大学の名は
木天蓼(またたび)大学。通称、マタ大!
そしてサークルの名は
異世界探検部。通称、イセ探!
「……誰や! 『百貨店?』とか言いよんのはっ!」
あらぬ方向へ吼えたのは、青い髪の美少年、二年生
綺生 煌牙(きりゅう・こうが)である。
「さすが関西人ですねっ、ツッコミがカミソリみたいに鋭い!」
ぱちぱちと手を叩いたのは、一年生の新入部員
羽生 碧南だ。
長身スレンダー、茶髪ボブのスポーティな美女。その素直な称賛に、煌牙は頭をぽりぽりかきながら言う。
「どもおおきに羽生はん。あー、でも関西人がみんなこんなボケ&ツッコミやっとるわけやないんで、そこよろしうに」
「そうなんですか? 大阪方面では日常的に『儲かりまっか』『ぼちぼちでんな』『ぼっちなんかー?』『ちゃうわー!』とかやってるのかと思ってました」
やはり一年生、黒髪ポニーテールの
響 タルトが首をかしげながら言う。
「それ偏見やへんけーん! 風評被害や~」
ぶーぶー文句を言いながらも、煌牙は次の話に入った。
「なんや日程決めたときに限って、雨がぎょーさん降ったりやんだりでなぁ。予定、延び延びになってもうたけども──」
腰に手を当て、快晴の空をにらむ。
「今日はやっと探検に行けるでぇ、
髑髏島!」
彼らの現在地は寝子島漁港だ。これより木天蓼大学異世界探検部・通称マタ大イセ探は、寝子島近海の無人島めざし出港するのである。目的は、島にあるという──というか『ある』と勝手に想定している──異世界に通じる門[ゲート]の発見だ。といっても手がかりは皆無、かなりおおざっぱな計画でしかないので、単にアウトドアを楽しんで帰ってくるだけになるかもしれないが。というかイセ探のこれまでの活動はおおむねそうだが。
「髑髏島って……本当は三木島(みきじま)っていうらしいですね?」
碧南がスマホ画面を差し出す。
「あかんて、そんな名前盛り下がるや~ん」
煌牙は大げさにのけぞった。
「『三木島』ってなんか字画も少ないですしね。物足りないというか……」
タルトまで素直に首をかしげる。
「せやで響はん、ええ指摘や! 異世界へのゲートっちゅうのはな、もっとこう、ワクワクする名前のところにないとアカンのや! 髑髏島でええやろ髑髏島で。いてまえスカル・アイランド! どやー、って感じで!」
「オホー。『髑髏島』、スウェーデン語だと『Dödskalleön』になるヨ!」
すっと会話に割り込んできたのは、三年生にして異世界探検部の創始者兼部長、北欧出身の
オルガ・オングストロームだ。この場で一番の小柄ながら、燦然たるプラチナブロンドで妖精みたいな顔立ち、存在感なら煌牙にも負けてはいない。
「なに? どどすかどん?」「いんや、"Dödskalleön"ヨ」「どんがらどん?」「煌牙くんそれ絶対わざとまちがえてるでしょ……」
などとやっている先輩がた──なお最後の発言は、心優しきマッチョマン
重 錘左衛門(おもし・すいざえもん)二年生である──たちの空気をちょっと離れた場所で眺めつつ、碧南とタルトはひそやかに顔を寄せた。
「なんというか、イセ探ってにぎやかだよね」
「ほんと。みんなキャラが濃いっ」
タルトが口元を押さえて笑う。
「でも楽しそうじゃない? 響さんは探検、好き?」
「僕? うーん……探検自体は面白いけど、泊まりとなると初なんで、まだ『好きになれそう』って段階かも」
タルトはポニーテールをつまみ、少し照れたように言った。
そのとき、堤防の向こうからエンジン音が近づいてきた。
「おっ、チャーター船来たでーッ!」
煌牙が大きく手を振る。
白い小型船が波を切ってこちらへ寄ってくる。ふだんは釣り船として使われているらしい。
日差しを受けて船体がキラリと光った。船縁に立って大きく手を振っているのは、碧南の彼氏
鷹取 洋二二年生だ。彼の隣には
シュリー・リンもいて、こちらは洋二に比較するとずいぶん、照れくさそうに手を振っている。
「船って、小さいのだとああいう感じなんだね」
タルトが不安と期待の入り交じった目をする。
「響さん、船酔いしやすいタイプ?」
「うーん、わかんない。小さい船、初めてで」
「じゃあ、揺れたら言ってね。寄りかかってもらっていいので」
碧南が自然に言うと、タルトはほっと微笑んだ。
停泊した船めがけ、
「よーし、イセ探御一行、乗船ターイム!」
乗りこめー、とオルガが声を上げた。
潮風が吹き抜け、碧南の茶髪ボブがふわりと揺れる。
「じゃ、行こっか、響さん」
「うんっ!」
ふたりは並んで桟橋を渡り、揺れる小型船のデッキへと乗り込んだ。
これまで山や洞窟行きはあったものの、無人島行きはこれが初! テントも積んで一泊二日だ。
青い空の下、マタ大異世界探検部初となる『無人島探検』が、いよいよ幕を開ける。
果たして、異世界へのゲートは見つかるのだろうか?
ここまでお読みいただきありがとうございます。桂木京介です。
今回もガイド本文が長いという(悪い意味で)通常運転ですが、参加に当たって読む必要はありません。
羽生 碧南さん、響 タルトさん、ガイドへのご登場ありがとうございました!
ご参加の際は、このガイドにこだわらず自由にアクションをおかけください。
まず、お詫びを
最近、桂木は家庭の事情でしんどい状況がつづいており、執筆にかけられる時間がどうしても少なくなっています。
それでも、落ち込みそうなときに『らっかみ!』の世界に触れ、活き活きと遊んでくださる皆様から元気をいただくことで、気持ちを立て直すことができています。本当にありがとうございます。
ただ、従来と同じペースや規模でシナリオを回す余裕は、正直に申しまして現在はありません。
そのため、今回のシナリオは参加対象者を絞った、少人数向けの募集とさせていただきます。
ご不便をおかけしてしまうこと、心よりお詫び申し上げます。
概要
気持ち的にはこのシナリオの続編。本作はふたたび木天蓼大学生だけを参加対象にしたシナリオとさせてください。
といっても新入生・在学生の区別はありません。OBやOGといった『元マタ大生』でもOKです。
多少なりともマタ大に関わっている話であれば、舞台については大学の内外を問いません。
大学生活、初のコンパ、アルバイト奮戦記や研究生活、レポートに追われてヒーみたいな内容から、大学時代のアルバムをめくって懐かしむ、大学時代の恩師から突然のお誘い(と思ったら学会の手伝い)、『卒業生に聞く』と銘打って学内新聞のインタビューを受ける側になる……などなど、いろいろなパターンが想定できるのではないでしょうか。
時期はひきつづき寝子暦1372年の6月です。雨が降ったりやんだり忙しい日々ですが、ときおりは晴天にもなります。
ガイドは晴天ですがもちろん、天気が崩れがちの一日であってもOK。大雨は拙作の前シナリオでやりましたので、今回は降雨してもほどほど……くらいを想定しています。
髑髏島(三木島)について
イセ探に同行して島に挑む場合は、この後大風が吹いて船は大揺れ、船酔いしやすい人はもちろん、ふだん船酔いしない人でもグロッキーになるような凶悪な状況が約二時間にわたって待ち受けていることだけは予告しておきます……。(もちろん、まったく影響を受けない人もいるでしょう)
髑髏島なんて言ってますが、これは異世界探検部のオルガ部長が勝手に呼んでいるだけで、実際はちょっとした山林と砂浜があるだけの穏やかな島を想定しています。といってもアクション次第では遺跡とか出てくるかもしれません。
NPCについて
制限はありません。ただし相手あってのことなので、必ずご希望通りの展開になるとはかぎりません。ご了承下さい。
※でも[TOS]のキャラクターは出せません。
特定のマスターさんが担当しているNPCであっても、アクションに記していただければ登場できるよう最大限の努力をします!
NPCとアクションを絡めたい場合、そのNPCとはどういう関係なのか(初対面、親しい友達、交際相手、昔の特撮ヒーローになりたいと本気で思っている中年男vs悪の組織マニアのヤクザ……など)を書いておいていただけると助けになります。
参考シナリオがある場合はタイトルとページ数もお願いします(2シナリオ以内でお願いします)
毎回書いてますが私は、自分が書いたシナリオでもタイトルとページ数を指定いただけないと行き詰まります。ご注意ください。
それでは次はリアクションで会いましょう。
あなたのご参加をお待ちしています! 桂木京介でした!