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音喫茶『琴線ムーシカ』
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音は響き合うものだ。奏でた音を相手が受け止め、返る響きが自分へも染みてゆく。また、相手へと音を返す。双方の内に反響しやがて形を成したものを誰かが最初に、感情と名付けたのだろう。
星ヶ丘地区には
朝鳥 さゆる
がそうとは意図せぬままに撒いた残響がそこかしこに散りばめられている。この道は何か避けられない用があったり気まぐれに学校へ行くときに良く通った。枝分かれした先を右に折れて小路をくぐれば行きつけだったラブホがあるし、あそこの路地裏で深夜、行きずりの男と事に及んだこともあった。女であったかもしれない、仔細は覚えていないがともかく、未だ消えない音が街には鍋底の焦げ付きのように張りついていた。
「さゆる? あんたまたぼーっとしちゃって。どうしたの」
「……あたし、そんなに呆けてばかりいないでしょう」
「たまにやってるわよ、それ。気を付けなさいよね、世の中イイ人ばっかりじゃないんだから。そんな無防備なところ見せてたら、足元すくわれるわよ」
姫木 じゅん
は尋ねない。あえてさゆるのまださらけだしていない奥底をほじくりだそうなどと試みたりはしない。恋人ならばその全てを知り尽くしその上で飲み下す柔軟と度量を示したいと願うものだろう、しかし彼女はそうしなかった。なにも言葉を交わすばかりが響き合いではないのだ。感情もまた音を発するのだ。
「まぁ、その時はあたしが黙っちゃいないけどね。あっここここ! ほらこの前一緒に見たあのアニメ、星ヶ丘のこのあたりがモチーフになってるのよ。や~、感慨深いなぁ、寝子島が舞台のアニメなんてさぁ」
たくさんの玩具を前にした子供のようにころころと表情が変わり、笑顔が尽きないじゅんに、さゆるは苦笑いする。
じゅんの指さす先、ああこの道はとさゆるは再び刹那の思索へ耽る。この道は今や住まう者もなく虚ろとなった、朝鳥の実家へ続く道だ。
「あれ? あんな店あったかしら。何だかいい雰囲気ね」
丘の向こうから意識を引き剥がし、かぶりを振ってじゅんの見つけた看板へ目をやると、音喫茶『琴線ムーシカ』とあった。いかにも洒落ていて、落ち着いた佇まいの純喫茶といったところか。重厚な扉の向こうからはさゆるのまだ知らない、新しい響きが漏れ出している。
「入ってみる? 今日は休みだし、ゆっくりしていきましょうか」
「いいわね、さんせー!」
扉を押す。少しばかりの軋みが鳴るもそれが心地良い。温かみある白熱灯の明かりが目に飛び込んできて、そこへ星ヶ丘らしい非日常が穏やかにふたりを出迎えた。
「いらっしゃいませ、お嬢様方。お二人ですわね、それではお席へご案内いたします」
店内BGMはゆったりと宙を揺蕩う。聞いたことのないスイング・ジャズ調の曲で心地良い。
「うわぁ、メイドさんだよメイドさん。カウンターの向こうは執事だよ、本物かな? 本物っぽいよね、前に行ったコンカフェのパチモノ感とは全然違うもん」
「聞こえるわよ、じゅん……でもそうね、本物なのかも。お店の内装も本格的だし」
「だよね~!」
クラシックなロングスカートが一人、可愛らしいミニスカートが一人。彼女らはホールスタッフだろう。初老の執事が魅せる燕尾服の着こなしも完璧で、注文したコーヒーを淹れる所作、そしてそれを運ぶメイドらの立ち居振る舞いはまるで絵画のようだ。
「ケーキセットでございます。ロールケーキはこちらに。こちらがブルーベリータルトですね。ご注文はお揃いでございますか」
「は、はい! あ、ありがとーございます」
「では、ごゆっくりお寛ぎください。ご用がありましたら何なりとお申し付けくださいませ」
深々と一礼し戻ってゆくロングスカートのメイドのフリルを目で追いかけ、じゅんはほうと感嘆を禁じ得ないようだ。さゆるも今は接客業に携わる身だから、こんなにも究まったサービスを目にしては大いに換骨奪胎の精神で仕事に臨むべきかもしれない。
と……そんな風に考えた時のことだった。スイング・ジャズが途切れ、クラシックの一曲が流れるように聞こえ出した。
「…………」
久しく脳裏へ浮かぶこともなかった名がさゆるを唐突に揺さぶった。曲名は知らない。作曲者も出身国も。ただ幾度となく聞いたことがあった。そう、これは。
「さゆる? またなの? おーい」
片篠 藍人の好んだ曲だ。
愛憎入り混じる。刃を差し込むたび、差し込まれるたび響き合う音。どちらが弦でどちらが弓か、いずれにしても双方共鳴しのめり込んだ。これ以上にないと心より信じ切っていた。
激しい感情を構成した大部分はとうに失せて久しいが残響は今も繰り返しさゆるの内を巡った。気づかぬままに巡っていた。端緒を得て肥大化したそれは嵐のごとくうねりさゆるを蹂躙し始める。
「さゆる。さゆる、大丈夫?」
「あ……じゅん」
揺さぶられ、気が付けばさゆるは大粒の涙をこぼしていた。
「時折ですが、いらっしゃいますから。どうかお気になさらず」
さゆるが落ち着いた頃合いに、店主であろう執事が低く味わい深いしわがれ声で言った。
「音楽は、音は時にこうして、耳にする者の感情を喚起するようです。わたくしにも経験がございます。足元おぼつかぬ程に動揺を隠されない方もいらっしゃいますが、どうやらお客様にはそれを支える方が隣におありのご様子」
「そうよ、心配したんだから!」
それでも、じゅんは尋ねなかった。たださゆるを温もりに包み込み、少しだけ肩を震わせただけ。
さゆるは執事に小さく頭を下げる。あの曲はもう聞こえない。穏やかに、恋人へと告げた。
「どこにも行かない……大丈夫。じゅん。あたしはどこにも行かないから……」
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
網 透介
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
2人まで
シナリオジャンル
日常
恋愛
NPC交流
定員
5人
参加キャラクター数
5人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2025年06月28日
参加申し込みの期限
2025年07月05日 11時00分
アクション投稿の期限
2025年07月05日 11時00分
参加キャラクター一覧
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