ハッピー・ハロウィン！　それぞれの10月31日｜リアクション

ハッピー・ハロウィン！　それぞれの10月31日

【彼と一緒にハロウィンを】

　ねこぴょんの日のすぐあとの10月31日。
　羽生碧南は、鷹取洋二と共に、シーサイドタウンのハロウィンイベントに来ていた。
　碧南は魔法使い、洋二はドラキュラの仮装だ。
　碧南は背が高いので、どうしても衣装が限られて来る。それで今年は、魔法使いということになった。ちなみに、昨年は乙女ゲームの登場人物の仮装だった。
　洋二の方は、仮装が飄々とした彼の雰囲気とマッチしていて、いい感じだった。
　駅構内で合流した時、碧南は「なんだかいいものを見た」と思ったほどだ。
（今年は、洋二さんと一緒にハロウィン！）
　並んで歩きながら、碧南はウキウキとそう思う。
　昨年の同じころは、洋二は卒業して寝子高にはいなかった。碧南は、木天蓼大学の特待生試験を受けたりして慌ただしい中、後輩たちとハロウィンのイベントに参加して、それなりに楽しんだものだった。が、やはり寂しくはあったのだ。

　駅前では、仮装したイベントスタッフたちが、お菓子の入ったカゴを提げて立っていた。
「トリック・オア・トリート！」
　訪れた人々が、そう声をかけると、スタッフたちがカゴの中のお菓子を差し出している。
　碧南と洋二も、それぞれ声をかけてお菓子をもらう。
　碧南はカップケーキを、洋二は袋に入ったクッキーだ。
　特設コーナーで、ジュースをもらい、その傍のイートインスペースのテーブルに２人は腰を下ろす。
（甘いものばかりだけど、今日一日ぐらいはチートデイということで、いいよね？）
　ちらりと顔を出した甘味への罪悪感を抑え込み、碧南は洋二とおしゃべりしながら、カップケーキとジュースを口にした。

　お菓子を食べたあとは、洋二が行きつけの駄菓子屋へ行った。
　今日はその店も、入口がハロウィン風に飾りつけられている。
　入口傍のワゴンには、ヘッダーに巨大なカボチャとお城が描かれた、駄菓子の詰め合わせセットが積まれていた。
「ここも、ハロウィンの商品を出してるのね」
　言って碧南は、一つを手に取り、袋に何が詰まっているのかを見る。
　すると中身は、普通の駄菓子だった。
（袋がハロウィンぽくなってるだけなのね）
　碧南は、思わず苦笑する。
「中の駄菓子は、通常どおりなんだねえ」
　洋二も同じように袋を一つ取り上げて、そこが惜しいと苦笑した。
　ただ、彼はそれも購入するつもりなのか、手に持ったまま、店内の他の駄菓子も見て回り始めた。
　やがていくつか選んで、レジへと向かう。
　清算を終えると、店員が福引券をくれた。

　駄菓子屋を出たあとも、２人はいくつかの店で買い物をした。
　どの店でも福引券をくれたので、２人は福引をやってみることにした。
　駅前広場にある福引所は混雑していたが、並んで待つうちに、２人の番がやって来た。
　先に洋二が回し、５等のお菓子セットを当てた。
「今日は、お菓子の日だねえ」
　と彼はうれしそうだ。
　続いて碧南も、ガラガラを回す。
　最初は、６等の白い玉ばかりだったが、最後に１等の金色の玉が出た。
　係員が大きく鐘を鳴らし、１等が出たと叫ぶ。
　事態が把握できなくて、ポカンとする碧南には、最新のゲーム機『ニャンテンドー・スィング２』が渡された。碧南が、欲しくて何度応募しても、購入抽選に当たらなかったものだ。
「碧南さん、よかったねえ」
　喜びを噛みしめる碧南に、洋二が声をかけた。
「ええ。……なんだか、夢みたい」
　うなずいて、碧南は思う。
（洋二さんと一緒にハロウィンを過ごせて、たまたまやった福引で欲しかったゲーム機が当たって……ほんとに、幸せすぎる）
　そして、思わず言った。
「イベント、来てよかったわ」
「僕も、碧南さんの喜ぶ顔が見られて、よかったよ」
　洋二も言って、うれしそうに笑った。

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