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禍語<マガタリ>
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【致命】
とにかく暑かった。寝子島警察署勤務の刑事課所属、愛想が無いことで知られる
水槻 清恋
をして、年頃の少女のように水着姿をさらしてビーチに寝そべらずにはいられない、猛暑苛む一日だった。
「暑っつ……」
思わず口にしたくもない言葉がすべり出たのは何度目のことか。太陽は容赦なく照り付け、肌はじりじりと焦げそうだ。日焼け止めは入念に塗り込んだが、明日にはよく焼けたソーセージみたいになっているかもしれない。
頭を振って妙な思考や雑念を追い出し、このまま寝てしまおうと試みる。
暑い。暑いが、清恋の心のどこかには冷たい悪寒がわだかまる。そこから目を逸らしたくて、柄にもなく寝子ヶ浜海岸で日光浴などしているのだ。肌の表層には熱が溜まるが、真芯は凍り付くかのようなのだ。
「はあ……」
刑事として、語るもおぞましい事件のひとつやふたつには関わってきたものだが、そんな経験をもってしても表現しがたい、奇妙かつ肌が粟立つ遭遇だった。一刻も早く忘れたいが、己の内にも未整理なものだから、飲み下せず臓腑のあたりをぐるぐるとかき回されるばかりだ。気分が悪かった。
「はあい、お姉さん! 不景気な顔してるわねえ」
そんな時だった。またナンパかと億劫そうに見上げると事実、立っていたのはどこか軽薄そうな青年だが、若い男はサーフパンツも履かずシャツにスラックスという出で立ちで、ネクタイはラフにゆるんでいた。
しかしにやついた目をして、彼の言った言葉にどこか、そう。清恋は救われたのかもしれない。
「口はばかることならいっそ、私に話してみない? ちょうど探してたところなのよ……コワイ話をご存じでない?」
怖い話か、と清恋はめぐり合わせにかぶりを振った。どうにもタイミングがいい。なんだか怪しいほどに。しかしならば、と語り始めた。どこかで吐露する相手がほしかったのだろう。
思い出すなり真夏の暑さが冷気にとってかわられたような気がした。
初めに目にしたのは、猫だ。猫にはよくよく縁がある。無論、清恋にとっては悪い意味でだ……あの黒く吸い込まれそうな瞳を覗き込むたび、学生時代に負ったつまらない傷痕の疼きがよみがえる。心の傷というやつだ。もちろん隣のビーチチェアへ無遠慮にも腰かけた青年に、そんな蛇足まで聞かせてはやらないが。
猫だ。路傍へ寝転んだままぴくりとも動かないが、瞳はかっと見開いていた。目が合った。いまさら確かめる術もないものの、あれはとうに息絶えていたのではないかと思う。
「おゆるしを」
屈みこんだ少女の背中は丸まり、動かない猫を見下ろして所在なくたたずんでいた。古めかしい、すり切れて色褪せた着物を身につけている。旧態依然とした古い家の使用人といった風情だ。
助けを求めているのだと思った。清恋とて警察官だから、困っている市民にはそれなりに寛容なつもりだ。
「ねえ、あなた。どうかした? 泣いているの? その猫は……」
まあ今にして思えば、語りかけたこと自体が間違いだった。
「おゆるしを」
「えっ」
「おゆるしを。わざとでは。おゆるしを」
清恋に背を向けた少女の肩が小刻みに震えはじめたところで、尋常でなさを悟ったが、もう遅かった。
「わざとではありません。わたしはそのような。おゆるしを。もうしわけ。おゆるしを」
膨張してゆく。誇張でも比喩でもなく、少女の体躯が膨張をはじめた。またたく間に清恋の背丈をふたまわりも追い越し、ゆっくりと振り返る。壊れたからくりのように軋み、震動しながら清恋を見下ろした。
「ありません。わざとでは。おゆるしを。だんなさま。おゆるし……るし、し、おゆる、ぎ。ぎぎぎぎ、ぎぎ ぎ ぎぎぎぎぎぎぎぎぎ」
ねじ曲がった首。頭部にはいくつものへこみがある。左右の大きさの違う瞳がぐるぐると目まぐるしく、互い違いに回転していた。鼻はなく、口が顔の半分以上を占め、ぎりと食いしばった歯は杭のように鋭くとがり、ひどく黄ばんでいた。
「ぎ ぎぎぎ ぎ。ぎいい ぎいい ぎいいいいいいいいい」
足は短く、手は長い。いずれにもぼこぼこと膨らんだ瘤がいくつも並んでいて、いくつかは破れて蛆がたかっていた。いやあれは手だろうか。足が腕だろうか。その逆だろうか。
清恋は反射的に背を向け、弾かれるように駆けた。拳銃を抜き放ち対峙するといった勇ましい選択肢ははなから頭から抜け落ちていたし、思い出したとてそうはしなかったろう。そんなことに意味があるとは思えなかった。
背に鈍い足音が迫る。かつて学生時代に陸上部でつちかった全力疾走にもかかわらず、足音はつかずはなれず、どこまでも追ってくる。
廊下の角を曲がり、襖を開いて茶の間を横切る。はてここはどこだったか、どこの旧家のお屋敷だ。清恋は道を歩いていたのではなかったか。
「おゆるしを。おゆる、ぎ、ぎぎぎ、ゆるしを、もうしわけ、もうおゆるしを、もうしわけ。ぎ、ぎ。ぎ」
なにをそう謝るのか。卑屈な物言いにも関わらず、背に迫る声には震えるほどの怒りが満ちている。なにに対する怒りなのか。猫をどうしたのか。殺めてしまったのだろうか。ダンナサマとやらにそれを責められ、ひどく折檻されたのか。問いは清恋の内にめぐるも答えが得られることはなく、ただ追われるままに駆けた。
屋敷に窓はあるが越えられるほどの高さでも広さでもない。ちらと覗いた空は恐ろしい早さで青くなり、赤くなり、暗くなり、一連の営みをひたすらに繰り返していた。
足音が不意に途切れ、息も切れ切れに思わず足を止める。清恋の荒い息にまぎれるように、耳元へぞっとするほど冷たい吐息が吹きかけられた。
「だんなさま。おゆるぎぎ ぎぎぎぎ いい いいいいいいイ」
振り返れば互い違いの瞳が焦点を結び、清恋を見下ろしていた。
「ランクSね」
「はあ?」
「今日の優勝はあなたよ、お姉さん。本当に運が良かったわ。さいきんはやりの失踪事件に、またひとつファイルが追加されるところだったわね」
軽い調子で言って、青年は肩をすくめた。こんなにも茹るような暑さの中で、彼は汗の雫ひとつたらしていなかった。
彼は今しがた清恋が語って聞かせたような怪談話を集めているのだという。なんのために? という問いははぐらかされて意味を成さなかったが、それでも清恋には尋ねねばならないことがあった。
「……言ったわね、さっき。あなた、寝子島警察署のほうから来た、って」
「ええ、まあね。これも仕事の一環よ、そうは見えないかもしれないけれど」
「奇遇ね。私もその、『寝子島署のほうから来た』人なの。けれど不思議だわ……署内であなたを見かけたことは一度もないのよ。最近赴任してきたのかしら? それも、恐怖譚を集めるために? 警察官が?」
詰問に近い言い様をしたつもりだったが、青年に堪えたそぶりはない。かわりに、
「ふ……」
彼は目を細め、笑んだ。目の前にいる清恋へ笑いかけたのか、あるいはどこか遠くにいるなにかへそうしたか、ともかくひどく実体の感じられない笑みだった。
「九頭見よ」
「なに……?」
「九頭見 修司。この年になっても、世の中知らないことばかりよねえ。警察なんて複雑な組織の内側は、特に。月村さんあたりに比べたら、まだまだ若輩者だけどね、私なんかはさ。ま、とにかく、おたがい詮索はナシにしましょ? お姉さん。これからもイイお付き合いをしていきたいもの」
などと言い残して青年は去ったが、その後、清恋が署内で彼の姿を見かけたことは一度もない。
それでいて時おり、街中のうらぶれた路地やら人気のない公園やら、ふらりと現れては軽薄そうな口ぶりで、決まってこう言うのだった。
「あら、奇遇ね! ねえ、なにかコワイ話、知らない? よかったら、聞かせてくれないかしらねえ?」
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あとがき
担当マスター:
墨谷幽
ファンレターはマスターページから!
墨谷幽です。『禍語』のリアクションをおとどけいたします。
ホラーの季節ですね。まあ実際のところ、ホラーは季節を問わず楽しいですけれど。
いかがでしたでしょうか。
ありがたいことに、アクションで、シリーズ化してほしい!というお言葉もいただきましたので、もしかしたらまた出すかもしれません。
お気に召しましたらぜひ、またのぞきにきていただけましたら嬉しく思います。
それでは、今回もご参加いただきまして、まことにありがとうございました。
次のシナリオでもお会いできますことを、楽しみにお待ちしております~。
お疲れさまでした!
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
墨谷幽
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
ホラー
バトル
NPC交流
定員
10人
参加キャラクター数
9人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2025年07月02日
参加申し込みの期限
2025年07月09日 11時00分
アクション投稿の期限
2025年07月09日 11時00分
参加キャラクター一覧
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