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「学業のほうはどう?」
「それなりに充実しています。自分からする勉強って、楽しいです」
「お店にも復帰したとか」
「ええ、でもアルバイトです。もうね、強力な後輩が何人も入ってきて、押され気味ですよ」
水谷さんのお仕事はどうですか? と泰葉はたずねた。
「私? まあ……忙しくはしてるかな、それなりに」
先日は某国大統領一家がお忍びで来日し、その対応でてんやわんやであったことなど、『それなりに』ではすまないような大波小波が訪れていたものだが、ホテルスタッフとして当然守秘義務があるので明かすことはない。
「コンシェルジュって、具体的に何するんですか?」
「うーん、お客様のご要望をなんでもかなえる仕事、って言うと聞こえはいいけど。よろずお世話係って感じかな。レストランの予約から、体調不良の急患対応まで、けっこう幅広いよ」
「万能のスタープレーヤーじゃないですか」
「そんなことないない。無理難題もときどきあるし」
真優理は首をすくめてお茶を濁す。今週も無茶振りの一つや二つ、たしかにあった。
近況報告は途切れることなく続いた。互いの仕事のこと、学生生活のこと、共通の話題があるようでいて、実際にはそれほど接点のないふたりが、それでも自然に会話を紡げてしまうのが不思議だった。
そこに、
「泰葉ー、やっぱビール売ってねーべ。午後からだってよチクショーめ」
と、大ぶりのプラスチックカップふたつを手に、派手目な女性がやってきた。これはもう一目でギャル、さもなくばキャバ嬢だとはっきりわかる風貌だ。歩き方からして堂々としている。緩く巻いた明るい髪、布地を持て余し気味の胸元、頭にはサングラスを乗せている。黒のビキニはシンプルなデザインのはずなのに、着ている本人のせいでやけに扇情的に見えた。美人は美人だが、どこか刺々しさを隠さない美人だった。
「あ、水谷さん。こちら、『プロムナード』の同僚で、ナンバーワン常連の沙央莉こと
三木 桜咲香
です。沙央莉、彼女は私のお知り合いで水谷さん」
「あら、はじめまして、沙央莉です」
と、さっきまでの伝法な口調が嘘のように、
沙央莉
からは猫を被った声が出てきた。プラスチックカップをさっと置き、小洒落た仕草で会釈してみせる。
「泰葉のお友達? 素敵な方ですね」
三日月みたいに目を細めて笑う。声のトーンまで、心なしか一段高くなっていた。
探ってる探ってる──真優理は理解した。年上の女への、値踏みと興味が半々といったところか。
「ナンバーワンって言っても、泰葉が週二程度になっちゃったからこその位置ですけれど。いわば繰り上げ当選ですかね」
「繰り上げ当選は言いすぎでしょ」
泰葉が苦笑しながら割って入る。
「事実じゃない? ま、いいけど。あんたがフル出勤じゃないあいだにせいぜい稼がせてもらうわな」
言っていることは自虐的だったりするのだが、口調はどこまでも軽い。真優理は少し面食らいながらも、なんとなく彼女に好感を持ってしまった。裏表がないというのとはちがう。裏があることを、隠す気がまるでないのだ。
「水谷さんは、泰葉とはどういうご関係で?」
「二年前、ここで偶然……というか、まあいろいろあって知り合ったの」
「へえ。じゃあ、泰葉の元カノとか、そういう話ではなく?」
「ちょっと、沙央莉!」
泰葉が慌てて声を上げるのを見て、沙央莉はけらけらと笑った。
「冗談よ、冗談。そんなに慌てなくても」
それから沙央莉は、真優理の顔をあらためてじっと見た。値踏みする様子は同じだが、そこに少しだけちがう光が混じる。
「……水谷さんて、なんか、只者じゃない感じしますね」
「そう? ただのホテルのコンシェルジュだけど」
「いやいや、ステッラ・デッラ・コリーナなんですから。『ただの』じゃないですよ」
「うわすごっ! じゃなくて、どうも私のカンではそれにとどまらないような」
「ごめんなさいね水谷さん、この子、普段は人のことなんて全然見てないタイプなんですけど」
と泰葉が横から口を挟む。沙央莉は肩をすくめた。
「うっさいわ」沙央莉は泰葉にしかめっ面をして、「でも当たってるでしょ?」と真優理にほほえむ。
ただの勘──じゃなさそう。きっとこの子、かなり頭がいい。
「わかっちゃった? 泰葉さんには前に明かしたけど、私も元同業者なの。といっても店は六本木だったけど」
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
桂木京介
シナリオタイプ(らっポ)
ゴールドシナリオ(200)
グループ参加
2人まで
シナリオジャンル
日常
オールジャンル
定員
5人
参加キャラクター数
5人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2026年08月08日
参加申し込みの期限
2026年08月15日 11時00分
アクション投稿の期限
2026年08月15日 11時00分
参加キャラクター一覧
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