- 0
- 0
- 種族
-
- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
Mon seul Tresor
鈴の音に導かれた先は、夜の公園だった。ベンチを囲むようにして立つ人の間から、見覚えのあるボロボロのぬいぐるみを見つけて、聖は走り出した。ボロボロになり、所々破れた痛々しいお友達を前に、その場に崩れ落ちる。あんなに大切なお友達をここまで痛めつけてしまったのは、他でもない聖自身だった。
「ごめんなさい。許してもらえないのは、分かってます。でも……っ」
寂しそうな鈴の音が響く。春告は泣きじゃくる聖を見ながら、何かが違うと感じていた。あの女の子は、この子に謝って欲しかったのだろうか？
「ごめんなさいじゃなく、別の言葉に出来ないか？ 例えば……」
言いかけた春告の言葉を押し留めるように遊琳が立ち上り、口元で人差し指を立てる。意図に気付いた春告が頷くのを見てから聖の隣にしゃがみ込むと、優しく諭すように語り掛けた。
「あの子は、君を信じて待っていてくれたんだよ。かける言葉は、ごめんなさいだけ？」
聖の目が大きく見開き、ぬいぐるみに向けられる。
「……私の事をずっと待っていてくれて、ありがとう……」
ベンチに、女の子の姿が浮かぶ。ぬいぐるみを膝に乗せるようにして座る女の子の顔は嬉しそうで、衝はほっと安堵の息を吐いた。少女が朧の手を一度だけ強く握った後でピョンとベンチを飛び降り、聖の前に立つと、周囲を見渡してからペコリと頭を下げた。
『聖と会わせてくれて、ありがとう』
素直なお礼の言葉に、征一郎が「別に何もしてねぇ」と呟き、武道がからかうように小脇をつつく。剛が複雑な表情で左目を前髪で隠し、遊琳が聖母のように微笑む。
『聖、私を思い出してくれて、見つけてくれて、ありがとう』
「私の事を、許してくれますか？」
『私、怒ってないよ』
ただ、悲しかっただけ。捨てられてしまった事が、忘れられてしまった事が。
「また私の傍に、いてくれますか？」
『……聖が、そう望むなら』
少女が飛びっきり嬉しそうな笑顔を浮かべ、キラキラとした光の粒を撒き散らしながら消える。ボロボロの銀狐のぬいぐるみが聖の手の中に落ち、ギュっと胸に抱いた。心の中にごめんなさいという言葉が溢れるが、この子が欲しかった言葉は謝罪ではない。
「大切な事を、思い出させてくれて、ありがとう」
春告が噛み締めるようにそう言って、ぬいぐるみの頭を撫でる。修は最後に見せた少女の綺麗な笑顔を思い出し、口の端を上げた。こんなに素敵な結末に立ち会えたのだから、最後までついてきて良かったと心から思う。
「御鏡さん。ちょっと数日、この子を預からせてもらえませんか？」
不意に礼二がそう言って、聖の黒い瞳を覗き込む。
「腕の良いぬいぐるみ修理師を知っているんですよ～。このままでは、あまりにも可哀想ですからねぇ」
礼二が青い瞳をぬいぐるみに向けながら、優しく微笑む。普段の礼二からは想像もできないような柔らかい表情に、遊琳が思わず目をこすり、一度強く瞑ると開いた。礼二は相変わらず穏和な笑顔を浮かべており、どうやら目の錯覚ではないらしい。
「……お願いします」
少し迷った様子の聖だったが、ギュっと抱き締めた後で深々と頭を下げると、銀狐のぬいぐるみを礼二の手にそっと乗せた。少しの間またお別れする事になってしまうけれども、この子だってボロボロのままでいるよりは良いだろう。
「帰って来たら、また一緒に色んなところに行きましょうね」
今度は絶対に、手放すような事はしないから。聖が微笑みながら声をかけた時、いつの間にかぬいぐるみの右手についていた鈴が、自身の役目が終わった事を悟り、ポトリと地に落ちた。
「ごめんなさい。許してもらえないのは、分かってます。でも……っ」
寂しそうな鈴の音が響く。春告は泣きじゃくる聖を見ながら、何かが違うと感じていた。あの女の子は、この子に謝って欲しかったのだろうか？
「ごめんなさいじゃなく、別の言葉に出来ないか？ 例えば……」
言いかけた春告の言葉を押し留めるように遊琳が立ち上り、口元で人差し指を立てる。意図に気付いた春告が頷くのを見てから聖の隣にしゃがみ込むと、優しく諭すように語り掛けた。
「あの子は、君を信じて待っていてくれたんだよ。かける言葉は、ごめんなさいだけ？」
聖の目が大きく見開き、ぬいぐるみに向けられる。
「……私の事をずっと待っていてくれて、ありがとう……」
ベンチに、女の子の姿が浮かぶ。ぬいぐるみを膝に乗せるようにして座る女の子の顔は嬉しそうで、衝はほっと安堵の息を吐いた。少女が朧の手を一度だけ強く握った後でピョンとベンチを飛び降り、聖の前に立つと、周囲を見渡してからペコリと頭を下げた。
『聖と会わせてくれて、ありがとう』
素直なお礼の言葉に、征一郎が「別に何もしてねぇ」と呟き、武道がからかうように小脇をつつく。剛が複雑な表情で左目を前髪で隠し、遊琳が聖母のように微笑む。
『聖、私を思い出してくれて、見つけてくれて、ありがとう』
「私の事を、許してくれますか？」
『私、怒ってないよ』
ただ、悲しかっただけ。捨てられてしまった事が、忘れられてしまった事が。
「また私の傍に、いてくれますか？」
『……聖が、そう望むなら』
少女が飛びっきり嬉しそうな笑顔を浮かべ、キラキラとした光の粒を撒き散らしながら消える。ボロボロの銀狐のぬいぐるみが聖の手の中に落ち、ギュっと胸に抱いた。心の中にごめんなさいという言葉が溢れるが、この子が欲しかった言葉は謝罪ではない。
「大切な事を、思い出させてくれて、ありがとう」
春告が噛み締めるようにそう言って、ぬいぐるみの頭を撫でる。修は最後に見せた少女の綺麗な笑顔を思い出し、口の端を上げた。こんなに素敵な結末に立ち会えたのだから、最後までついてきて良かったと心から思う。
「御鏡さん。ちょっと数日、この子を預からせてもらえませんか？」
不意に礼二がそう言って、聖の黒い瞳を覗き込む。
「腕の良いぬいぐるみ修理師を知っているんですよ～。このままでは、あまりにも可哀想ですからねぇ」
礼二が青い瞳をぬいぐるみに向けながら、優しく微笑む。普段の礼二からは想像もできないような柔らかい表情に、遊琳が思わず目をこすり、一度強く瞑ると開いた。礼二は相変わらず穏和な笑顔を浮かべており、どうやら目の錯覚ではないらしい。
「……お願いします」
少し迷った様子の聖だったが、ギュっと抱き締めた後で深々と頭を下げると、銀狐のぬいぐるみを礼二の手にそっと乗せた。少しの間またお別れする事になってしまうけれども、この子だってボロボロのままでいるよりは良いだろう。
「帰って来たら、また一緒に色んなところに行きましょうね」
今度は絶対に、手放すような事はしないから。聖が微笑みながら声をかけた時、いつの間にかぬいぐるみの右手についていた鈴が、自身の役目が終わった事を悟り、ポトリと地に落ちた。
あとがき
担当マスター：
雨音響希
ファンレターはマスターページから！
ご参加いただきましてまことにありがとうございました。
今回、大事な思い出の一場面や重要なシーンを沢山お任せいただきましてありがとうございました。
物凄く緊張しました。イメージを壊さずに描けていればと思います。
またご縁がありましたら宜しくお願いいたします。
今回、大事な思い出の一場面や重要なシーンを沢山お任せいただきましてありがとうございました。
物凄く緊張しました。イメージを壊さずに描けていればと思います。
またご縁がありましたら宜しくお願いいたします。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
-
- 2013年12月17日
- 参加申し込みの期限
-
- 2013年12月24日 11時00分
- アクション投稿の期限
-
- 2013年12月24日 11時00分
