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- 00月00日生 00歳
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Come and Get It
前日の小雨が嘘のように晴れ、海風が乾いた潮の匂いを運んでくる休日。シーサイドアウトレットは開店直後からすでに大繁盛だった。
人、人、人！ どこを見ても店の紙袋やショッピングバッグがひしめき合う。地元客だけではない。国内外からの観光客らしい姿も多く、海辺の祭りでも始まったかのような熱気に満ちていた。
そんな雑踏の中心、飲食店街の一角にあるカジュアルダイナー『Neko’s Moanin’』で、白 真白は今日もエプロンの紐をきゅっと結び直す。慣れてきたとはいえ、まだどこかぎこちない。
木天蓼大学に入学してから初めてのアルバイトだ。時給は良い。いや、むしろ良すぎるといっていいくらいだ。されどそれも故（ゆえ）あってのこと。なぜならこの店のランチタイムは、ほとんど戦場のすさまじさだからだ！ 午前十一時を過ぎるころにはすでに疾風怒濤、時計の針が爆速で回っているかのように、あらゆる業務が一斉に襲いかかってくる。
「いらっしゃいませー！ お席のほうご案内します！」
声を張り上げても雑音にかき消されそうだ。それでも真白は、笑顔だけは崩さない。しかし、
「……はい、こちらメニューです。あ、ご注文ですね、少々お待ちくださーい！」
今日もすんごいことになりそうだね──内心冷や汗をかいている。
通常の三倍のスピードで、接客し注文を取り皿を運んで片付けてまた接客、目まぐるしく活動しなければ追いつけないという忙しさだった。
店はオールドファッションなアメリカンダイナーをイメージしたつくりで、数店舗あるが、そのすべてが寝子島にしかないご当地チェーンだ。『寝子島限定！』としばしば雑誌やウェブメディアで取り上げられるせいか、このところ加熱に近い混雑ぶりで、ひどいときには二時間待ちもざらである。
店員はホットに駆け巡っているが店内はクールだ。レトロでキッチュな色彩に満ちていた。
チェッカーボード調の白黒タイルが光を跳ね返し、その上には客でぎっしり埋まったテーブル席が並ぶ。奥には赤いビニール張りのブース席がずらりと続き、さらにカウンター席では、金属製のスツールが特別感を添えていた。
天井にはシーリングファンがゆったりと回っている。冷房が効いた店内ではほとんど飾りなのだが、その緩やかな動きが空間に穏やかな涼味を添えていた。
四人がけのテーブルもしくはスツールで、名物の山盛りフレンチフライとフレッシュチーズバーガーを前に、おかわり自由のコーヒーを持ってセルフィーを撮る──そんな“寝子島式アメリカンダイナー体験”が、このところ SNS でバズっているという。
ドア脇、入店待ちの長椅子はとうに満席であり、さらに数人が立って順番を待ち、外の通りにも壁に沿って列が伸びていた。今日もおそらく、最低でも一時間半待ちは覚悟してもらうことになるだろう。
さて真白の働きぶりに戻ろう。彼女は伝票を手にスタッフ用の扉を押して、華やかなホールから一転、裏方のバックヤードへと滑り込んだところだ。
先ほどまでの客席側のライトな喧噪とはちがい、ここでは仕事の音がむきだしだ。スタッフ通路では連携を取る声、食器のカチャカチャいう音がぶつかり合い、さらに奥、熱気渦巻くキッチンでは湯の沸騰する音にフライパンの焼ける音、注文票を吐き出すプリンター音に、「五番テーブルの注文品、まだ！？」「あと少し！ 待って！」「十二番は！？」といった切迫した叫びが重なっている。
不協和音のただなかに真白は、息を詰め突入するようにして切り込んでいく。なんとか自分の運ぶ皿を確保すると、今度はホールへ一直線だ。それでも休む暇はない。皿を受け取っては客席へ、空いたグラスを下げては再びバックへ。走る寸前の早足がデフォルトだった。額に浮かんだ汗は、忙しさという波に呑まれてしまえば、意識の表層からあっという間に消えていく。
「お待たせしました、追加のご注文ですか？ はい……こちらと、こちらと、こちらですね。ありがとうございます！」
笑顔。呼吸。歩く。運ぶ。
それだけで、時間は溶けるように過ぎていくのだった。
トーストが焼き上がるのを待ちながら、思わず壁にもたれかかる。
……ふぅ。ランチタイムはやっぱり忙しいね。
時給が良いからこの時間に入ったのだが、それを帳消しにして余りある疲労感がどっと押し寄せていた。
それでも真白は休むより先に、『次のお皿』へ目が向いてしまう。
っと、料理できたみたいだし……運ばないと。
柱時計を見上げてみれば、さっき十一時前だと思ったばかりなのに、もう午後一時台も終盤にさしかかっている。
うん、ランチタイムが終わるまであともうひと踏ん張り、がんばるぞー。
萎えかけていた膝に力を入れ、真白は気合を入れ直した。
人、人、人！ どこを見ても店の紙袋やショッピングバッグがひしめき合う。地元客だけではない。国内外からの観光客らしい姿も多く、海辺の祭りでも始まったかのような熱気に満ちていた。
そんな雑踏の中心、飲食店街の一角にあるカジュアルダイナー『Neko’s Moanin’』で、白 真白は今日もエプロンの紐をきゅっと結び直す。慣れてきたとはいえ、まだどこかぎこちない。
木天蓼大学に入学してから初めてのアルバイトだ。時給は良い。いや、むしろ良すぎるといっていいくらいだ。されどそれも故（ゆえ）あってのこと。なぜならこの店のランチタイムは、ほとんど戦場のすさまじさだからだ！ 午前十一時を過ぎるころにはすでに疾風怒濤、時計の針が爆速で回っているかのように、あらゆる業務が一斉に襲いかかってくる。
「いらっしゃいませー！ お席のほうご案内します！」
声を張り上げても雑音にかき消されそうだ。それでも真白は、笑顔だけは崩さない。しかし、
「……はい、こちらメニューです。あ、ご注文ですね、少々お待ちくださーい！」
今日もすんごいことになりそうだね──内心冷や汗をかいている。
通常の三倍のスピードで、接客し注文を取り皿を運んで片付けてまた接客、目まぐるしく活動しなければ追いつけないという忙しさだった。
店はオールドファッションなアメリカンダイナーをイメージしたつくりで、数店舗あるが、そのすべてが寝子島にしかないご当地チェーンだ。『寝子島限定！』としばしば雑誌やウェブメディアで取り上げられるせいか、このところ加熱に近い混雑ぶりで、ひどいときには二時間待ちもざらである。
店員はホットに駆け巡っているが店内はクールだ。レトロでキッチュな色彩に満ちていた。
チェッカーボード調の白黒タイルが光を跳ね返し、その上には客でぎっしり埋まったテーブル席が並ぶ。奥には赤いビニール張りのブース席がずらりと続き、さらにカウンター席では、金属製のスツールが特別感を添えていた。
天井にはシーリングファンがゆったりと回っている。冷房が効いた店内ではほとんど飾りなのだが、その緩やかな動きが空間に穏やかな涼味を添えていた。
四人がけのテーブルもしくはスツールで、名物の山盛りフレンチフライとフレッシュチーズバーガーを前に、おかわり自由のコーヒーを持ってセルフィーを撮る──そんな“寝子島式アメリカンダイナー体験”が、このところ SNS でバズっているという。
ドア脇、入店待ちの長椅子はとうに満席であり、さらに数人が立って順番を待ち、外の通りにも壁に沿って列が伸びていた。今日もおそらく、最低でも一時間半待ちは覚悟してもらうことになるだろう。
さて真白の働きぶりに戻ろう。彼女は伝票を手にスタッフ用の扉を押して、華やかなホールから一転、裏方のバックヤードへと滑り込んだところだ。
先ほどまでの客席側のライトな喧噪とはちがい、ここでは仕事の音がむきだしだ。スタッフ通路では連携を取る声、食器のカチャカチャいう音がぶつかり合い、さらに奥、熱気渦巻くキッチンでは湯の沸騰する音にフライパンの焼ける音、注文票を吐き出すプリンター音に、「五番テーブルの注文品、まだ！？」「あと少し！ 待って！」「十二番は！？」といった切迫した叫びが重なっている。
不協和音のただなかに真白は、息を詰め突入するようにして切り込んでいく。なんとか自分の運ぶ皿を確保すると、今度はホールへ一直線だ。それでも休む暇はない。皿を受け取っては客席へ、空いたグラスを下げては再びバックへ。走る寸前の早足がデフォルトだった。額に浮かんだ汗は、忙しさという波に呑まれてしまえば、意識の表層からあっという間に消えていく。
「お待たせしました、追加のご注文ですか？ はい……こちらと、こちらと、こちらですね。ありがとうございます！」
笑顔。呼吸。歩く。運ぶ。
それだけで、時間は溶けるように過ぎていくのだった。
トーストが焼き上がるのを待ちながら、思わず壁にもたれかかる。
……ふぅ。ランチタイムはやっぱり忙しいね。
時給が良いからこの時間に入ったのだが、それを帳消しにして余りある疲労感がどっと押し寄せていた。
それでも真白は休むより先に、『次のお皿』へ目が向いてしまう。
っと、料理できたみたいだし……運ばないと。
柱時計を見上げてみれば、さっき十一時前だと思ったばかりなのに、もう午後一時台も終盤にさしかかっている。
うん、ランチタイムが終わるまであともうひと踏ん張り、がんばるぞー。
萎えかけていた膝に力を入れ、真白は気合を入れ直した。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2025年11月17日
- 参加申し込みの期限
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- 2025年11月24日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2025年11月24日 11時00分
