「へぇ、なかなかいいお店ね」
「恐縮でございます」
ヴィーゼ・ベルンスタインがカップを手に店内を眺めて言うと、老店主は慇懃な仕草で一礼をした。ぴしりと折り目正しくまるで執事が主にかしづくがごときであった。
星ヶ丘地区に音喫茶『琴線ムーシカ』がオープンしたのはほんの二週間も前のことだという。開店は店主の長年の夢であったそうだ。
漂うコーヒーの香り、ノスタルジィへ導く落ち着いて上品な内装。そして控えめに流れる音楽が店内に格調高い凛とした空気感を演出する。
「あら? この曲、どこかで……」
ヴィーゼはスピーカーから流れる曲に耳を傾ける。いつだったか、どこかで聞いたことがあるような。自分にとってなにか、大切な意味のある曲であったような。
「お客様は、こちらの楽曲がお好みでいらっしゃいますか」
「いえ、そういうわけではなかったのだけど。なんだか聞き覚えがある気がして」
「左様でございますか」
本質は提供されるコーヒーや軽食の洗練された深い味わいではなく、実のところ付喪神であるスタッフたちの実に行き届いたサービスでもない。訪れた客はそこに、かつて耳にしたことのある懐かしいメロディーを見い出すのだという。記憶の底に埋もれていた旋律がひょっこりとふたたび顔を覗かせる、そのきっかけを提供してくれるというのだ。
ヴィーゼの身体は知らずのうちゆらゆらと揺れリズムを刻んだ。
「お客様が温かな思い出を想起し、喜びの再び浮揚するお手伝いをすることこそが、我々にとっても幸甚の至りに存じます」
「そう……素敵ね」
老店主の細められた瞳の優しさに、ヴィーゼは溶けるように微笑んだ。
スタッフは付喪神であるが客には人間だって少なくない。
あなたが星ヶ丘へ足を運んだ際にはぜひ、音喫茶『琴線ムーシカ』へお立ち寄りを。
網です。よろしくお願いします。
時の流れは自由です。
ガイドの「音喫茶」を始め、喫茶店やカフェなどでお茶するお話です。
または、気になるお店を探す過程とか、「こんなカフェが人気なんだって」と話題に出す程度でも構いませんし、
お店でバイトするシーンでもOKです。自由にお過ごしください。
<音喫茶『琴線ムーシカ』>
星ヶ丘地区の一角にオープンした、レトロでノスタルジックな内装の純喫茶。
店内BGMに、「あなたの記憶から零れ落ちてしまった、古い思い出の一曲」が流れることがあるらしい。
※今回は、NPCの記憶については触れません。
「あなた自身の記憶」をご指定ください。
※思い出の一曲は、既存の曲でも、オリジナルでも構いません。
既存曲で描写が難しい場合は、適当にアレンジさせていただきます。
スタッフはいずれも付喪神ですが、人間の姿をしています。
お客はあやかし、ひと、ほしびと等問わずご来店いただけます。
☆店主:バートラム
古い蓄音機の付喪神。物腰穏やかな老紳士。燕尾服
☆ホール:シャーロット
チェロの付喪神。余裕ある貴婦人。ロングスカートのメイド風制服
☆ホール:桐乃
リコーダーの付喪神。気が強い少女。ミニスカートのメイド風制服
特定のマスターさんが扱うキャラクターを除き、NPCも登場可能です。
また、Xイラストのキャラクターも描写することができます。
口調などのキャラクター設定は、アクションに記載してください。
Xキャラ図鑑に書き込まれている内容は、そのURLだけ書いてもらえれば大丈夫です。
ガイドのように、Xキャラが影響を受け、影響の無いPCさんを追い回す、といったアクションも可能です。
Xイラストのキャラクターを描写する場合、
PCとXキャラの2人あわせて「1人分」の描写なので、無関係の行動などはお控えください。
Xキャラだけで1人分の描写とすることも可能です。
その場合は、PCさん自身は描写がなく、Xキャラだけが描写されます。
Xキャラのみの描写をご希望である旨を、アクションにわかるようにご記入ください。
それでは、ご参加お待ちしています。