神出鬼没のわらびもち屋さん！？｜リアクション

神出鬼没のわらびもち屋さん！？

「あいつら、とんでもない大騒ぎしやがって」
　桐野正也は道路の向こう、交差点近くに停車している舞衣の車と屋台を遠目に見ながら呟く。七音侑はそんな彼を見上げ、
「うー、でもわらびもち先こされちゃった！」
　侑は地団駄を踏む。しかし正也は冷静に、
「よく見ろ、あれは焼き芋だ。それに先こされたら食べられなくなるわけでもないだろ」
　指摘されて初めて気づいたというように、侑は感心した顔で、
「確かに確かに～」
　正也はため息をつきながら頭をかく。あたりを見回す。
「うーん、しかしまた空振りか……このあたりで声が聞こえたと思ったんだが」
「うにー、しかたがないにー。そこのコンビニで何か甘いものでも買う？」
　侑はコンビニを指差す。にこにこと笑いながら。
「そうだな、そうしよう。……何かおごってやろう」
「へへ、それを期待してました」
　しばらくして二人はコンビニから出てくる。正也は怪訝そうな顔をしている。
「うん、でなんでわらびもちを買う？」
　侑は両手を広げてぶんぶんと振りながら、
「うにー、だって食べたかったんだもん！」
「今わらびもちの屋台を探しているところだっていうのに……」
　正也は再びため息をつく。
「しかし、こうやってると小さい頃思い出すなぁ」
　正也が呟く。二人は歩きながらコンビニで買ってきたお菓子を食べている。
「覚えてるか？　夏休みに帰省して兄ちゃんにプールに連れて行ってもらったの」
　正也の問いに侑はうんうんと頷く。
「覚えてるよー！　おにいちゃんと先輩と3人でプール行ったの！　あそこのウォータースライダー楽しかったにー」
　正也も一つ頷いて、
「それでいつも帰るときにわらびもちの屋台が前に止まってるから買って3人で食べながら帰ってたよな」
「そうだねー、食べたにー」
　侑は少し視線を上にあげて、昔を思い出している。
「モナカの皮が皿代わりで食べれるから、最後にそれ食べようとするとぜったい『侑が食べる－！』ってうるさくて泣き出して……」
「そ、そんなこと言ってないー！」
　侑は腕を振り回し、不満を表現。正也は呆れたように、
「言ったよ。ま、食い意地はってるのはあいかわらずだよな」
　正也はからかうように笑う。侑は怒ったように飛び跳ねながら、
「それ言ったら先輩だっていつも『ほら上げたー』とか言って食べさせてくれなかったじゃないですかー。それに一口って言って半分以上ウチのアイス食べたのは忘れてないんだかんねー！」
　侑は身振り手振りを大げさに話している。その侑の手首でブレスレットがきらりと光る。
「そういえば最近ずっとそのブレスレットつけてるよな、お気に入りなのか？」
「えへ、これねークラスの子がくれたんだー！一緒に話しててすっごく楽しいし面白いよ！」
　侑は屈託なく笑う。
「ウチ寝子高来て良かったって思う、おもしろい力も使えるようになったしねー♪」
「クラスの男子からのプレゼント…へー…ま、似合ってるしいいんじゃねぇの？」
　その時、またあの声が聞こえる。
「わらび～もち～」
　二人は顔を上げる。

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