Tomorrow never knows｜リアクション

Tomorrow never knows

「あ、でも！」
　急に晴月の声が跳ねた。
「私、まだ外から帰ったばかりだし、汗も雨の匂いもするから……シャワー浴びてくるね」
　だがラッセルは腕を解かず、晴月の髪に顔をうずめる。
「そのままでいいんだ。晴月の匂い、好きだから」
　言葉と同時に、湿った髪の匂いや肌の感触が胸に押し寄せ、部屋の空気が一瞬、ぎゅっと濃くなった。
　湿った髪の匂い、しっとりした肌の感触、暖かい体の鼓動──五感のすべてがラッセルの胸に飛びこんできた。
「俺、そのままの晴月を感じていたい」
　唇を重ね、指先でそっと肩を伝い、晴月の腕を優しくほどく。
　ぴくり、と肩が震える。その小さな反応さえも、ラッセルにとっては宝物のように感じられた。
　息が絡み、唇が重なる。ふたりの足どりは、手つかずのご馳走をテーブルに残したまま寝室へと向かう。
「好き、好き好き好き、ラッセル……大好き」
　紙テープの光に照らされ、足音も息遣いも絡み合う。時間はいつのまにか、ふたりの呼吸に合わせるように流れていった。
　ベッドにもたれかかった瞬間、晴月はくすぐったげに笑いながら、ラッセルの耳元に小声でささやいた。
「ねー、『アッハ～ン』とか言ったほうがいい？」
「ちょ、大事なとこで笑わせないでくれ」
　ラッセルもシャツを脱いだ。肌と肌が直接ふれあう感覚が、熱をひろげる。
　くすぐったげな笑い声は吐息にかわり、濃密な空気に包まれた。
　たがいの息と匂い、やわらかさと熱が、ものの数秒で溶けあっていく。

＊　＊　＊

　やがて、空が淡い橙に染まるころ──。
　ふたりの部屋のダイニングには、わずかな痕跡だけが残されている。
　そよ風が、吊られた紙輪を揺らす。
　壁に貼りついた折り紙の花や星は、茜の色を浴びている。
　流しには使い終えた皿が置かれ、テーブルには紙吹雪が一枚、ぴたりと張りついていた。

　隅の壁には、コルクボードが立てかけられている。
　ボードに掲示されているのは、クリアファイルに入った住民票だ。

──『Tomorrow never knows』　了

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あとがき

担当マスター：桂木京介
ファンレターはマスターページから！

　お読み下さりありがとうございました。桂木京介です。

　私はキーボード打ちが下手で、しょっちゅうミスタイプします。
　一番多いのが「全角/半角』キー（一般的な109配列）まわりの押し間違いで、『！』を出すつもりが半角になってしまいウワー、とか、『ESC』キーを押してしまってギャーとか、こういうことを繰り返しています。
　今回も、これをしょっちゅうやっています。どうにかなりませんかね……。

　本作ではタイトル『Tomorrow never knows』が示すように、未知の未来への期待や不安、そして踏み出す勇気を軸にすえました。
　皆さまが描いてくださったそれぞれの物語は、このテーマに応えるように多彩で、温かく、ときに胸を打つものでした。おかげでこのシナリオは、私ひとりでは決して辿り着けない景色へと広がったのだと思います。
　改めて深く感謝いたします

　それではまた、新たなシナリオで会いましょう！　katuragikyousukedesita（ウワー）

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