寝子島灯篭　～NEKOJIMA LANTERNS～｜リアクション

寝子島灯篭　～NEKOJIMA LANTERNS～

　稲積柚春はその日、『寝子島灯篭　～NEKOJIMA LANTERNS～』を見に行くため、恋人のウォルター・Bと出かけていた。
昼間は参道商店街～寝子島神社の展示を見て、シーサイドタウンでひと休み。
それから日が傾き始めた頃に寝子ヶ浜海浜公園～エノコロ岬へ。
「わ、もうついてるんだ」
　見どころは天空灯篭だ。しかし、空はまだ夕闇、オレンジ色が強い。薄暗くなっているとは言え、灯篭の揺らめく炎が夕焼け空に溶けだしているようで、綺麗だ。
「これはこれで素敵だねぇ」
「うん」
　ファンタジックだ。
夕陽を見送ったら、星ヶ丘マリーナのキッチンカーで食べ歩きが出来る限定フードをシェアしながら、港をぶらり。
　すっかり夜闇に包まれたところで、岬へ行ってみることにした。
「わっ」
　岬についた途端、目に飛び込んできたのは無数の灯篭と揺らめく炎、そして淡いライトアップ。
　火のせいか、景色が白けてぼんやりしているような気がする。非常に幻想的だ。不思議の国にでも迷い込んだのだろうかと。
「夢みたい……」
　ふと、横を見ると、ウォルターの姿がなかった。
「……え？」
　狐に頬を包まれたように、柚春は目を瞬かせる。
（……夢？）
　と、肩を叩かれた。
「！」
「ほら、あれ。飾られてる灯篭の中でも一番大きいらしいよ」
「ワット……」
　柚春は思わず、手を握った。
「ど、どうかした？」
　やっぱり夢じゃない。ウォルターと付き合っていること、彼がこの場にいること。
「ううん。夢じゃないなって」
　ちょっとだけ不安になったがこれはちゃんと現実だ。
「なんか。幸せすぎて、本当なのかなって確かめたくなるの」
　ウォルターがくすっと笑って、柚春の頭に手を置いた。
「岬、もう少し回ろうかぁ？」
　柚春は頷く。
「……もう見てるだけなんて我慢しなくていいから」
「ん？」
「ううん。なんでも」
　手を強く、握った。

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