黒猫はパンツがお好き？｜リアクション

黒猫はパンツがお好き？

　小淋、月、八神、真央の四人は、桜花寮近くの公園で再び合流した。
「出来たのだ！」
　真央が高速の速さで仕立て上げた、フェルトの小さなリュックを、八神が連れて来た六匹の子猫に背負わせる。
「おネコさま、似合うのだ～」
　猫を崇める真央が、おやつを食べる子猫の頭を優しく撫でる。
「よし、準備が出来たぞ」
　真央の作ったリュックに子供用の携帯を入れ終えた八神が、改めて子猫達を紹介した。
「こっちから、ミルク、マーブル、ミスト、ブルー、パトラ、そして新顔のタイガで、今回の特別捜査チーム・こにゃんこ隊だ」
　黒猫のブラックは濡れ衣を着せられては困るので、今回は留守番している。
「八神さんの猫さん達も協力してくださるのですね」
　不慣れな月が、おそるおそる手を差し出すと、指先の匂いを嗅いだ子猫が頬を寄せてくる。
　ぎこちなくその頭を撫でる月の足元に、別の子猫が寄ってきてにゃあと鳴いた。
　小淋も月の隣に身を屈めると、
『協力ありがとうございます』
　と書いたスケッチブックを子猫達に差し出す。一番近くにいた子猫が、小淋のスケッチブックの角に身体をすり寄せた。
「じゃあ、さっそく作戦を始めようか」
　八神の言葉に頷いた月が、桜花寮と寮に近い犯行現場から割り出した猫の通り道に、マタタビ粉をまぶした下着を仕掛ける。黒い下着のテロンとしたサテンの光沢が、よりセクシーさを醸し出しながら、塀の上に置かれた。念の為にと持って来たブラも、近くの猫が通りそうな場所に置く。
『…意外と、大胆な下着ですね』
　月の下着を見て火照った頬を、小淋がスケッチブックで隠す。
　その隣では、八神が小淋よりも顔を赤くして、目のやり場に困っていた。
　近くの物陰に身を潜め、四人は黒猫を待つ事にする。

　犯人は現れそうにないと諦めかけたその時、公園に一匹の黒猫が駆け込んできた。
　しばらくして月の下着に気付いた黒猫は、あたりを伺いながら、徐々にパンツへと近づいて行く。
「あれか？」
　八神が目を凝らす。
　黒猫が、月のパンツにおそるおそる近づき、鼻先を近づける。
　ここで、八神が黒猫にこにゃんこ隊を差し向けた。
「よし、皆、あの猫と遊んでおいで」
　猫達は、八神に言われたとおり、バラバラに黒猫の方へと向かう。
　突然現れ、じゃれついてくる六匹もの子猫を、黒猫が嫌そうに避けるのを見て真央がむっとする。
　その時、公園に黒猫を追いかけてきた横嶋が現れた。
「パンツをよこせーーーっ！」
　誤解を招きかねない台詞に小淋たちが気を取られた瞬間、黒猫は月のパンツを咥えて勢い良く走り出す。
「追います」
　月が軽やかに物陰から飛び出した。
「こにゃんこ隊！　追い掛けてくれ！」
　八神の言葉がわかったのか、六匹の子猫達も黒猫を探しに行く。
「幼いおネコさまを嫌がるなんて、やっぱり真央ちゃんにはおネコさまを騙る軽犯罪野郎にしか見えないのだ！
おネコさまを落としいれようとする不埒な悪行三昧は、真央ちゃんがぎったんぎったんにしてやるのだ！！」
　そう言って立ち上がった真央は、
「にゃにゃにゃがおー！」
　高らかに叫び、両手を丸める。ろっこん『にゃにゃにゃがおー！』が発動して、三毛猫のがおーが召喚された。
「がおー、あの猫を追いかけて、盗られたパンツを全部取り返すのだ！」
　真央がびしりと指差すと、がおーは黒猫を追って駆けて行く。
　真央もすぐにがおーについて行った。
「あの黒猫、マタタビが効いていないみたいだ。後木の言うように、本物の猫じゃないかもしれない」
　八神は小淋に言いながら、猫達に持たせたＧＰＳ付きの携帯と連動して居場所を教えてくれるサイトを開き、すぐに月と真央に情報が送れるように準備する。
「俺達も行こう！」
　八神と小淋も、黒猫を追って公園を後にした。