寝子島灯篭　～NEKOJIMA LANTERNS～｜リアクション

寝子島灯篭　～NEKOJIMA LANTERNS～

朝鳥さゆるはからんころんと音を立てる下駄を確認しつつ、浴衣の胸元を整えた。恋人の姫木じゅんと共に向かっているのは『寝子島灯篭　～NEKOJIMA LANTERNS～』というイベントだ。
さゆるは今夜、シフトに入っておらず、じゅんは代休で休みなのだ。
「さゆるの浴衣、綺麗。似合うわね」
「！」
　わざわざ待ち合わせして顔を合わせた時は何も言わなかったのに、不意に褒められて少しだけ嬉しくなる。じゅんのリクエスト「さゆるの浴衣姿が見たい」に答えた形なのだ。
「一番好きな柄なの。もう少し明るい方がよかった？」
「ううん。あたしの方が明るめだから、良いと思うわ」
　じゅんは和ゴスな浴衣だ。
　お互い微笑み合ってから、どちらからともなく指を絡ませる。恋人繋ぎ。
「あ」
　視界の端に淡い光が。
　見ると、道の先に灯篭が並んでいる。ゆらゆらと揺れる炎が灯篭の中心で揺らいでいて、綺麗だ。
　四角、三角、球状など様々な灯篭が並んでいる。小さな水路のそばに設置された灯篭と水面に映る炎が綺麗。
「あ」
「何？」
　じゅんが近くの大きな灯篭を覗き込んだ。
「どうしたの？」
「いま、変な影が見えたかも」
「？　どういうこと？」
　そんなものは見えなかったが。
　じゅんが、手を放して腕を組んできた。
「この灯篭の中に灯篭に化けた妖怪が潜んでいて、イタズラしたり人を襲ったり……なんて展開はないか」
「またアニメの話？」
「それで主人公が因縁の相手と壮絶なバトルを繰り広げて──」
「はいはい」
　と、じゅんの熱い視線に気づき、立ち止まる。
「どうかした？」
「さゆる、いつもより何か色っぽい。うるうるしてる？」
「してな……」
　どきりとした。じゅんの瞳がうるんでいるように見える。灯篭の光のせいだろうか。
「じゅん」
「さゆる」
　ドキドキする。この雰囲気に少し酔っているような感覚が不思議だ。
　思わず、顔を近づけようとして、後ろからの声にびくっとする。
「ママー、凄い綺麗だね！」
「ほら、走らないの。おねえちゃん達にぶつかるでしょ？　すみません」
　道を開けると、親子は速足で去って行った。
　お互い笑い合う。
「ね、写真撮ろう」
　良い思い出だ。ちゃっかり自分のアカウントにアップしていたのは笑った。
改めて、手を繋ぎ合わせた。

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