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かくして、四人はレンタカーで島をめぐることになったのだ。
さゆるは同居人の
姫木 じゅん
にも、一緒に行かないかと声をかけた。だが、「おばさんが若い子のバカンスに混じっても」と、あっさり辞退された。
じゅんはもうじき三十歳、さゆるよりずっと年上なのだから、本人がそう思うのも無理はない。とはいえ、容姿だけなら五人でいても最年少に見えそうなのだが。
シーサイドタウンから北上して、旧市街をうろうろしてから西部へ。九夜山は中腹まで上った。もちろん、合間の移動は橙子の運転だ。比較的穏やかな気温だったが、水分補給の水筒、日焼け止め、制汗剤は全員ぬかりなく持参していた。
結論から言えば、謎は解けなかった。ただの島めぐりになったというのがさゆるの実感だ。
でも、それでよかった気もする。寝子島の住人なのに、訪れたことのない場所がいくつもあった。旧市街の石畳の小道、九夜山から見下ろす海の色、明治時代に設置されたという三つそろった街灯の前では、全員でくっつくようにして自撮り棒を使った。プロムナードでの話のネタにもなりそうだ。
昼食をとりながら島内地図をひろげて、「次はあそこへ行こう」「いや、こっちのほうが面白そう」とアイデアを出し合いもした。謎解きのことなど、もう半分くらい忘れていた。
橙子の運転はあいかわらず不安定だったが、四人でわいわい言いながら車内で盛り上がった。配信があるからカーステのBGMにも困らない。ヒット曲のイントロクイズをしたり、怪鳥音だらけのカンフー映画のサントラに笑ったり、沈む夕陽にあわせてドヴォルザークをかけてなごんだり──。
いつかまた、とさゆるは思った。
このとき聴いた曲を耳にしたら、今日のことを思い出すかもしれない。
月が昇るころには、さすがに四人とも少し疲れていた。それでも車を降りるまで、話がつきることはなかった。
夜は星ヶ丘の、さゆるの家に泊まった。
じゅんと暮らしだしてからは、せいぜい物置にするくらいで、ほぼ空き家にしていた家だ。といっても、ときおり業者を入れてメンテナンスをしているおかげで、家はホテル同然に保たれている。
「どうぞ」
とさゆるが三人を案内したとたん、
「すんごいお屋敷!」
橙子は唖然とした。
「ひええ」
かれんは目を見張り、
「嘘だろ……」
井乃梨は呆然としたのである。三者三様の反応だった。
スマホで空調を入れておいたので、玄関を開けたときには、ひんやりとした空気が迎えてくれた。屋内の調度品にまた、すんごい、と、ひええ、と、嘘だろ、が繰り返されたことを付記しておきたい。
翌朝、午前六時前。
目を覚ましたさゆるは、他の三人を起こさないよう、そっと洗面所へ出た。各人一部屋を使ってもらうつもりだったのだが、「せっかくだからリビングで雑魚寝しようよ」という橙子の提案に皆が乗ったのだ。
夕食はコンビニ弁当、夜食はスナック菓子。寝間着といってもTシャツに短パンで、井乃梨は始終立て膝で、橙子なんてブラの紐がずっと見えていた。実に不健康な一夜となったが、たまにはこういうのも悪くない。四人でくだらない話をしているうちに、いつの間にか日付が変わっていた。
身支度を終えてリビングへ戻ったが、誰一人目を覚ましていない。
橙子はクッションを抱え込んで大の字になり、井乃梨は几帳面にも毛布だけはきちんとかぶっている。かれんはソファの端で小さく丸まっていた。
起こすのも、悪いかな。
この辺りに来るのも久しぶりだった。さゆるは軽く散歩することにした。
ぐっすり寝られたせいか足取りは軽く、いつのまにかマリーナのあたりまで来ていた。
昨日、記念写真を撮った古い街灯の真下に、ぽつんとひとり、女性が立っている。桟橋のそばだ。
はっとしたのは、誰もいないと思っていた早朝のマリーナに人の姿があったからではない。
彼女の胸に、青い鳥のブローチがあったからだ。
青い鳥、桟橋、そして三つの消えた灯り──。
偶然の一致だとは思うが。
彼女はさゆるを見ていた。
さゆるは、彼女の顔を知らない。
でも、その目に見覚えがあった気がした。
「あの」と女性は言った。「木天蓼大学の、水無月祭で歌っていた方ですよね。覚えていますか、あのとき審査員席にいた──」
ユカ・オオツキ
、という名前を聞いたのは、それから少し後のことだ。
──『エンカウンター』 了
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あとがき
担当マスター:
桂木京介
ファンレターはマスターページから!
桂木京介です。最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
さまざまな出逢いがありましたね。未知の人物が相手のものもあれば、軽く知っているだけの相手も、知っているつもりでも、深くは知らない相手との出逢いだったかもしれません。思いがけない過去との再会も、やはりエンカウンターといっていいでしょう。
出逢い、がもたらしたもの、その先をまた、一緒に紡いでいきたいと思っています。
毎回書いている通り、ご意見ご感想をいただければ次の糧にさせていただきます。お待ちしております。
桂木京介でした。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
桂木京介
シナリオタイプ(らっポ)
ゴールドシナリオ(200)
グループ参加
2人まで
シナリオジャンル
日常
オールジャンル
定員
5人
参加キャラクター数
5人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2026年08月08日
参加申し込みの期限
2026年08月15日 11時00分
アクション投稿の期限
2026年08月15日 11時00分
参加キャラクター一覧
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