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ポップ・ライフ
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寝子高陸上部の練習は、いつものように炎天下のグラウンドで行われていた。
五月下旬、日差しはもう盛夏のそれに近い。トラックを蹴るスパイクの音、スタートの合図に反応して走り出す足音、校舎の窓から届くのは、吹奏楽部の金管の音。そのすべてが、夏の音をしていた。
琉歌はダッシュを終えて、膝に手をついた。荒くなった呼吸が胸にこもり、熱と湿気が皮膚を覆う。額の汗を手の甲でぬぐいながら水を口に含もうとして、ボトルが空になっていることに気づいた。
「あれ、飲み干しちゃったっけ……?」
軽く舌打ちして、「スポドリ取ってきまーす!」と声を上げ、ロッカールームまで駆け戻る。
壁の向こうはひんやりしていて、入るとたちまち細胞がよみがえるような気がした。ぺたっと背中を壁に預け、タオルで首筋をざっくり拭く。ほんのひとときのクールダウンだ。
反射的に飛び上がりそうになる。自分のロッカーに手をかけたとき、バッグの奥からスマホの着信音が鳴ったのだ。
取り出して画面を見る。
──椎井莉鳥。
一瞬、心臓が止まったかと思った。
来てる。
さっき、練習前に更衣室でひとり──まだ下着姿のまま、肩に余計な力が入ったまま──震える指先で送ったNYAINのメッセージ、
『週末、お時間ありますか?』
あれからまだ三十分ほどしか経っていない。正直、返事はないかもと思っていた。
先輩はきっと、きちんと距離をとるタイプだ。あの告白のあとも、返事は曖昧だった。
だからなお驚いた。NYAINではなく、電話なのだから。
電話に出たとたん、莉鳥の声がした。
「……明後日なら、大丈夫」
琉歌の体の奥がじんわりと熱くなった。さっきまでグラウンドで絞るように汗をかいていたのに、別の熱がじわじわと広がっていく。
開いたままのロッカーから、金属と汗の匂いが立ちのぼっている。けれど、それすらも琉歌には現実感がなかった。
琉歌はようやく、自分が黙ったままだと気づいて慌てて返事した。
「私も大丈夫ですっ」
それだけでは足りない気がして、前のめり気味にもう一言つづけた。
「でしたらその日、アウトレットへ一緒に行きませんか?」
「シーサイドアウトレット?」
「ええ、夏のセールをやってて。その、夏の服とかですね。先輩も必要かな、って思って」
電話回線越しに「いいね」と莉鳥が答える。手早く待ち合わせ場所と時間を決めて、静かに電話を切った。
すぐに、がつん、と鈍い音が響いた。琉歌がタオルを首にかけたまま、ロッカーの扉に額を押しつけたのだ。
ざらついた金属の質感。こもった空気の中で、冷たさだけが頼りになる。熱い肌に心地よく染み込んでくる。
呼吸が浅くなる。心臓の音が、耳の奥でざわついている。
「先輩と、デート」
つぶやいた。
音にしてしまえば、夢じゃないという証になるような気がして。
たとえそれが、買い物という名目でも。
たとえまだ、正式な交際というわけじゃなくても。
嬉しい。でも怖い。期待しすぎちゃだめだって、何度も自分に言い聞かせてきたのに。
目を閉じる。
タオルの下を、うなじの汗が伝っていく。そこにほんのかすかな風が触れた気がして、琉歌は小さく身じろぎした。
アウトレットの端、人気の少ない植え込みの影に小さな休憩スペースがあった。パラソルの影に覆われたテーブル席に、ふたりは向かい合って座っている。
しばらくの沈黙のあと、琉歌が口を開いた。
「……やっぱり、避けてました? 私のこと」
唐突な問いかけだった。
莉鳥の目が、ゆっくりと琉歌を見すえた。
「そう見えた?」
「はい。見えました」
はっきりと言う琉歌の声は、驚くほど落ち着いていた。でも、テーブルの下では両手をぎゅっと握りしめている。
そりゃそうよね、と琉歌は思う。
あのときのキスだって唐突すぎたし、告白にいたってはたぶん、理解不能だったんじゃないかな。しかも同じ女からの告白だもの。先輩、別れたとはいえ彼氏がいたんだし。百合漫画ならありがちな展開でも、実際となると逃げられて当然だよね。
みじめな気持ちになりたくなくて、琉歌は顔を上げた。
「本当は、クリアドームのあと……少し、期待してたんです」
声のトーンが上がる。
「私の気持ち、伝わってるって思って。これから少しずつ、先輩との距離が近づいていったらって」
琉歌の指先は、テーブルの縁を無意識になぞっている。
ようやく莉鳥が口を開いた。
「……ごめん」
琉歌は首を横に振った。
「謝らないでください。私は、自分で勝手にそう思ってただけだから。あの夜だって、先輩がどう感じてたかなんて、ちゃんと聞かなかった」
かすかに笑ってみせる。
「だからいま、聞きたいんです。先輩の気持ち」
莉鳥は息を吸い込んだ。喉の奥が痛くなるほどの深呼吸だった。
「私は……まだ、前を向けてないから。恋とか、誰かを好きになるとか……少なくともいまは」
と言って莉鳥は顔を上げた。目は、正面から琉歌を見つめていた。
「あなたの気持ちは、ちゃんと受け取った。軽く見てたわけじゃない。でも……私は自分に、嘘をつくのが嫌だった。期待させるようなことはしたくない」
はっきりとした拒絶ではない。
けれど、心の壁の存在をまざまざと突きつけられたようで、琉歌の胸は痛んだ。
「そっか……」
ほんの少し、言葉が詰まる。
「でも先輩、私、待ってますから」
「待つって、そんな」
莉鳥が眉を寄せる。
「先輩が自分の気持ちと向き合えるようになるまで、ちゃんと待ってます。だって私──先輩のこと、ほんとに好きだから」
まっすぐな声だった。
私は周りから、「何を考えているのかわからない」とか、「他人との距離感がバグってる」とよく言われる。
それは半分、当たってて、半分は外れてる。
本当は、臆病な自分をごまかすために、わざと軽く振る舞ってるだけ。人に踏み込まれるのが怖いから、先に境界線を越えてみせる。でも、本音はずっと隠してる。
高校の陸上部に入って、最初の練習の日だった。
先輩の跳躍を見た瞬間、私は、ひと目で惹かれてた。迷いのない助走、音もなく浮かぶようなフォーム。練習とは思えない本気の跳躍。あれが『恋に落ちる』ってことなんだって、はじめて知った気がした。
でも、先輩に近づくのが怖かった。拒絶されないか不安で、ずっと見てるだけだった。
いまだって怖い。けど、もう目をそらしたくない。
莉鳥はしばらく黙って、それから唇をきゅっと結んだ。何かを言いかけて、けれど言葉にできないまま、目を伏せた。
琉歌はそれ以上、追い詰めなかった。
ただ一言だけ、やわらかく告げた。
「ありがとうございました。今日、先輩と一緒にすごせて嬉しかったです」
琉歌は立ち上がり、リュックサックを背負った。
「そろそろ帰りませんか?」
「……うん」
ふたりの間にまた沈黙が訪れる。
けれど、さっきまでのそれとは少し異なっていた。
緊張のあとに訪れた、むしろ心地よいほどの静けさだった。
帰り道、駅へ向かうエスカレーターで、琉歌はふと思い出したように言った。
「そうだ、椎井先輩」
「なに?」
「ブルーグレイのシャツ、それ、今度どこかに出かけるときに着てくれたら嬉しいです。誰かに褒められるためでもいいから」
莉鳥は少し目を見開いて、それから、ようやく笑った。
「わかった、きっとそうする」
莉鳥の笑顔は、肩の力が抜けたような、まるで自分を許せた瞬間のような、そんな表情だ。
琉歌の知るなかで、いちばん自然で、いちばん優しい椎井莉鳥の笑顔だった。
「今日はありがと」
別れ際に莉鳥は告げる。いま言えることは、それが精一杯だったから。
それでいい。いまは、それでいい。
琉歌は莉鳥の背を見送る。
少しずつでいい。だけどきっと、いつか──。
──『ポップ・ライフ』 了
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あとがき
担当マスター:
桂木京介
ファンレターはマスターページから!
ご参加ありがとうございました。桂木京介です。
今回はシルバーシナリオということで、文字数との戦いでした……。
そのぶん、アクションをじっくり拝読しながら、描きたい場面・伝えたい関係性に絞って執筆しています。いつもながら、最後まで書けたのはみなさんの熱量のこもったアクションあってこそ! 毎回大変お世話になっております!
ポップな空気感を目指したつもりですが、仕上がりの印象は読んでくださった皆さまのご判断にお任せします。
楽しかった、あるいはちょっとでも心に残った――そう思っていただけたなら、書き手としてこれ以上の幸せはありません。
ご意見・ご感想、元気がなくなったときに何度も読み返しては励みにしております。
お暇なときにでも、ひと言いただけたらとても嬉しいです。よろしくお願いいたします。
それではまた次回シナリオで会いましょう! 桂木京介でした!
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
桂木京介
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
学校生活
恋愛
定員
10人
参加キャラクター数
10人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2025年06月15日
参加申し込みの期限
2025年06月22日 11時00分
アクション投稿の期限
2025年06月22日 11時00分
参加キャラクター一覧
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