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午後三時をすぎたころ、寝子島はどんよりとした雲に覆われ、街からは色が、一枚ずつ薄れていくように見えた。
空は浅く濁った鉛色に染まり、太陽は厚い雲の奥へと姿をひそめる。
やや生温い湿った風は、初夏の入口を知らせるようでもあり、その前の、陰りの多い季節の足音のようでもあった。商店街ののぼり旗がはためき、どこか遠くの風鈴が一度だけリンと鳴る。街路樹の葉がこすれあって、湿気まじりの音を立てさざめく。
空の一角から、ぽつりと一滴、音もなく落ちてきた。アスファルトにしみを作る。
しばらくしてもう一滴、さらにもう一滴と数を増し、リズムを刻むように地面を打つ。
水の粒がアスファルトに触れて弾けるたび、地面からはどこか、ノスタルジーをくすぐるような匂いが立ちのぼった。濡れたコンクリートの、いくらか鉄錆を含んだ香り。あるいは湿った土や草木の、深い呼吸のような匂いだ。
水たまりがじわじわと広がっていく。路面のタイルの色が濃くなり、マンホールの蓋に波紋が次々と生まれては消える。楽譜の上隅に書かれたクレッシェンドのように、降りそそぐものは次第に力強さを増していった。
ザー、っというよりは、サー、っと表現したくなるような雨。
傘を持たずにいた人々が、コンビニの軒下や駅の入り口へと小走りで駆け込んでいく。車のボンネットが雨を弾き、道ゆく人々の足音もいつしか水音にかき消されゆくなか、ひとり、
綾辻 綾花
だけが、胸をはずませていた。
あいにくの空だけど、でも今日は、珪さんとのデート。
だから、雨天はむしろラッキーだったかもしれない。
ひとつの傘の下、
早川 珪
とふたり、肩を寄せて歩けるから。
相合傘で歩くというのは、想像していたよりもずっと近い。腕がふれる。歩幅を合わせる。ときどき、視線が交わる。どれもが特別で、言葉にならないほどだった
言葉がなくたって、行動はできる。
思い切って、綾花は珪の腕に自分の腕をからめた。これまでのように手をつなぐより、もっと親密な感じがする。
見上げると、珪の笑顔があった。見つめあう。
もう高校生と教師じゃない。人目をはばかる必要なんて、ない。
あと少しこの状態を楽しみたい、と願ったのは綾花だけではないだろう。街でふらりと買い物など楽しんでから、どちらからということもなく、ふたりは公園の散策に入っていった。
「天気予報、外れたね」
珪は傘の向こう、煙る林を眺めている。雨を通して眺める光景に、何か発見でもあるかのように。
「でも、なんだか嬉しいです。こうして歩けて」
珪の言うとおり、予報は一日晴れだったが、出がけに綾花はふと雨の気配を感じて、念のため傘を手にしたのだ。その傘はいま、珪が手にしてくれている。
「うん、雨の日も悪くないね」珪は穏やかに言った。「綾花さんと一緒なら、なおさらだよ」
傘の布地を、雨粒が打つ音が心地よい。周囲に咲いた花々が、葉に雨粒をのせていた。
並んで、小さな石橋を渡った。傘の下、寄り添うように歩くと、珪の息づかいすら伝わってくる。白や紫の花が咲き乱れ、雨に濡れた花びらがひときわ色鮮やかだった。
湿った空気のなかに、どこか甘い花の香りが混じる。
珪の横顔をちらりと見上げると、彼は咲き広がる紫陽花を眺めていた。
早咲きなのだろう。大輪とは言わないが、むしろ可憐で奥ゆかしい印象を与える紫陽花だ。
「珪さん、綺麗に咲いてますね」
花弁が、雨を受けてキラキラ輝いている。
珪は優しくうなずいた。
「そうだね。好きな花なんだ。まだ五月で早いのに、咲いているのを見られたのは幸運かもしれない」
静かな雨音と、木々の葉を伝う水の雫。ふたりの間に流れるのは、音楽ではなく、この風景そのものだった。
急な雨のせいか公園の人通りはない。まるでこの時間と空間を、ふたり占めしているような気がした。
公園の出口までたどりついたとき、傘の端から大粒の水滴が跳ねた。
「雨、強くなってきましたね」
「そうだね。車、近くに停めてあるから、そこまで急ごうか」
数分後、車の中。湿った髪が、ほっと休まったように綾花は思う。
「ここからは、ドライブに変更ですね」
「雨の日はむしろ、こっちのほうが落ち着いて話せるかもね」
珪の愛車は、コンパクトボディのクラシックカー、丸みを帯びたヘッドライトとシンプルなグリルが、笑顔のようで愛らしい。きりっと無骨なフェンダーミラーだって、立派なチャームポイントだ。フォルムはもちろんバナナみたいな黄色いボディも、懐かしさと現代のおしゃれが交錯しているように思う。
助手席に腰を下ろすたび、珪はこの車がただの移動手段ではなく、珪の物語の一部なのだと感じていた。
願わくば私も、珪さんの物語の、それも大切な一部であってほしい。
珪が音楽プレイヤーのスイッチを入れると、穏やかなピアノの旋律が車内にひろがった。
「ショパンの『雨だれ』ですね」
「うん、このシチュエーションにぴったりだと思ってね」珪が言った。「有名な日本人ピアニストのアルバムだよ。たしか、彼女の娘さんは寝子島に縁が深いそうだね」
綾花はしばらく耳を澄ませる。
「いいですね。とても優雅で丁寧なのに、ピン、と一本筋の通った演奏という気がします」
「さすが文学部の綾花さん、豊かな表現だね」
「い、いえ私、音楽のことあまりわからないから思いついたことを言ったまでで」
「感性もいいね。僕も見習いたいな」
「おだてないでくださいよ」
照れくさくて喜びがあふれて、困ってしまう。音楽といえば、と綾花はたずねた。
「珪さんは普段、どんな音楽を聴くんですか。こういうクラシック?」
「とくにこのジャンル、っていうこだわりはないよ。クラシックも聴くしジャズも聴く。意外に思うかもだけど、ロック、それもヘヴィーメタルも好きだったりするよ。メタルって言っても激しいのよりは、暗くて深くて、深い海に沈み込んでいくような気持ちになるものがいいな」
クラシックやジャズはわかるが、『暗くて深くて、深い海に沈み込んでいくような気持ちになるメタル』というのは綾花にはまるで想像もつかない。ただ、珪が珍しく、本の話題以外で饒舌になってくれたことには感謝したかった。
「綾花さんは?」
「私は、あんまり詳しくないから友達から教えてもらうのが多いです」
いくつかミュージシャン名を挙げたところ、なかでももっとも明るいイメージの名前に珪はうなずいた。
「僕も好きだよ。有名なところしか知らないけど、配信でたまに聴く。テンポがいいから」
共通点、ありました。
綾花は手を叩きたくなった。
「テンポのいい曲って、朝聞くと一日頑張れちゃいますよね」
「そうだね、ドゥームメタルは朝には向かないし」
ドゥームメタルって言うんだ。そういう音楽。
今度、配信か何かでこっそり聴いてみようかな。
窓の外、寝子島の街並みに明かりが灯りはじめる。信号待ちの間に、綾花は珪を見あげた。
「私」
ぽつりと告げる。
「部屋でラブソングを聴くと珪さんに会いたくなることが多いです」
そうかい、と応じる珪の声は、低く落ち着いていて耳に心地よかった。
珪さんの声も、音楽みたいです。
ラブソングを聴いて彼の声が聞きたくなって、珪に電話したことは何度もある。そのたび、彼は優しく応じてくれたものだ。
車が動き出した。
「私いま、このまま、雨が止まなければいいのにって……ちょっと思っちゃいました」
「……僕もだ」
その声が、あまりに素敵で。
綾花は目を閉じた。
夢の中にいるようだった。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
桂木京介
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
学校生活
恋愛
定員
10人
参加キャラクター数
10人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2025年06月15日
参加申し込みの期限
2025年06月22日 11時00分
アクション投稿の期限
2025年06月22日 11時00分
参加キャラクター一覧
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