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雨の日と月曜日は
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「次はこれやってみん?」
小山田が手にしたのは、ハードテイストな犯罪ゲーム『警視庁・特捜決死線』。タイトルからして物騒だ。
「なんか刑事ドラマのサブタイトルみたいだな」佐伯が怪訝な顔をする。
「リアル志向らしい。条文を読み上げながら犯罪を立証するとか」これは修の説明だ。
「なにその地味なルール」
やがてゲームが始まると、
刑法第二百四十六条(詐欺)──『人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。』
第二百五十三条(業務上横領)──『業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の懲役に処する。』
といった具合で条文をすらすらと読み上げる佐伯に、修が感心したように言った。
「さすがだな、未来の警察庁長官」
「ああ、その話か」
佐伯は眼鏡のブリッジを指で押し上げる。
「やめたよ」
「やめた?」修の声がわずかに上ずる。「警察官僚を目指してたろ。国家公務員試験を受けるって……」
「ああ。でも、むしろいまは虫酸が走る」
意外な言葉に、空気が一瞬だけ凍った。
「君子ハ豹変ス、其ノ文蔚(うるわ)シ。小人ハ面(おもて)ヲ革(あらた)ム、順(したが)ヒテ以テ君ニ従ウ──『易経』に曰く、だったかなあ」さらりと口にして、小山田は探るようにつけくわえた。「それにしても急やなあ。なんでまた?」
「カトキ工作機の事件、ってわかるか? 公安が化学機械メーカーを、生物兵器に転用できる装置を輸出したってことで逮捕したやつ」
「……ああ、一応な」修はうなずく。「あとで公安側のデータ捏造が見つかって、冤罪になった事件だろ」
「俺も知ってる。新聞でちょろっと読んだくらいだけど」小山田も言った。
カトキ工作機事件──警視庁公安部が、化学機械を製造する中小企業の経営者らを外為法違反の疑いで逮捕した事件である。問題となったのは、噴霧乾燥機と呼ばれる工業装置だった。表向きは食品や医薬品の製造に使われる一般的な機械だが、生物兵器の培養工程にも転用できる可能性があるとされた。
しかし、のちに公安部の内部資料にデータの改ざんが見つかり、捜査内容は一転して杜撰さを露呈する。裁判で証拠の信頼性が否定され、被告人全員が無罪となった。
事件は「国家の正義」を掲げた捜査の暴走として世論の批判を浴び、警察組織の信頼を大きく揺るがせた。
「受験勉強で忙しかった高校時代、あまり気にも留めなかった。……でも大学に入って時間ができたから、あれこれ調べたんだ」
佐伯の声は淡々としていたが、その奥には熱があった。
「知ってるか? 公安は、カトキ工作機が無罪なのをわかってて、それでも有罪にしようとした。理由は単純だ。敵を見つけないと、自分たちの存在意義が消えるからだ」
「……存在意義?」修が眉をひそめる。
「ああ。あの組織は“脅威を摘発している”って実績がないと、生きていけない。だから、脅威がなければ作る。中小企業なんて、政治力も弁護の資金も乏しい。標的にするには、都合がいい相手だった」
佐伯は拳を膝の上で握りしめた。
「“正義”のために、弱い者を犠牲にする──それが現実の警察だ。そんな組織に、自分の人生を預けたいとは思えなかった」
その言葉に、修は息をのんだ。佐伯の眼鏡の奥、黒目が鋭く光っている。
「あんなものがまかり通るような組織の長を、目指す気はない」
「だったら中に入って、変えたらどうなんだ」
「それ、徴兵を渋る若者に『軍隊を変えろ』って言う気休めと同じだよ」
佐伯はかすかに笑った。
「組織に入れば、組織に取り込まれる。個人なんてそんなものだ。東大生であろうと、俺もただの個人さ」
「……外から変えるしかないってこと?」
と言う小山田に佐伯はうなずいた。
「そう。俺は警察の『中』ではなく、『外』に立つ。あえて言うなら官僚の敵になる」
佐伯の指先が、テーブルの縁を軽く叩いた。
「だから、ジャーナリストを目指すことにした」
小山田が、わずかに口を開いた。
「……警察といやあ、佐伯、高校んとき、親友になんかあったんじゃっけ」
「昔の話だ」
佐伯は短くさえぎったが、その声にかすかな痛みがにじんでいるのがわかった。修にとっては初耳だ。いつか、彼から聞きたいと思う。
「その件があったから、俺は官僚になって警察を変えようと思ってた。──だが、カトキの事件でわかった。アプローチの仕方としては駄目だ。変えるなら、報道で変える。カトキの事件が明らかになったのも報道の力だ。俺は追う側になる」
修はたじろいだ。
目の前の友人が、これほどまでに激しい信念を抱いていたことを知らなかった。
「で、八神は?」
唐突に、佐伯が修に顔を向けた。
「えっ?」
「お前は、政治家になって何がしたいんだ」
「政治家?」修は目をしばたたかせる。
「バレバレだってば。東大で、弁論部に国際法研究会。言わんでも一目瞭然じゃ」小山田が笑った。「まずは目指すんは医者やろ? で、医師会の後援で将来は国会入りかのう」
「……まだ、そこまでは決めてない」こうなれば白状するしかないだろう。修は言う。「ただ、可能性は……残しておきたいと思ってる」
「八神。『国会議員になること』が最終目標なら、悪いことは言わない。やめとけ」
佐伯の声には、冷ややかながらもどこか情のようなものが感じられた。
「一度当選すればそれがゴール。あとは議席を守ることに汲々とするだけ。そんな八神は見たくない。……まあ、日本はそんな政治家ばっかりだが」
修は、言葉を失った。
まっすぐな視線を向けられながら、心のどこかがざわつく。
「国会を目指すのはいい。だが、『何のために』がないなら、応援はできない」
──俺の認識は、甘いのか。
答えは、まだ出なかった。そんな修の気持ちを読んだのか、
「……ちょっと前まで、俺もそんな感じだったよ」
佐伯は相好を崩し、肩をすくめた。
「『長官になって警察組織を変えてやる』ってさ。でも、カトキの事件を追ってるうちに、どうにも虚しくなった。出世しても、声が届く場所にはいけないんだ。届くころには、もう自分が変わってる」
そう言って、佐伯は窓の外に目をやった。
「青臭い考えかもしれんがな」
雨はもう小降りで、ほとんどやみかけていた。
「すまん、空気が重くなったな」佐伯は明るく笑う。「ゲームをつづけようぜ」
「おうよ!」
小山田も、さっきの会話がなかったかのように腕まくりする。「つぎ、俺のドローな」
──俺はいい友を得たのかもしれない。
修は思う。
刺激をくれる、友人たちを。
帰ったら、あおいにメールしよう。
雨のことも、会話のことも。
些細なことかもしれないけれど、あおいに知ってほしいんだ。
今日もまた、かけがえのないひとときを過ごしたって。
──『雨の日と月曜日は』 了
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あとがき
担当マスター:
桂木京介
ファンレターはマスターページから!
桂木京介です。
今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
この物語では、激しい雨の訪れに、それぞれの心の揺れを重ねて描きました。
降りしきる雨はただの背景ではなく、NPCを含めた登場人物たちの胸の奥にたまっていた思いや迷いを象徴するものです。
書き終えて思ったのは──雨がやんだあとの静かな光は、プレイヤーの皆さま一人ひとりが見つけた答えのようでもある、ということでした。
もし、その余韻のかけらが、あなた自身の「雨の日」にもそっと寄り添うことができたなら、それがゲームマスターとしての何よりの報いです。
すべての参加プレイヤー様に、心からの感謝を。
それではまた、次のシナリオでお会いしましょう。
ご意見ご感想、切にお願い申し上げております。桂木京介でした。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
桂木京介
シナリオタイプ(らっポ)
ゴールドシナリオ(200)
グループ参加
2人まで
シナリオジャンル
日常
恋愛
コメディ
定員
5人
参加キャラクター数
5人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2025年10月16日
参加申し込みの期限
2025年10月23日 11時00分
アクション投稿の期限
2025年10月23日 11時00分
参加キャラクター一覧
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