７月の雪あそび｜リアクション

７月の雪あそび

○雪かきする人々

「雪が積もってる……」
　やはり旧市街に住む御剣刀も、神魂の可能性を考えていた。
「調べた方が良いんだろうけれども、人通りの多い参道商店街とか雪が積もって大変じゃないか？」
　先ずは参道商店街の雪かきを手伝いに行こう、そう決めて冬物の制服を着る。
　私服は夏物以外しまい込んでしまっていたが、制服は直ぐに引っ張り出すことができたのだ。
「体を鍛えるため、剣術の修業の一環と考えれば一石二鳥だしな」
　雪かき用のシャベルは持ってないが、事情を話したら商店街で借りられるかもしれない。
　まずは動こう、と参道商店街へ向かった。
「すみません、雪かきの手伝いをしたいんですがシャベル借りられますか？」
「おお、手伝ってくれるのかのお」　
　頭から湯気を出しながら雪かきに精を出す老人……爺レッドこと梅川照喜が振り向いた。
「わし一人では手が回りきらないところだったんじゃ、頼むよ」
　とシャベルを渡される。
「冬でもここいらはめったに降らないんじゃがのう。あ、この家はわしがやるから君は他を頼む」
　と言うと、家の人らしい美人さんにウィンクする梅川。
（雪かきをするのが辛いであろうお年寄りの居る所からと思ったんだが……）
　思い切り元気なお年寄りもいるようだ。
　とにかく教えてもらったお年寄りのところへ向かう。
「よかったら俺が雪かきをしますけど大丈夫ですか？　どこにどけておけばいいですか？」
「ありがとうねえ。それじゃ、こっちに……」
　１軒１軒許可を貰いながら雪かきをする刀。
　冷たかった手も、動いているうちに暖かくなってきた。

　参道商店街にある煙草店「檀屋」（まゆみや）。
　店主の御堂地瑛華は、朝から雪の対応に追われていた。
「……何で７月だってのに雪が降ってるんだい……あぁもう、ただでさえ寒いのは苦手だってのに……。でも雪をこのままにしておくわけには……」
　超が付く程の冷え性だからと、夏でもロングワンピース＋薄手の羽織＋レースの手袋といういでたちの瑛華である。
「コートはこの間片付けたばかりだよ……ブーツも何処に仕舞ったか……もう、面倒くさいねぇ。また引っ張り出してこないと……」
　ぶつぶつ言いながらコートを、そしてブーツも引っ張り出す。
「しかし……物の見事に積もったもんだ。冬の時だってそうそう積もる事はないってのに。
　道にも積もってやがる、あのままじゃあ歩きにくいったらないな……
　……やっぱり雪かきしないと、だな……スコップとかどこにやったかな……」
　奥にしまってあった雪かき用のスコップも引っ張り出し、コートを着てブーツに履き替え雪かきを始める。
「本当は商店街全体を綺麗にするぐらいが商店街に店を持つ者としては正しいんだろうが……
　こんなクソ寒いのに長時間外にいられるかっての」
　雪は見かけによらず重い。
　普段使わない筋肉を使うことで筋肉痛にもなるし、下手をすれば腰をやられることもままあるのだ。
「店の前だけ雪かきして、あとは煙草でも吸いながら酒でも飲もう。
　雪見酒だ雪見酒」
　それを励みに息を切らせながら雪かきをしていると、隣で雪かきをしている少年が目に入った。
　御剣刀であった。
「手伝いましょうか？」
「……ありがとう、助かる」
　一人のときとはスピードが全然違う。
　店の前はたちまち綺麗になった。
「ありがとう、おつかれさん。自販機のコーヒーでよければ飲んで」
　大人の男性相手なら煙草なり酒なり勧められるのだが、未成年相手ではそうもいかない。
　刀は礼を言って温かい缶コーヒーを受けとり、その場を去った。　

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