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冷房の低音が、湿った空気をやっとのことで切り分けていた。
古いビルの一角にあるスタジオは、板張りの床がうっすら汗で曇り、鏡には朝一番に拭いたはずの手の跡が、もう指の幅で縞を作っている。
白いロジンの粉がうっすらと散り、金属のバーは触れるたびにざらりとする。洗い立てのタオル、制汗スプレーの甘い匂い、そして人の体温の混ざった塩気、ここには、夢にまで見た空気がある。
かつて
梓 智依子
が属していた場所だ。寸分同じではないが、性格としては同一だ。
入念に準備運動を終えると智依子は正面を見すえ、四拍ごとの吸う・吐くで息を整える。
ドゥミ・プリエ、グラン・プリエ。膝の向きとつま先の方向を一致させ、骨盤は前傾させず尾骨を下ろす。
タンデュ──甲で床を押して、指先で空気を撫でるように、戻す。
カウントが耳の内側で鳴る。
右脚デガジェ、八分の一拍で床を離し、軸足の内腿に軽く火を入れる。
肩は下げ、首は長く、みぞおちはしまう。
バレエはすべてのダンスの基本、つづいて足を揃えてリズムに乗って、ステップ・タッチ、ジャズウォーク。膝をゆるめ、骨盤をやわらかく保ちながら、肩と腕のラインを広げる。
「ワン・ツー・スリー・フォー」
音のカウントが耳の奥で脈を刻む。次はシャッセからのピルエット。床を押し、軸足に重心をかける。首を切り返し、視線をスポットに固定する。息を吐きながらターンし、胸をつきだす。
指先から背中、腰の方向にかけてすべてが歌とつながっていく。それがミュージカルだ。
いわば『踊る』のではなく、『表現する』ための体。
智依子は汗を光らせながら、その感覚を久々に取り戻していた。
隣で
梓 楓
が、母の動作をなぞっている。まだ小さな足が床を擦ると、キュッと乾いた音が立つ。脚を前・横・後ろへと出すたびに、幼い身体には不似合いなほど明確なラインが立ち上がる。甲の伸びはやわらかく、膝はまっすぐ。かかとの引き上げが早い。智依子は声を投げる。
「楓、つま先だけじゃなく足首も伸ばして。軸の膝、押して。……そう、今の高さ、覚えて」
「うん!」
ゆっくりと膝を持ち上げてから、空中で脚を伸ばす。智依子の股関節が抵抗を示す。五年のブランクが体内時計を鈍らせている。それでも、腕の通りと呼吸の配分は、反復の記憶で戻ってくる。
肘の高さ、手首の角度、指先の向き。空間を撫でるたび、鏡の中の肩甲骨が呼吸に合わせて滑る。
楓の動きは、軽い。
内腿のスイッチの入りが早く、脚が天井方向へと迷いなく伸びる。足先が空中で一瞬止まり、そこからさらに一ミリ先へ届こうとする欲がある。子どもの筋力にしては驚異的だ。バランスも申し分ない。智依子は思わず目を見張る。こういう「止まる間」は、長年の稽古を経た者が、ようやく手に入れられる感覚だ。さもなくば、天性の資質をもつ者が。
「テンポ変えます」
トレーナーの
高橋 恵子(たかはし・けいこ)
がリモコンを押すと、ピアノがゆるく流れはじめる。
軸足の母趾球(ぼしきゅう)が床に円を描くように、ゆっくり回る。額に汗が、ひとすじたれて顎の先で光る。
「智依子、スポットを強く。回り始めと止まる位置、決めて」
「はい」
リリースとコントラクション。背骨をひとつずつ数えるように丸めていく。床に落ちるのではなく、床を受け止める。スライド、ロール、フロアから再び立ち上がる。冷房の風が今度は冷たく感じられ、皮膚に走る鳥肌で、動きの線が自分でも可視化される。
「ここ、呼吸でつないで。音に置いていかれないで、音を吸い込んで」
恵子の指示に智依子はうなずく。吸う・吐く。呼吸の「間」で、腕の円が大きくなる。床から立ち上がる瞬間に骨盤の向きをわずかにずらし、重心を斜め前に送る。
楓に視線をやる。小さな背中が、母の手順を模写している。
腰骨の両脇に軽く触れて、前傾を直す。
「尾骨、下ろすよ」
「……うん」
触れた掌に、薄い汗の膜が見える。自分と同じ塩の温度だ、と智依子は思う。
コンビネーションの終わり。ラストで、二人同時に静止──止まる、のではなく、止める。
鏡の中のふたりの胸が、同じ速度で上下する。足元に、汗の小さな滴が落ち、淡い丸い跡を作る。
「テイク・ファイブ(五分休憩)」
恵子の声に、ふう、と息が抜ける。智依子はタオルで首筋を押さえ、ボトルの水をひと口含んだ。ぬるくなった水でも、胃の奥に落ちた瞬間の、体温の調律がはっきりわかる。
楓は肩でリズムを取りながら、母の真似をして塩をぬぐっている。近くのバーには、彼女の小さな手の跡が汗で半月の印を残していた。
よくついてきてる。
内心、智依子は楓の強さに舌を巻いていた。
ユカ・オオツキからのスカウトを正式に受け、母娘で舞台劇に出演することが決まり、土日週二回の稽古を受けるようになってあっという間に一ヶ月が過ぎた。遊びたいざかりの楓にとっては、決して楽なスケジュールではないだろう。なのに楓は不平ひとつ言わないばかりか、この厳しいレッスンの訪れを楽しみにしているくらいだ。
智依子の生活も当然変わった。ハローニャックのバイトのシフトは週末休みに変わった。といっても祝日は稽古がないので基本シフトに入る。平日は高校に通学し、放課後はまっすぐに店に行く。閉店まで勤務して死んだように眠る。このペースだ。
厳しいが、充実しているのは事実だった。
梓と同じかもしれない。自分も稽古を楽しみにしている。
稽古を通じて少しずつだけれど「
ChiCo
」だった頃の自分に戻っていくのを感じた。十三歳のときの夜に授かった命──楓に逢うことを選んで捨てたはずの才能と未来。その手応えが、夢として戻りつつある。
それでも、智依子はこのごろ、確信しつつある。
楓には、私以上の才能がある。
レッスンを受けるごとに、楓のダンスは目に見えて成長していた。
いずれ私なんて軽々追い越してしまいそうね。
と思うと母として嬉しく誇らしい反面、同じダンサーとして、一種の焦燥感もおぼえずにはいられなかった。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
桂木京介
シナリオタイプ(らっポ)
ゴールドシナリオ(200)
グループ参加
2人まで
シナリオジャンル
オールジャンル
定員
5人
参加キャラクター数
5人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2025年08月13日
参加申し込みの期限
2025年08月20日 11時00分
アクション投稿の期限
2025年08月20日 11時00分
参加キャラクター一覧
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