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虹子が詰めてくれたので、七瀬を中央にして三人横並びになった。
木陰はそれなりに涼しく、アイスを食べるには悪くない環境だ。
七瀬は『バリオンチョコ』の袋を開けた。一口かじると、チョコレート糖衣がパリッと割れて白いバニラが顔を出す。
冷たくて、歯ごたえがよくて、甘い。
うん、正解でした。
「そういや」
虹子がカップアイスにスプーンを突き立てながら言った。
「ななっちって、たしか夏生まれだったっけ」
「ええ、七月十七日です」
「あ、もうすぐじゃん」
「まあ、そうですね」
「二十歳(はたち)?」
「はい、一応」
「一応って」
虹子は笑った。剣吉は『ゴリゴリ君』をかじりながら、うんうんとうなずいている。
「二十歳はめでたいがよ。祝わないかんね」
「お気持ちは嬉しいですけど、ちょうど試験前ですし」
「だから試験前に英気を養うっちゅう話やき」
「英気を養う、という名目で遊びたいだけではないですか」
「いや! 両方な!」
正直すぎる!
あきれつつもどうも、剣吉の言葉が妙に心に残った。
そういえば僕、今月で二十歳になるのか……お酒も煙草も許される歳になるとはいえ、なんだか実感わきませんね。
「虹子はもうお酒飲めるんでしたっけ?」
「言わなかったっけ? 私、一浪だからとうに二十歳よ」
ちなみに、と虹子は付け加えた。誕生日は八月らしい。
「飲んだことあります?」
「まあね、というか、わりと」
「虹子はビール苦手だったよな」剣吉が口を挟んだ。
「そうねー。ビールはなんというか、好みじゃなくて。飲むのはもっぱら、アルコール度数低めのサワーかな」
電車の吊り広告でもよく見かける缶入りサワーを、たまにまとめ買いしているとのことだ。
「酔っぱらうほどは飲まないけど、少々ならふわっとして、機嫌よくなるし」
「七瀬は酒、飲まん感じ?」
剣吉が言う。
「いえ、興味はあります」
嘘ではない。誕生日までアルコールには決して近づかない、と誓ってきたわけでもなかったが、なんとなく法律を守ってきただけのことだ。
それに、ウォルターさんと飲むこともできるようになりますし──。
お洒落なバーのカウンター、肘同士でふれあって、
にぎやかな大衆酒場、氷が張っているような冷え冷えのジョッキをつかんで、
花火大会でレジャーシート、大輪の花火を見上げながら、
……さまざまなシチュエーションを想像してしまう。
けれど言えることは、ひとつ。
初めてのお酒は、ウォルターさんと迎えたい。
でも、失敗はしたくない。
だらしなく酔って介抱されるとか、しゃべりすぎて雰囲気を壊すとか、そういうのは避けたかった。
「剣吉はお酒で失敗したことありますか?」
唐突な質問に、剣吉はアイスの棒をくわえたまま少し間を置いた。
「……あるなあ」
「どんな失敗ですか」
「先月の話、だったかのう」剣吉はなんだか遠い目になった。「高校の先輩と飲み会してたはずが、気がついたら知らん駅のホームで寝とったがよ」
「知らない駅!?」
「どこの駅やったかも覚えてない。財布と携帯はあったきよかったけど」
「それは飲みすぎですよ」
「まあ、そうかな」
ぽりぽりと頭をかく剣吉である。反省の色があるにしても、おそらくパラフィン紙ほどに薄い。
「何を飲んだんですか」
「最初はビールで、レモンサワーでハイボールで……あとはよう覚えてない」
「よう覚えてない、って」
「強いやつをちゃんぽんしたかと思う。先輩にすすめられたら断りにくいやん?」
七瀬は深刻な顔になった。隣で虹子が笑っている。
「虹子は笑ってるけど、笑いごとじゃないですよ」
「いや笑いごとではないけどさ」虹子は口元を押さえながら言った。「ケンケンの場合、本人がけろっとしてるから」
「けろっとはしてないき。その日の翌日は夕方までダウンじゃ。二日酔いで」
「それ以来、気をつけてるんですか」
「うん」と言う剣吉の目が、わかりやすいくらいクロールしている。「まあ、アレ? 自分のペース守るようにする? とか、失敗せんためには?」
「なんで疑問形よ? けど、ペースを知っておくってのは大事だと思うな、私も」
虹子のアイスもあらかたなくなったようだ。
なるほど。
七瀬は思う。
自分のペースを知る、ですか……参考になるような、ならないような。
少なくとも、知らない駅のホームで目を覚ますのだけは避けたかった。
うむぅ、ウォルターさんと飲む前に、剣吉たちと飲んで予習しておいたほうがいいんでしょうか?
七瀬の心の声を読んだかのように、ここで剣吉がすっくと立って宣言した。
「では、ついにアダルトの仲間入りをする七瀬君のために、誕生日飲み会をひらかんとだな!」
「ケンケンが『アダルト』って言うと、なんかヤらしい」
「風評被害じゃ!」
あいかわらず絶妙のコンビネーションですね、と笑って七瀬も立った。
気持ちはありがたい。
でもやっぱり、初めてはウォルターさんとがいいな。
「あ、でも十七日は予定があって、ですね。少し先のほうが」
「誕生日当日に予定!? オンナか!」右肩上がりの発音の剣吉を、バッサリ斬るように七瀬は言った。
「バイトです」
七瀬は、嘘をついた。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
桂木京介
シナリオタイプ(らっポ)
ゴールドシナリオ(200)
グループ参加
2人まで
シナリオジャンル
学校生活
オールジャンル
定員
5人
参加キャラクター数
5人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2026年05月06日
参加申し込みの期限
2026年05月13日 11時00分
アクション投稿の期限
2026年05月13日 11時00分
参加キャラクター一覧
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