黒猫はパンツがお好き？｜リアクション

黒猫はパンツがお好き？

　セクシーパンツを仕掛けたマリベルは、藍と利平と共に、下着に近づいてくる黒猫を緊張しながら待ち構えた。
「まず、野良かどうか調べなあかんね」
　マリベルが声を潜めて言う。飼い猫であれば十中八九、飼い主は女の敵だろう。
　最初は罠のパンツに発信機を付けてやろうかと思ったが、早々に断念した。
　替わりに、小さなビニール袋に絵具を混ぜて作った色水入れて隠れるようにパンツにとりつけ、ビニール袋に針で穴を開けておき、猫がパンツに食いついたら、こぼれた色水の跡を追おうと考えていた。
　ただ、色水は利平のアイディアで蛍光塗料に変更してある。
「猫さんはやんちゃでいたずら好きな子が多いですから、いたずらのつもりで持っていっちゃったのでしょうね。
　もし猫さんを捕まえる事が出来ましたら、めっ、って叱ってあげませんと」
　藍は、本当に叱るつもりがあるのか、優しい眼差しを黒猫に向ける。
「オスかな？　メスかな？」
　盗んだパンツの用途をベビーベッドの代わりではないかと推測する利平は、黒猫の性別を見極めようと目を細めた。
　しかし、猫はマリベルの下着に鼻先を寄せると、咥えるどころか嫌がって身を引いた。
「なんでなん！？」
　思わず物陰から立ち上がったマリベルに驚き、黒猫が逃げ出す。
「待てっ！」
　利平に続き、マリベルと藍も猫を追う。

　だが、黒猫の逃げた道のその先には、ゲージを持った八十八旗信彦が待ち構えていた。
「レディの不安を払拭するのは紳士の務めさっ！　俺も事件解決を手伝うよ！」
　黒猫に向かって不敵に笑った信彦は、黒く輝くクレジットカードを見せ付ける。
　ろっこん『Ｍｏｎｅｙ　Ｉｎ　Ｔｈｅ　Ｂａｎｋ』の影響で、黒猫は信彦に信頼感・安心感を抱いた。
　逃げる気の起きない黒猫を、信彦はやすやすとゲージに入れる。
「捕獲完了」
　誇らしげにゲージを掲げる信彦の姿を、別の道からやって来た紫蓮が見つけた。
　紫蓮は以前、信彦が痴漢と言われている所を目撃した事があったため、その光景は黒猫を迎えに来た飼い主に見えなくもない。
（まさか、黒猫を使って本当に痴漢を！？）
　紫蓮は駆け寄ると、信彦の腕をしっかりと掴まえる。
「やっと見つけたわよ、黒猫を操っていたのはあなたね！　この痴漢っ！！」
「えっ！？」
　情熱的にレディに迫られたと思いきや、突然の冤罪に信彦は驚いていた。
「ええっ！？」