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つるりと皮がむけて、ゆで卵のような身があらわになった。
それが、
倉前 七瀬
がフロアに足を踏み入れたときの最初の感想だった。
シーサイドタウンの駅前にある大型書店が、先日リニューアルオープンしたのだ。しばらく話題にはなっていたが、七瀬が足を運ぶのは今日がはじめてだ。
かつては病院の廊下みたいに無機質だった床が、上質な木材に張り替えられている。つやつやとした質感は、どこか木琴の表面を思わせた。踏みしめるたびに音が鳴りそうで無意識に歩幅を狭める。もちろん、音は鳴らないけれど。
新刊ポスターの上にまた別のポスター、そのまた上に……と重ね貼りされ、いつしか地層のように積み重なっていた壁もすっかり様変わりしていた。北欧風のポップな色合いと、等間隔に飾られた洒落たフレーム。あの混沌とした紙の堆積にも、ある種の生命力があった気がするのだけれど、それはきっと、思い出補正というやつだろう。
店内設置の書籍検索機も高性能になった。タイトルや作者が少々まちがっていようと、たとえば、『石川啄木』という人名を『いしかわぶたき』と入力しようと、『もしかして?』と啄木を候補に挙げてくれるし、店頭在庫を切らしていてもスムーズに取り寄せてくれる。いささかお節介なほどの至れり尽くせりぶりである。
店員の制服も明るくなっていて妙に姿勢がいい。表情も以前よりやわらかいように見えるが、そこまで急に人は変わるまい。きっと接客マニュアルが変わったのだろう。
結論からいえば便利だし、快適だ。けれど、どこか物足りない。雑然とした本の匂いと、棚の奥に眠る古びた背表紙、そんなものに価値を感じる感性は、もう時代遅れなのだろうか。旧市街の古書喫茶が恋しくなった。
けれど、ぴかぴかになったエスカレーターを降りた二階で、七瀬は「おおっ」と小さな声をあげた。
二階の一角がブックカフェ風に改造されていたのだ。倉庫のように暗かったスペースが、いまは開放的な窓に囲まれ、白木の棚や観葉植物がさりげなく配置されている。飲食物を出すカウンターがあり、ワンドリンクでも購入していれば、購入前の本を三冊まで持ち込めるという。
これはすごい!
認めるほかないだろう。
かつて書店にあった、立ち読み客と店員の息詰まるような攻防には停戦条約が結ばれ、どうせ立ち読むのなら堂々と、お席でどうぞごゆっくり、という方針に転換したわけだ。
これは試すしかない。さっそく七瀬は書棚にとって返して、ふむふむと閲覧していく。どうせならなるべく、活字の多そうなものがいい。
目指すは文学の棚、まずは戦中戦後を生き抜いたあの文豪の遺作、四季をテーマにした四部作の第一巻を手にした。かつて読もうとして途中で投げ出した記憶があるが、いまの自分なら読みきれる気がした。薄紙のように繊細な感性と、日本刀のような決意、この作家の作風の、その両面に惹かれる自分がいる。もちろん文庫でもいいが、ここはずっしり、ハードカバーでいこう。
つづいて手に取ったのは、海外でも熱烈なファンを持つ日本人作家の新刊だ。スノビッシュであざとさを感じる描写もあるが、それでも言葉に引き寄せられてしまうのが彼の作品の妙だろう。前作は一晩で読み切ってしまったのを思い出す。
新作コーナーに来た流れで、海外文学のベストセラーに目がとまった。韓国の女性作家、最近世界的な賞に輝いたという人の作品だ。翻訳物には尻込みしがちな七瀬だが、ぱらぱらとめくってみたところ、同じアジア圏だからか、それとも翻訳がいいのか、とても読みやすい文体だと思った。死者の言葉を拾いあげるような静けさが行間に感じられる。よし、これにするか。
グァバジュースを頼んで、片手に書店のカゴ、片手にトレーというバランスで座る場所を探す。
ううむ、先に席を確保しておいたほうがよかったでしょうか。
どこもかしこも埋まっていたのだ。空席に見えたテーブルであっても、さりげなく置かれたハンカチだのスマホだのが無言で領有権を主張している。
ふむん、こうなったら相席をお願いするしか。
こういうとき、知り合いでもいれば。
祈るように思う。
そうたとえば、ウォルターさんとか、ウォルターさんとか。
ウォルターさんとか。
七瀬は店内を見回した。
願いが天に通じたか、それとも、ブックカフェに入ったときからしていた予感が的中したのか。
隅っこの席。見覚えのある金髪が、窓から差す光をゆるく反射していた。
男性が本のページをめくっている。グレーのシャツをざっくりと腕まくりし、胸元までボタンを開けたままで。指先から肘にかけてのしなやかな動作には、どこか気品が感じられた。やさしく閉じられた唇、薄く伏せたまつ毛。まるで肖像画のような構図だ。まわりのざわめきが、さっとトーンを落とした気がした。
ウォルター・B
。英語教師。七瀬がかつて想いを告げた相手だ。彼の気持ちのほうは、まだわからない。
『ウォルターさん、会いたかった!』
じゃなくて。
歓声をあげたくなるのをこらえ、七瀬は気づかれぬよう歩を進めつつ呼吸を整える。
『ウォルターさん、奇遇ですねぇ!』
でもなくて。
もうちょっとこう、気の利いたセリフは──頭をめぐらせるがなかなかいいのが出てこない。
なので第一声はこうなった。
「ウォルターさん、相席よかですか?」
顔を上げたウォルターは、やや驚いたように眉を動かしてから、穏やかな笑みを浮かべた。
「おや、七瀬も来てたのかい。もちろんどうぞ」
笑い皺をたたえた彼の目元は優しくて、無防備とすら思えるのに、不思議と踏み込みきれない空気をまとっていて、七瀬は少し、彼との距離を意識してしまった。
七瀬は向かいに腰を下ろし、持参した三冊のうち一冊を見比べた。
「……あれ、これ、偶然……同じ本ですね。ウォルターさんが読んでいるのと」
ウォルターがめくっていた本は、七瀬が選んだ三冊目と同じだった。
あらすじによれば、古代の言語を学ぶことで、失われた自分の言葉を取りもどそうとする女性の物語だという。
「さっき買ったんだ。いい本だよ。静かな言葉ほど、後から響くから」
「たしかに、そういうの、ありますね」
七瀬はグラスを傾けながら、視線だけでウォルターの顔を追った。まつ毛が長い。睫毛の影が、頬に落ちていた。
ウォルターはページに視線を戻しながら、静かに言った。
「言葉じゃ、どうにもならないものが、言葉のなかにあるんだ」
それが本の感想なのか、それとも何か別の意味があるのか、七瀬にはわからなかった。
ただ、彼の声の低さと、そこに含まれていた温度だけが、やけに胸に残った。
──言葉じゃ、どうにもならないもの。
その響きを、七瀬はゆっくりと反芻した。
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担当ゲームマスター
桂木京介
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
学校生活
恋愛
定員
10人
参加キャラクター数
10人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2025年06月15日
参加申し込みの期限
2025年06月22日 11時00分
アクション投稿の期限
2025年06月22日 11時00分
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