～にゃんこ西暦２２２年～ねこネコ王国祭！！｜リアクション

～にゃんこ西暦２２２年～ねこネコ王国祭！！

　　【猫缶の素晴らしさ】

　御剣刀が献上品の列に並んで、必死に絵本に文字を書き込んでいる間。
　先に並んでいた綾辻綾花、恵御納夏朝と遠矢護は、もうすぐ、あと少しと順番を心待ちにしていました。
　「そういえば…ねこシール、持ち込めたかな……？」
　ねこシールの献上を考えていた夏朝だったが、今になってうっかり『持ち込めていなかったらどうしよう』と緊張しながらバッグを漁ります。
　「あ……あった」
　シールは持ち込めたバッグのノートの隙間に挟まっていました。それを見た夏朝が心から安心したのは言うまでもありません。

　そして、王さまへの献上品に猫缶を持ってきた護は、緊張のあまり遠くから見える王さま猫の姿を表紙にスケッチしている綾花の後でぶるぶるしていました。
　遠くからの献上品を見る限り、缶が開発されていない(持つ・放すが限界の猫には難易度が高すぎるのかもしれません)中で。
　そんなものを持っていったら、捕まって何をされるか……という考えすぎかもしれない怯えに苛まれている内に、あっという間に三人の献上品の順番になりました。

　「これは『しーる』というのか！　素敵ニャ！　封蝋代わりにも使えてきっと便利ニャ。しかし、使うのが勿体無い……」
　「これは、お手製の絵が描かれたノート！……おおっ、我が民はこんなにも生き生きしていた生活を送っていたのじゃな！　………」
　王さまは、綾花のページの最後に書かれた「お誕生日おめでとうございます」の文字を見て、何か心を打たれたかのように僅かに俯いて目頭を押さえました。

　護はその光景に、思わず一層の不安を重ねて告げました。
　「王さまへの贈り物はここに置いていいですかにゃ？」
　「目の前まで来て何を言っているニャか。置物とでも思って堂々と渡していけば良いのニャ」
　「あ、あ…はいっ！
　お、お、お、王さま、お、お誕生日おめでとうございますにゃ…」
　あにょコレ…お口に合うかどうか分かりませんにょですけど…」
　「うむ、ありがとうなのニャ──これは……！」
　王さまねこは、護の持っていた猫缶を見るや、思わず衛兵を呼び出しました。
　思わず護は、夏朝の後に隠れます。
　猫缶は丁重に衛兵によって持ち去られていきました。
　このまま護は捕まってしまうのかというその瞬間。

　「よくやったニャ、少年！　見ての通り我が国には、こういう機会以外に、特殊な金属加工製品に触れることが殆ど無いのニャ。やはり手のせいかにゃと思わなくも無いが、いつか、金属によるこのような細工を作ってみたいものだニャ！
　誉めて遣わすのニャ！　少年よ！
　　誰か！　この一行を特別におもてなしするニャ！！」
　言うが早いか、綾花と夏朝、そして護の３人は猫の衛兵さんに持ち上げられてそのままどちらかへ連れて行かれていってしまいました。
　確かに捕まってしまった事には変わりありませんが、きっと今日の祭が終わるまで、三人は楽しい時間を過ごす事が出来る事でしょう。

　刀の方も、絵本を渡し終える事ができました。
　本猫たちの名前を伏せて、一応『今日起きた実話である』ことを伝えて。
　その時、王さまは無難な感想しか言いませんでしたが、
　刀が背中を向けた際にはっきり聞こえてきました。

　「千年湖から魔力がしたと思ったら……寂しいものだニャ……」
　王さまがどんな表情をしているのかは分かりませんが、民を思う名君であることには間違いはなさそうでした。