河童の七夕｜リアクション

河童の七夕

◎河童の相撲大会！

　広場の中央に円が描かれていた。土俵のようだ。
「コレヨリ　相撲大会ヲ　始メマス。参加者ハ集マッテクダサイ」
「任せておけ、勝負事で負けるつもりはない！」
　刀が真っ先に向かう。
「円ちゃん相撲するのだ？　真央ちゃんも参加するのだ！」
「それじゃ、僕も出るよ」
　真央に先を越され、円も土俵へ向かう。
　しっかりとまわしを締めた刀は準備万端だ。
「なんかこれ、海藻かなんかみたいだな」
　水着の上からだから問題はないのだが。
「写真は任せて！」
　まず子供たちの取り組みが始まり、美咲紀がスマフォを構える。

　そのとき、ツンツンと肩をつつかれた。
「ノンノン、マドモワゼル。カメラハ　ノン　ダヨ」
「へっ？」
　振り向けば、さっきの金髪の河童。
「河童ハ　カメラヲキラウ。　フラッシュナンカタイタラ　気ヅカレテシマウヨ。
　人間ノ世界デ　河童ノコトガ　バレタラ　ヤッカイダシ　ネ」
　やたら気障っぽい仕草で語り掛けてくる。
「えーと……そうね、ごめんなさい」
　慌ててカメラをしまう美咲紀に、
「ボクノヨウナ　トレビアンナ　河童ヲ　撮リタイ気持チハ　ヨークワカルガ、我慢シテクレタマエ」
　金髪の河童はウィンクしてくるのだった。
「挨拶ガオクレマシタ。ボクハ　フランソワ」
「もしかして、フランスの河童さん？　すごい！」
「ウィ。マドモワゼル、オ名前ハ？」
「美咲紀です。あの、ここへはどうやって？」
「ミサキ、素敵ナ　名前ダ。アッ、ホラ、オ友達ノ　マドモワゼルノ出番ノヨウダヨ？」
　フランソワの水かきの指す方を見ると、土俵に真央が上がっていた。
　相手は、少し大きな河童だ。

「お願いしますなのだ！」
　観客席に手を振り、真央が土俵に両手をつく。
「ハッケヨイ、ノコッタ」
（がっぷり四つだと勝てないかなぁと思うのだ）
　観察しながら真央は思っている。
　自信満々に見える相手が勢いよく飛び込んでくる。
　そこに、はたき込みをかけた。
「うおりゃーなのだ！」
　歓声があがる。
　何度目かのはたき込みが決まり、真央が勝利した。

　次は円の番だった。相手も皿の周りの髪が緑の雌だ。
（立会いで相手の肩や足の体重のかけ方を見て……左かな）
　避けやすい方を予測した。
　相手の勢いを利用し、背中を押す！
（よし！　技で勝負！）
　緑の髪の河童が、そのまま突き倒された。
「桜庭川ノ　カチ！」
　どっと喝采が起こった。　

「トレビアン。ナカナカヤルネ。サテ、ボクノ出番ダ。ミサキ、見テテネ」
　刀の相手として金髪の河童……フランソワが土俵に上がる。
「ハッケヨイ、ノコッタ！」
「さあ行くぞ！」　
（相手の重心の動きを見ながらバランスを崩して倒す！）
　そう思った刀だったが。
　フランソワが手の水かきで宙を掻き、飛び上がる！
（？！）
　そうだ、ここは水中なのだ。
　一瞬の動揺ののち、水の流れに逆らい足払いに行こうとした刀の腹に、ペタリとフランソワの水掻きが張り付く。
「うおっ」
　何ともいえない違和感に、つい体が硬くなり。
　気づけば凄い力で廻しを掴まれていた。
「フランソワノ　カチ！」
「くっ……」
　土俵に膝をつき悔しがる刀。
「メルシー、イイ勝負ダッタヨ」
「やっぱりカッパの大人はすごいや！」
　円が拍手する。

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