ハッピー・ハロウィン！　それぞれの10月31日｜リアクション

ハッピー・ハロウィン！　それぞれの10月31日

【デートでハロウィン】

　その日、綾辻綾花は早川珪とデートで、シーサイドタウンに来ていた。
　ハロウィンのイベントが行われているためか、いつもより人出も多い。しかも、仮装している者も多かった。駅前付近は、更に賑わっている。
　２人は特設スペースで配っているジュースをもらい、その傍のイートインスペースへ移動した。
「私たちも、仮装してくればよかったですね」
　席の一つに腰を下ろして、ジュースを飲みながら、綾花が言う。
「ああ」
　うなずく珪に、綾花は小さく笑った。
「珪さんは、なんでも着こなしちゃいそうですよね」
「そうかい？　僕は、綾花さんこそ、なんでも似合いそうだと思うが」
　珪も笑い返して、言う。

　ジュースを飲み終わると、２人は立ち上がった。手をつないで、通りを歩く。
　周囲に並ぶ店はどれも、ハロウィンの飾りつけがされていて、雰囲気を盛り上げていた。
　２人は時おり足を止めて、そんな店のショーウィンドウや表に並べられたワゴンの中を覗き込む。
「可愛いですね。お化けも愛らしいです」
　ワゴンに並ぶクッションを見て、綾花が言った。クッションは、カボチャランタンの形のものとお化けの形のものがある。
「何か買うかい？」
　珪に問われて、綾花は少し考え、答えた。
「持ち帰って食べれるものがいいです。今日は夕食を作る予定なので、デザートがあればいいと思いますし」
「なら、あそこのお菓子屋に入ろう」
　あたりを見回した珪が、ちょうど近くにあった店を差し示した。

　綾花もうなずき、２人はその店に入った。
　店内には、さまざまなお菓子が並んでいる。
「珪さん、何がいいですか？」
「そうだな……」
　綾花に訊かれて、珪は店内を見回した。
　結局、一通り店内を見ようということになり、ゆっくり見て回りながら、２人でいくつかいいと思うものを選んだ。そして、最終的に、カボチャのモンブランに決めた。
　それを買った時に、福引券をもらったので、２人は福引をすることにした。
　店を出て、駅前の一画にある福引所へと向かう。

　福引所は少し混雑していて、２人は並んで順番を待った。
「何が当たるか、ドキドキします」
　いざ自分の番になって、綾花は思わず呟く。
　高鳴る胸を抑えて、彼女はガラガラを回した。
　結果、出て来たのは銀色の玉だ。
　係員が鐘を鳴らしつつ「おめでとうございます！　２等のタブレットが出ました！」と叫んだ。
「え？」
　思いがけない展開に、綾花は思わず目をしばたたく。
「綾花さん、すごいな」
　やや興奮気味に珪に言われて、彼女はようやく少し実感が湧いた。
　その彼女に、係員がタブレットの入った袋を差し出す。
　礼を言って受け取ったあと、綾花は思わず呟いた。
「１回で２等が当たるなんて、思いませんでした……」
「それだけ、日頃の行いがいいってことだ」
「珪さんったら……」
　珪の言葉に、綾花は苦笑する。

　そのまま２人は、並んで福引所を離れた。
「来年は仮装して来たいですね。ナースの恰好とか、似合いますか？　看守もかっこいいですよね」
「う……。綾花さんなら、どっちも似合いそうだ」
　悪戯っぽく笑って言う綾花に、その姿を想像したのか、珪はちょっと顔を赤らめて返す。
　それを見て、綾花はまた笑った。
「一緒に、テーマをそろえた仮装もいいですね。ナースと医師とか、看守と囚人とか？」
「あ、ああ……。来年は、2人でいろいろ考えようか」
　まだ少しばかり動揺を残したまま、珪はうなずく。
「ええ」
　楽しそうにうなずき返して、綾花はそっと彼の手に手を絡める。珪も、その手を握り返した。
　２人はそのまま、もう少しデートを楽しもうと歩き出した。

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