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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
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雨の日と月曜日は
朝鳥 さゆるにとっても、月曜日はいくらか気だるい。
その前日、つまり日曜日は同棲相手の姫木じゅんと、週で唯一ふたりの休みが重なる日だ。とはいえ、朝寝してだらだら過ごすことはまずない。早起きしてのニチアサ（※）視聴にはじまり、掃除、洗濯、買い物、デート……一日を無駄にせず、じゅんとふたりきりの時間を目いっぱい楽しむのが常だった。ときにはそれが夜更けまでもつれ込み、恋人同士ゆえの甘く濃密なひとときが延長につぐ延長となって、日付をまたぐこともしばしばだ。
つまり、体を休めるはずの休日が、かえって疲れを増す日になることもある。
それでもやめられないし、やめる気もない。最近では、週に一度のこの日こそが「生きる理由」なのかもしれないと思うことさえある。
その月曜日。まだ眠っている恋人を部屋に残して外に出たさゆるは、空が薄曇りなのに気がついた。けれど傘を取りに戻るのも面倒で、「むしろ日傘いらずでいいじゃない」と気にせず駅へ向かった。
半分眠ったまま電車を乗り降りし、考えるより先に体が動く。脳の海馬の記憶が勝手に運転してくれているような感覚で、木天蓼大学の教養キャンパスにたどり着いた。
あくびをかみ殺しながら一限目、二限目の授業をこなし、昼休みには教養科目が同じ友人たちと四人でテーブルを囲む。
「最近、剣持さんって先輩から鬼のようにNYAINが来て……」
「え、なに？ 付き合ってほしいって？」
「はっきりとは言わないけど、そんな感じー」
「その先輩イケメン？」
「あんまり。というかむしろその反対かも」
「で、どうなの、葦野（よしの）としては？」
「全然そんな気ない」
オイ、とさゆるを除く二方向からつっこまれた葦野 橙子（よしの・とうこ）はあっけらっかんと、「だって剣持先輩の友達が格好いいんだもーん」と悪びれもせずに言いのけた。「なんとか紹介してもらえんかと思って」
「そっち狙いか」
「悪い女～」
「昔そんなタイトルの曲なかった？ ♪バイバイ・ソーロング・サヨナーラって」
「知らんよ」
「あるけどそれちがくない？」
とかなんとか三人がきゃいきゃいとはしゃぐのを横目に、さゆるはあまり話に入らず、ぼんやりしていた。すると橙子が水を向けてくる。
「朝鳥はそういう話ないん？」
「え……？ あたし？」
さゆるは言葉に詰まった。昨夜の就寝がかなり遅かったせいもある。実は頭がまだぼんやりしていたのだ。
「さゆるさん美人すぎるんだもん、当然あるよねあるよね？」
と告げたとき、数寄屋橋 井乃梨（すきやばし・いのり）の眼鏡がキラッと光ったような気がした。
「『あるよね』って？」
「恋バナ」
「えと、あたし……同棲してるから」
そういうのはちょっと──というつもりでさゆるは言ったのだがむしろ逆効果、
「なんですとぉー！」
それまで主として合いの手役だった松 かれんがにわかに色めき立ったのである。
だが残念、ここで昼休み終了まであとわずかと判明し、この話題は次回に持ち越しとなった。
慌ただしく席を立ちつつ「いっけね」と橙子が言った。
「今日、五限休講だったんだ。テキスト持ってきてもた」
なお五限目は必修教科だ。こういう重めの課目が一日のラストにくるあたりも、月曜日が気だるい理由のひとつである。
「そうなの？」と、橙子以外の三人が声をそろえる。
「担当教授の都合で休講なんだって。補講は来週水曜の五限。金曜に貼り出されてたべ？」
「ウソ！？ 私、金曜朝に掲示板見たけどなかったよ」
「右に同じです」
「あたしも」
「あー、情報出てたの金曜の夕方だったっぽい」
移動しながら橙子が言って、「それロスタイムやん」「教育者としてどうかと思いますっ」と追随のコメントがつづき、「だったらNYAINグループ作ってこういう情報交換しようよ」という流れになった。
そうか。
大学生、ってこんな感じ……なんだ。
もしかしたら高校生からこれがスタンダードなのかもしれない。だがさゆるは高校時代あまり同級生と交流せず、そもそも欠席することも少なくなかったから、同年代女子たちとのこうした会話や距離感、そのすべてが新鮮だった。
こんなあたしを見たら、じゅんはどう言うだろう。
「バカねそんなのジョーシキよ」だろうか。
それとも、
「よかったじゃん」と笑ってくれるだろうか。
──たぶん、後者だと思う。
その前日、つまり日曜日は同棲相手の姫木じゅんと、週で唯一ふたりの休みが重なる日だ。とはいえ、朝寝してだらだら過ごすことはまずない。早起きしてのニチアサ（※）視聴にはじまり、掃除、洗濯、買い物、デート……一日を無駄にせず、じゅんとふたりきりの時間を目いっぱい楽しむのが常だった。ときにはそれが夜更けまでもつれ込み、恋人同士ゆえの甘く濃密なひとときが延長につぐ延長となって、日付をまたぐこともしばしばだ。
つまり、体を休めるはずの休日が、かえって疲れを増す日になることもある。
それでもやめられないし、やめる気もない。最近では、週に一度のこの日こそが「生きる理由」なのかもしれないと思うことさえある。
その月曜日。まだ眠っている恋人を部屋に残して外に出たさゆるは、空が薄曇りなのに気がついた。けれど傘を取りに戻るのも面倒で、「むしろ日傘いらずでいいじゃない」と気にせず駅へ向かった。
半分眠ったまま電車を乗り降りし、考えるより先に体が動く。脳の海馬の記憶が勝手に運転してくれているような感覚で、木天蓼大学の教養キャンパスにたどり着いた。
あくびをかみ殺しながら一限目、二限目の授業をこなし、昼休みには教養科目が同じ友人たちと四人でテーブルを囲む。
「最近、剣持さんって先輩から鬼のようにNYAINが来て……」
「え、なに？ 付き合ってほしいって？」
「はっきりとは言わないけど、そんな感じー」
「その先輩イケメン？」
「あんまり。というかむしろその反対かも」
「で、どうなの、葦野（よしの）としては？」
「全然そんな気ない」
オイ、とさゆるを除く二方向からつっこまれた葦野 橙子（よしの・とうこ）はあっけらっかんと、「だって剣持先輩の友達が格好いいんだもーん」と悪びれもせずに言いのけた。「なんとか紹介してもらえんかと思って」
「そっち狙いか」
「悪い女～」
「昔そんなタイトルの曲なかった？ ♪バイバイ・ソーロング・サヨナーラって」
「知らんよ」
「あるけどそれちがくない？」
とかなんとか三人がきゃいきゃいとはしゃぐのを横目に、さゆるはあまり話に入らず、ぼんやりしていた。すると橙子が水を向けてくる。
「朝鳥はそういう話ないん？」
「え……？ あたし？」
さゆるは言葉に詰まった。昨夜の就寝がかなり遅かったせいもある。実は頭がまだぼんやりしていたのだ。
「さゆるさん美人すぎるんだもん、当然あるよねあるよね？」
と告げたとき、数寄屋橋 井乃梨（すきやばし・いのり）の眼鏡がキラッと光ったような気がした。
「『あるよね』って？」
「恋バナ」
「えと、あたし……同棲してるから」
そういうのはちょっと──というつもりでさゆるは言ったのだがむしろ逆効果、
「なんですとぉー！」
それまで主として合いの手役だった松 かれんがにわかに色めき立ったのである。
だが残念、ここで昼休み終了まであとわずかと判明し、この話題は次回に持ち越しとなった。
慌ただしく席を立ちつつ「いっけね」と橙子が言った。
「今日、五限休講だったんだ。テキスト持ってきてもた」
なお五限目は必修教科だ。こういう重めの課目が一日のラストにくるあたりも、月曜日が気だるい理由のひとつである。
「そうなの？」と、橙子以外の三人が声をそろえる。
「担当教授の都合で休講なんだって。補講は来週水曜の五限。金曜に貼り出されてたべ？」
「ウソ！？ 私、金曜朝に掲示板見たけどなかったよ」
「右に同じです」
「あたしも」
「あー、情報出てたの金曜の夕方だったっぽい」
移動しながら橙子が言って、「それロスタイムやん」「教育者としてどうかと思いますっ」と追随のコメントがつづき、「だったらNYAINグループ作ってこういう情報交換しようよ」という流れになった。
そうか。
大学生、ってこんな感じ……なんだ。
もしかしたら高校生からこれがスタンダードなのかもしれない。だがさゆるは高校時代あまり同級生と交流せず、そもそも欠席することも少なくなかったから、同年代女子たちとのこうした会話や距離感、そのすべてが新鮮だった。
こんなあたしを見たら、じゅんはどう言うだろう。
「バカねそんなのジョーシキよ」だろうか。
それとも、
「よかったじゃん」と笑ってくれるだろうか。
──たぶん、後者だと思う。
※ 毎週日曜日朝のアニメ放映時間帯（一部特撮も含む）のこと。他に要件でもない限り、じゅんはリアルタイム視聴を絶対に外さない。当然録画しているにもかかわらず、である。主として未就学児向けの作品が中心だが、彼女によれば「だからこそクオリティが高いんじゃない。子どもは”子どもだまし”には絶対ひっかからないのよ！」とのこと。最初はつきあいで仕方なく見ていたさゆるだが、だんだん楽しいと思えるようにり、最近では自主的に録画を観返すことだってあるほどだ。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2025年10月16日
- 参加申し込みの期限
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- 2025年10月23日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2025年10月23日 11時00分
