～にゃんこ西暦２２２年～ねこネコ王国祭！！｜リアクション

～にゃんこ西暦２２２年～ねこネコ王国祭！！

　　【暗幕の向こう側】

　「さて、我輩は用を足してくる故、少し席を離れるニャ。少しだけ待ってるニャ」
　刀が帰った後、王さまは玉座を離れ、王宮の廊下の曲がり角、少し奥まったところへと入りました。
　そこには、なんと八神修と桜井ラッセルがいるではありませんか。
　二人は王宮内に大分前から入り込んで、王さまにこそりと手紙を渡していたのです。

　『誕生日を祝う国民を直接見てみたいと思いませんか？』

　「本当に見れば見るほど我輩にそっくりなのニャ。
　我輩は民に年１回しか会えぬニャ。そなたらがこれだけそっくりなら我輩も半日くらい外に出ても良いと思えるニャ」
　「外に出たら先ほど話した仲間たちと合流して下さい。流石に王さま一人ですと危ないですから」
　「……分かったニャ。条件を呑むニャ。
　それじゃあ、さっそくこっちの猫には献上品の受け取りをやってもらうニャ。椅子に座って物を受け取り続ける簡単なお仕事ニャ。
　もう一人には部屋に待機してもらって、夜の部の神輿に乗ってひたすら揺らされるだけの簡単なお仕事ニャ」
　王さまの手馴れた様子にお互いが目を合わせます。てっきり、不便にしているのかなと思っていたのに。
　「なぁ、八神。この王さまの話を聞いていると、やたら色々と不安に駆られるんだが……なんつーか、助けるというか手伝いのし甲斐が一切無いというか……」
　「気のせいだ。王さまのイメージが若干異なったが気のせいだ」
　「……まあ、トラ預けてこれたからいいけどよ」

　「それじゃあ、我輩のお部屋はすぐこの部屋ニャ。後は任すニャ」
　そう言うと、王さまは部屋から取り出してきた、白い全身着ぐるみをスポンと着こんで、完全にカットを忘れた特殊な長毛種のような猫になりました。
　「それじゃ任せたニャ」
　その言葉を最後に、なんと王さまはとても手馴れた様子で、３階位はありそうな自分の部屋の窓から軽々と飛び降りたのです。
　そして四本足で華麗に着地。そこから二本足で楽しそうに大通りの方へ向かっていきました。
　
　そして……

　「う～っ、おかしいのにゃ！　王さまは必ずここに来るからって修ちゃん言ったのにゃ！」
　「確かになぁ、これは二人が行ってから時間掛かりすぎてる」
　そして、仲間である後木真央と宇佐見望月が待ちぼうけ状態で立ち尽くします……

　……二人が王さまを前に言葉にしなかった微かな不安が、見事に的中した事を知ったのは、まさに後の祭りのこと──

　王さまは、一人で自由に民の顔を見る選択肢を取ったのです。