寝子島灯篭　～NEKOJIMA LANTERNS～｜リアクション

寝子島灯篭　～NEKOJIMA LANTERNS～

梓智依子は娘の梓楓と手を繋ぎながら、薄暗い道を歩いていた。少し先に見えるのは灯籠のぼんやりとした明かりだ。夜祭りのような雰囲気に目を細める。
「！　楓、ちゃんと前見てね？」
　楓は腕を振るたびに揺れる浴衣の袖を気にしているようだ。水色の金魚柄のそれが嬉しい様だ。
「あっ、おねえちゃん達」
　見ると、待ち合わせをしていた同級生達が手を振っている。突撃しそうになる楓をどうにか止めて、歩み寄る。
「待たせてごめんなさい」
　皆揃っているようだ。
　それにしても、私服のメンバーはともかく、浴衣組の浴衣は色遣いはパステルカラーで、若い女の子という感じ。
「楓ちゃん、かわいいっ」
　なでなでされて、嬉しそうな楓。
「智依子さん、めっちゃ綺麗、浴衣似合いますね！」
　不意に褒められ、少し照れる。
「皆も似合ってるわ。というか、可愛いデザイン」
　浴衣にリボンやフリルがついている。
「着物美人って感じで、智依子さんの浴衣めっちゃ良いですよ」
　やりとりもそこそこに、イベント開催地点へ。
　川沿いに灯篭が並んでいて、揺らめく炎が幻想的だ。
「は～綺麗」
「寝子島じゃないみたい」
　同級生達が口々に言って、目を輝かせている。
「……」
　ぼんやりとした明かりのせいか景色が揺らいでいるような気がする。
「ランタンを持って歩きませんかー？　よければどうぞー」
　洋風、和風、どちらのランタンもデザインが凝っていた。
　川沿いのまっすぐな道だけ、貸出のようだ。
　同級生達は楽しそうに貸し出しランタンを受け取っている。
「ママ、私も！」
「はいはい」
　智依子はハンカチで楓の口元を軽く拭いた。先ほどまでキッチンカーで買ったイカ焼きを食べていたのだ。
「楓ちゃん、イカ美味しかった？」
「うん！」
　小さく切ってあるイカ焼きだったので、食べやすかったようだ。
　その後、楓は同級生達に手を繋いでもらったりしながら、ランタンを受け取り、お祭りのようなイベントを楽しんだ。
　楽しそうにおねえちゃん達と話す楓を見ていると愛おしい。
すぐ突撃癖を発揮しては私や同級生たちをハラハラさせたり笑わせたりで、改めてこの子を産んでよかったと思う。

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