黒猫はパンツがお好き？｜リアクション

黒猫はパンツがお好き？

　金森の部屋を辞した陽二と円もそこへ駆け付けた。
「猫はどうした？」
　陽二に聞かれ、すぐに猫を捜すと、離れた路地から藍が皆を呼んでいる。

　駆けつけてみれば、利平が生垣に挟まっていた。
　黒猫が入って行くのを見て生垣に飛び込んだものの、すんでのところで逃げられてしまい、身動きが取れなくなってしまったらしい。
　藍に頼まれた信彦と陽二が利平を助け出す。
「くそっ、他に道はないのかよ！」
　利平が毒づく。住宅が密集していて、猫がどちらの方向へ去って行ったのかもわからない。

「にゃーくん、お願いできる？」
　円に頼まれ、にゃーくんは円の肩から降りるとトコトコと生垣の中に入っていった。
「頼んだよー、にゃーくん」
　円はにゃーくんならきっとやってくれると信じて見送った。

　にゃーくんを待っている間に、円は何となく、にゃーくんの拾った首輪をいじっていた。
　金森はこの首輪をした猫を知っていた。
　飼い主がいくらさがしても見つからなかった黒猫。
　首輪を外され、別の主人を選び、パンツを盗むようになったのか。
　それとも、別の真相が隠されているのだろうか。
「あれ？　その首輪…」
　信彦は、見覚えのある首輪をいじる円に思わず声を掛けた。
「これ、誰のか知ってるの？」
「直接は知らないが、見覚えはあるよ。こっちを見てくれるかい？」
　信彦は、円を手招き、壁にあった迷い猫の貼り紙を見せた。
　円の手元の物と良く似た首輪をした黒猫が映っている。
「首輪の内側に、電話番号が刻印されているらしいから、確認してみたらどうだろう？」
　信彦に言われ、貼り紙に記載されていた電話番号と照らし合わせると、案の定一致した。
「この子の首輪なんだ…」

　その時、思っても見ない方向からにゃーくんが現れた。
「行こうぜ！」
　博美が一番に走り出す。
　油断した黒猫が慌てて逃げていくのが見え、皆がそちらに走っていく。
　にゃーくんを抱き上げた円は、迷ったが、信彦と共にその場に留まり、首輪の電話番号に連絡をとる事にした。

　真央は、がおーと黒猫を追いながら頭の中で猫道の続く先をイメージし、人間が入れない所は先回りして追いかけていた。
　しかし、１０キロ超えの丸々としたがおーは、生垣を通れず嵌ってしまい、リタイア。
「がおーの弱点を見破るとは、卑怯なのだ！！」
　真央が急いでがおーを助け出す。
「先に行きます！」
　月は生垣の向こうの木の枝に鋼糸を撒きつけ、塀を越えて追いかけて行く。

　真央と月から遅れてはいたが、八神と小淋も黒猫を追って来ていた。
「こっちだ！」
　八神がＧＰＳが示す子猫達の位置を確認しながら、左の道を指す。
　子猫達が任務を上手く遂行してくれる事を八神は祈ったが、成猫に子猫が体力や足の速さで叶うはずもない。
　ＧＰＳの位置を知らせる点が１つ、また１つと動かなくなる。
　全部の子猫達の体力が尽きる前に、真央と月が黒猫に追いついてくれるようにと情報を送っていたが、それももう最後の一匹となってしまった。
「よく頑張ったな」
　八神が最後まで黒猫を追ってくれた、子猫のマーブルをそっと抱き上げた。
　疲れきったマーブルは、大好きな八神の胸に収まり安心したように目をつむる。
　子猫達をキャリーバッグに回収した八神があたりを見回す。
「見失ってしまったな…」
　子猫達がここまで頑張ってくれた事を無駄には出来ないと思った小淋は、スケッチブックのかわりにメモ帳を取り出した。
『私が、やってみます』
　ペンを滑らせ、メモ帳に『更新』の文字を書くと、ろっこん『神様の手帳』が発動した。
　小淋の意思とは関係なく、手が勝手に動いて、未来に起こり得る出来事を書き記していく。
　今回の予言は、丸く可愛らしい文体と文字で綴られた。判別出来ない時もあるので、読めるだけありがたい。
『月ちゃんお迎えありがとう。それからね、２匹の黒猫と２つの山がみつかるの。あの子は今夜が峠かな。でもね、やっとあの人に会えるのよ。よかったね。マングローブは忘れてください』
　最後のヒントを見た小淋の顔が引きつった。
「『２匹の黒猫』？　犯人は２匹いるっていうのか！？」
　小淋の手元を覗き込みながら八神が考え込む。
「２つの山？　ここらで山といえば九夜山だが、２つとは何かの比喩だろうか…」

「浅山さん！」
　ふいに月が塀の上に姿を現した。
「見つけました。こちらです」
　八神と小淋、がおーを救出した真央と共に月は犯人とおぼしき男の家へと急いだ。

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黒猫はパンツがお好き？

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