遊ぼう！　トロピカルランド｜リアクション

遊ぼう！　トロピカルランド

「ママ！　みて、おっきいプール！」
「そうね」
　夏休みのある日。
　高校の同級生たちに誘われた梓智依子は、娘の楓を連れて本土のトロピカルアイランドへやってきました。
　3つ年下の同級生である彼女たちは、智依子のことを姉のように慕ってくれています。
　
　楓を水着に着替えさせ、自分も着替えてプールサイドに出ると、先に出ていた同級生たちは。
「楓ちゃんかわいい～」
「智依子さん凄い美人」
　と言って、スマホを構えました。
「楓ちゃんこっち向いて。智依子さんも一緒に、視線くださーい！」
「撮影会なの？！」
　母娘で写真を撮られて、なんだか恥ずかしいけど、楓はキャッキャと喜んでいます。
　楓は同級生たちのアイドル状態なのです。

「みてママ、おっきいすべりだい！」
　ウォータースライダーを指さす楓に、智依子は（まずい）と思いました。
　好奇心の塊というか、好奇心を擬人化したような楓の次の言葉は簡単に予想がつきました。
「かえでもあれやる！」
（やっぱり。さすがに5歳児には、母親と一緒だとしても無理だわ）
「えーと……あれはまだ楓には早いから、もう少し大きくなったらね」
「そうね、楓ちゃん用の滑り台もあるから我慢してね」
　ハラハラしながら、智依子と同級生たちが宥めます。

「うーん、大きくなったらぜったいすべるからね」
「そうね、流れるプールに行きましょうか」
　膨れつつもどうにかあきらめてくれた楓と、智依子たちは子供でも安心なゆっくり流れるプールへ向かいました。

　のんびり泳いだり、流れに乗って浮き輪で流されてみたり。
「たのしい～！」
　楓も大喜びです。

　次に向かったのはウルトラモンキーフロート。
「うわあ、グラグラする！」
　揺れる浮橋の上でキャッキャとはしゃぐ楓。
　楓も、楓を心配する同級生たちも次々とプールに落下していきます。
　そんな中智依子は、巧みにバランスを取り落ちずにクリア。
「ママ、すごい！」
「えーっ、智依子さんバランス感覚が神！」
　同級生も楓も興奮して大騒ぎです。
（ダンサー時代に鍛えた平衡感覚が大いに役に立ったわね）

「ママおなかすいたー」
「はいはい」
　昼は南の食堂へ。
「かえではやきそばにしようかな。ママは？」
「私はカレーにするわ」
「いいなー、カレーもたべたい」
「待って、カレーは食べてみないと辛いかどうかわからないから、ママが頼んで楓に分けてあげる」
「それじゃ、かえでもやきそばわけてあげるね」
　出来上がったカレーはほんの少し辛めでしたが。
「おいしい！」
　楓は気に入ったようです。
「ママもやきそばどうぞ。からくないよー」
　それぞれ分け合いながら、同級生たちとにぎやかに食事するのでした。