＜高給＆メリット満載＞代理出席ウェディング｜リアクション

＜高給＆メリット満載＞代理出席ウェディング

【プログラム −１リハーサル】

（安請け合いしちゃったかなー）
　めんどくさいことになってしまった、かも。シーサイドタウンのカラオケボックスシャンテの一室、獅子島市子は、心の中でぼやきながらも、ソファに寝転び歌詞をインプットすることに必死だった。代理出席アルバイトの事前顔合わせで知り合った４人でセッションし、披露宴の余興で歌を披露することになったのだ。今日はそのリハーサル。本番前日ギリギリでの全員集合だった。
（ラクに稼ぐはずだったのになー……まーいいけどさ）
　頭を悩ますことすら面倒になった市子は、やると言ってしまった手前、ちゃんとしたものが演じられるよう、頭からまた歌詞を追い始める。
　残る3人、授業が終わり制服のままの彼らが部屋に入って来たのはちょうどそんなときだった。

「よろしくなのだ！」
　元気よく入って来た後木真央は、スマホのイヤホンを耳に装着している。歌うことが決まって以来、寝ているときでさえ曲を脳と体に染み込ませてきた。歌唱に加え、タンバリンを担当。通学途中もエアタンバリンで小刻みに動いていた真央に、行きつけの猫たちでさえ近寄り難さを感じるほどだった。
「２人の幸せのために、最高の歌をプレゼントするのだ！」

「ここまで来て言うのもなんだけど、俺歌あまり得意じゃねえんだよなぁ」
　リハーサルさえ緊張気味なのは山田勘三郎。金と飯目当てでこのバイトに登録し、しかも女性陣と絡めると聞いて歌の余興に挙手。しかし直前になって絶賛激しく後悔中だ。
「心さえこもっていれば、ちょっとぐらいの音程のズレはご愛嬌よ」
　背負っていたキーボードをセットしながら仲村渠鳴が言った。彼女に与えられたパートは歌唱＋ピアノ伴奏。人前で弾き語りをするのは久々だが、緊張は真央同様ほとんどしていない様子だ。
「そうだよな、大事なのはノリだな、ノリ」
　勘三郎、自分に言い聞かせて気持ちをほぐす。

　１回きりの、４人そろっての練習。
「あたしたち、イトコって設定なんだから、息はピッタリ合わせないと、怪しまれるのがオチよ」
「そうなのだ！　かりそめでも家族パワーを大発揮するのだ！」
　市子と真央が気持ちを盛り立てる。勘三郎が深くうなずいて応えると、キーボードを弾き始める鳴。

　式前日、彼らは夜遅くまで練習に没頭するのだった。

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