神出鬼没のわらびもち屋さん！？｜リアクション

神出鬼没のわらびもち屋さん！？

「そうねぇ、その昔はわたしもまだ若くて、美人だって評判だったのよ」
　白沢先生の話をうんうん頷きながら聴いている花風冴来、マリベル・ロイス。
「いいですね、青春……って感じです」
　冴来はうんうんとうなずく。白沢先生は苦笑する。
「青春って言うには年食ってたけどね。もう先生やってたし」
　マリベルが口を挟む。
「その昔、てどれくらい昔なんですか？　10年とか、それくらいですかねえ？　だとしたら、そのおじさんは今いくつくらいなんでしょう？」
「うーん、たしか10年以上は前だったと思うけど……。おいくつくらいになられたのかしらね。いつ見ても元気なおじさんだったけど、さすがにもういい年でしょうね」
　冴来が尋ねる。
「どうして来なくなったのか、ご存知ではないんですね？」
「突然、というか気づいたら来なくなっていたわね。毎年夏だけだから、ある夏の終わりにそういえば今年は見なかったな……そういえば去年も、その前も……ってそういう感じで気づいたの」
　マリベルは顎に手を当て、
「そっか……季節限定でしか来ないものだから、いつ頃いなくなったかはっきりわからなかった、ってわけですな」
　冴来は、
「何も心当たりはないんですか？」
「うーん、そういえば、出稼ぎで離れている間、奥さんに会えなくて寂しいなーなんて言ってたわね。我慢できなくなっちゃったのかしら？」
　マリベルがそれに反応する。
「奥さん？」
「うん、で家族に会いたいって言ってたわ」
「ちょっと待って下さい。奥さんに会えなくて寂しいのと、家族に会いたい……少し言い回しが変わってますけどそれはなにか意味が？」
　マリベルの質問に白沢先生は、
「そういえば、そうね。その時は気にもとめなかったけど」
「ちょっと気になりますね」
　冴来は呟く。
「ちょっと気になるっていうか、それは明確にそういうことやろな」
　とマリベル。
「子供ができた、と」
　冴来が言葉を受ける。
「たぶんな」
　マリベルの返答に、冴来は、　
「推測の上に推測を重ねた推理だけど、そう考えると自然ね」
「うーん、でもそこがわかってもなぁ……」
　マリベルは頭をかく。
　窓の外に視線を移す。すると、その先では御巫時子が校庭で伸ばした指先に雀を止めていた。
　彼女は雀に話しかけている。
　マリベルが大きな声で彼女に声をかける。
「どうなんや、動物探偵さん？　鳥さん達への聞き込みの結果は」
「屋台は確かに存在するそうです。ただ、みんな少し不思議がってます。ちょっと目を話した隙に消えてしまうことがあった、って……」
　冴来が首をひねる。
「どういうことなの……？」

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