美和ちゃん先生の結婚式｜リアクション

美和ちゃん先生の結婚式

　手紙とブーケトス

「お父さん、お母さん。今日まで育ててくれて本当にありがとうございました。今までいろんなことがあったけど、これからは俊介さんと幸せになりますっ！」
　披露宴のクライマックスは新婦による両親への手紙で、会場中が感極まってむせび泣いている。
　一番大泣きしていたのは美和の父、一美だ。
「……よもやよもや、娘が嫁に行く日が来ようとは。不束な娘ではあるが、どうか、どうかっ！　末永く娘のことを頼むよ、俊介くん。……うお、うお、うおおおおおお～～～んっ！　お父さんは寂しいっ！！　だが、我慢するぞおおお！！！」
　さすが美和の父と言おうか。泣きっぷりが、失恋したあと教室で突っ伏して泣いていた美和とよく似ていて、彼女の教え子たちはもらい泣きしながらも笑ってしまった。

　披露宴の最後は、女性陣お待ちかねのブーケトスである。ブーケトスとは、花嫁が未婚の女性ゲストたちに向かって後ろ向きにブーケを投げる演出で、幸せのおすそ分けの意味があり、ブーケを受け止めた女性は次に結婚できるというジンクスがある。
「行きますよ～っ！」
　後ろ向きに立った美和が、勢いよく集まった女性たちのほうへとブーケを投げた。
　女性陣のなかには、あおいや蒼、五月、綾花、理事長のあずさや島岡雪乃先生の姿もある。
　ポーンと高く宙を舞ったブーケに向かって、彼女たちは我も我もと手を伸ばした。
　もっとも必死に手を伸ばしたのはあずさである。
「ちょっとみんなっ！　年長者に譲りなさいっ！」
「えっ、えっ……いくら理事長といえどそれはさすがに横暴です……っ！　私だって……あっ、ああ！」
　ブーケはあずさの指をすり抜け、雪乃の指も弾いて、その背後にいた女性のもとへ――。
「あっ！　……ふっふ～。キャッチしてしまいましたー」
　あまたのライバルを制して（？）見事ブーケを手にした人物は、蕎麦屋すすきのの五月だった！
　旧１ー４の仲間たちが、五月を囲んでわいのわいのし始める。次に結婚？　まだ相手もいませんよーとのんびり口調な五月は、それでも美和の幸せをおすそ分けしてもらって嬉しそうだ。
　綾花とあおいは、それぞれ珪と修のもとへ戻っていった。ある意味で、幸せのおすそ分けが必要なかったということかもしれない。
　ゲーム感覚で参加したものの、負けず嫌いなプロゲーマーの血が騒いであずさの次くらいに本気だった蒼はすこーしばかり落ち込んでいた。姉の紫が慰めるように妹の肩を撫でる。
「残念だったわね、蒼」
「いいよ。お姉ちゃんならともかく、私は結婚なんてガラじゃないしね」
「そんなことはないと思うけど。でも次に結婚なんて言われたら、お姉ちゃんちょっと寂しいわ」
　そんな蒼は4年後に23歳で結婚し、25歳で妊娠・出産することになるのだが……。
　いまはまだその未来は内緒。予想外が起こるからこそ、人生は面白いともいえるのだろう。

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