天地夏冬雪と墨｜リアクション

天地夏冬雪と墨

【クリスマスをにゃんこと】

　ぴかぴか、きらきら。うっすらと白い冠をいただく立派なモミの木には、靴下、手袋、丸いポンポンがゆらゆらり。星も雪の結晶もかがやいて、サンタさんもトナカイくんもにっこにこ。
　ほわほわほわわん、綾辻綾花の想像はふくらみます。
「あっ。にゃんこのサンタさんなんていいかもしれません……！」
「かわいらしいだろうね。探してみようか」
　イメージがふくらんだのか、早川珪もなんだか浮かれがちに見えました。
　綾花のお部屋にででんとツリーを置いたはいいものの、まだ飾り付けのひとつもないもので、オーナメントを買いに行くことになりました。ちょうどいい催しが、近くで行われているとのことでして。
「『寝子島クリスマスマーケット』。楽しみですね♪」
「いいものが見つかるといいね。今日は冷えるというから、あたたかい恰好で出ようか」
「はい、珪さん」

　もふもふのコートを着て、珪さんの首にマフラーをまきまきして、いざ出発！　にゃあとあくびまじりに鳴いた愛猫へ手を振り、家を出ました。

　屋外で催されるクリスマスマーケットは、しんと冷え込むお空の下で、けれど人いきれでむんむん、熱気が満ちていてあまり寒さは感じません。
「わ、すごい人出ですね……！」
「はぐれないようにしないとね」
　きゅ、と手をつないで人の流れへ乗り込みます。
　道の両端にはクリスマスグッズを並べた露店や、いい匂いをただよわせるキッチンカーが入り乱れて軒を連ねています。綾花はくいと珪の袖を引いて、
「なにか食べながら見ませんか。私、おなかが空いちゃって」
「僕も。ポットパイが人気だそうだよ、身体もあたたまりそうだし、どうかな？」
「美味しそう。食べたいです！」
　あたたか～いポットパイでじんわりぽかぽかしながら、露店のクリスマスグッズを物色。サンタやトナカイ、赤い靴下に手袋、キャンディケインなどなど、どれもこれも愛らしくて目移りしてしまいます。
「にゃんこ、にゃんこ。にゃんこのサンタさんは……」
「いるかな？」
「いますよ、きっといます。ふふ、私に見つけられるのを待ってるんです」
「それじゃ、見つけてあげないとね」
「はい！　にゃんこ、にゃんこ、にゃんこさん」
　お目当てはちょっぴり珍しい品で、探すのにはなかなか苦労をしてしまいましたけれど。
「にゃんこさん、にゃんこさんは……あっ！」
　それだけに、見つけられた時の喜びもひとしおです。ひと目見て、びびっ！　と来ました。
「珪さん、ありました！　それも二匹セットです。ふふ、なんだか私と珪さんみたいじゃないですか？」
「寄り添いあって、仲がよさそうだね。じゃあ、これは僕が買おうか」
「えっ、いいんですか？」
　彼はただ、綾花の頭へぽむっと手のひらを添えてから、仲睦まじいにゃんこサンタのセットを買ってくれました。
　その他にも、ツリーへ飾るオーナメントを見つくろっていくつか購入し、綾花はほくほく。クリスマスグッズに負けじと、きらきらの笑顔がこぼれました。

　綾花のお部屋へ戻ったら、さっそくツリーを飾り付けます。ふにゃふにゃ、寝ぼけまなこの黒猫がおかえりを言うように鳴きました。
「ただいま、クロワ。あ、これはお土産じゃないよ、イタズラしちゃダメ」
　サンタにゃんこの二匹は、よく見えるように真ん中へ。オトモのトナカイにゃんこをまわりに配置して、小さくてかわいい靴下や手袋も、きらきらひかひかとまぶしいオーナメントボールも、ところせましと吊り下げます。あわせて買った電飾もくるくるくるり。
「珪さん、お星さまをお願いできますか？」
「よし」
　てっぺんの手の届かないところには、きゅうと星を抱いたにゃんこの飾りを珪さんが取り付けて、ツリーは完成！　綾花と珪は思わずハイタッチです。
「それじゃ、点灯しますね」
　ぱちんとスイッチを入れますと……ぴかぴか、きらきら。うっすらと白い冠をいただく立派なモミの木に、靴下や手袋、丸いオーナメントボールがいくつも。星や雪の結晶がきらめき、電飾もぴっかぴか。サンタにゃんこにトナカイにゃんこもにこにこ、微笑んでいます。綾花の思い描いた、素敵なクリスマスツリーが出来上がりました。
「やった♪　珪さん、ありがとうございます。立派なツリーになりました」
「うん、頑張った甲斐があったね」
　にっこりな珪さんに肩を抱かれて、ツリーを見つめます……にゃあにゃあ、ふにゃあ！　黒猫をそっと抱き上げて、喉元をくりくり。ごきげんな様子で、あくびをひとつ。
「クリスマスが楽しみですね」
　もうすぐきっと、雪も降るでしょう。ホワイトクリスマスになったらいいな。願いを込めながら、綾花はそっと頭を彼の胸元へあずけました。

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天地夏冬雪と墨

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