました。スケート靴を持っていきましょうか……」
　途中で鳥さんに会った時子は、ろっこんを発動させる。
「こんにちは。雪を見に行くのです……一緒に来ませんか？　寒いのでコートのポケットに入ってると暖かいですよ……」
　同意した鳥さんは時子のコートのポケットに潜り込んだ。
「転ばないように気を付けて歩きますね……」
「鳥さんの巣が心配ですね……元気でしょうか……？　様子を見に行ってみましょう」
　コートのポケットから時々顔を出す鳥さんとお話しながら、巣を見に向かう。
「神魂の影響ですよね、たぶん……じきに元に戻るでしょう」
　目指す樹の下に着き、巣を見上げる。
「こんにちは。良かった、大丈夫でしたね……」
　巣が壊れるようなこともなく、うまく葉の下で雪をよけられているようだ。
　ヒナたちも元気な声で挨拶してくれた。
　

　時子はスケートができると噂になっている耳福池に向かうことにした。
「他にも誰か来られてるでしょうか？」
　子供や大人が楽しそうに滑っている。
「滑れるくらい十分に氷が張っているんですね……」
　鳥さんにも情報を聞いて安全を確認し、スケート靴に履き替え滑り始める。
　しばらく滑ったところで、
「あ、時子ちゃんだ、やっほー。上手だね！」
　クラスメイトの桜庭円が手を振っている。隣には弘明寺能美子もいた。
「円さんたちもスケートですか……？」
「僕たちはスケートじゃなく、雪の調査に来たんだけどね。
　こっちは友達の能美子ちゃん。スケート靴も借りてくればよかったかな。あっ、にゃーくん？」
　にゃーくんも氷の上に乗り、滑りだす。
「冷たくありませんか？」
　ぶつからないよう距離を取りながら、時子が心配そうに聞いた。
「にゃー」
「やっぱり冷たかったみたいね」
　能美子が手を伸ばして助けると、身を震わせてにゃーくんは円の元に戻った。
「疲れちゃったので、私も休みます……」
　時子は氷から上がると、池の近くに雪うさぎを作ってちょこんと並べて置いた。
「わあ、可愛い♪　僕たちも作ろうか」
　小さな雪だるまもできていく。
「鳥さんも雪で作りましょう……形が難しそうですね」
　時子の作った鳥に、円も能美子も目を見張る。
「すごい、上手だね。木の実や枝も使うのね。」
「さすが、細かいところまでできていてちゃんと鳥に見えるわ」
　いつの間にか夢中になって、みんな子供に戻ったみたいに楽しんでいた。

「楽しかったですね……」
「それじゃ僕たちはそろそろ行くね。時子ちゃんは？」
「はい、私は体を温めに温泉に入りに行くつもりです……」
「温泉……いいわね」
「僕たちはロープウェイで雪の範囲を確認してくるよ。最後に雪の中心地に行ってみるつもり」
「お気をつけて……」

　二人と別れた時子は寝子温泉に向かった。
　静かな露天風呂から見える雪景色が美しい。
「賑やかにお友達と遊ぶのも楽しいですが、一人でのんびり温泉につかるのもいいですね……」
　時子は冷え切った体を温め、心の底から癒されたのだった。
　

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