●ＶＳジャイアント霧生弁当、ジャイアント戌井弁当（２）●


【体育館】

「お、おいしい……けど、すごい量……けふっ。
　でも先輩が作ってくれたから、負けないっ！（ガツガツ）」
　こちらはジャイアント戌井の投げ付けるボールを、ひたすら食べまくっている戌井 創、
「あっ見て、創君！　巨大創君の本体が！？」
　そして数十分後、添木 牡丹の指さす方向を見れば、立っていた巨人がいつの間にか消え失せている！
「自分の身を削りすぎて……消滅しちゃった？」
　あは……と安堵と食べ過ぎで、フロアに倒れる戌井。
「せ、先輩……おいしかった、よ……ご馳走様でした」
　さわやかな笑顔のまま気絶するその戌井に……今度は大量のライスボールが襲い掛かった！
「って、創君！？」
　巨人は消滅したのではなく、その身を全てボールに分割したのである。他の巨人より小柄とは言え、戌井の身体より大きな体積の物を、さすがに１人で完食するのは無理だった。その全てのライスボールに、ぴょこんと犬耳と尻尾が生え、フロアに倒れている戌井めがけてワンワンごろごろと殺到する！
　ぼかーーんっ！
　戌井をプレスしようとしたその１個を弾き飛ばして、ゆらり……と牡丹が立ち上がった！？
「……何、私の創君に手を出してるんですかぁ〜？
　創君似の弁当だからって容赦しませんよ？」
　八極拳の使い手である牡丹は、震脚という発勁の技で威力を上げた冲捶という突き技を用いて、ボールを弾き飛ばしたのである！
「所詮はお弁当風情が！　……って、あ、あれ？」
　その弾き飛ばされたボールが他のボールに玉突きを起こし、立体ビリヤードのようにズガガガと体育館を跳弾する、無数のライスボール！
「あわわ……こっ、ここは無理せずに逃げましょう！
　きっと誰かが退治してくれます！」
　と気絶している戌井をおんぶして、その場をスタコラと逃げ出す牡丹！


【野球場】

　▼エネミー情報：
　●ジャイアント触手弁当（モデル：霧生 深雪）
　・主成分：麺。ひたすらに麺類。
　・主兵装：触手スパゲッティ。

　そして野球場では、霧生 深雪が触手弁当にとっ捕まっていた。
「Σ おいコラ！　触手弁当って何だよ！　聞いてねーぞ！？」
　スパゲッティに逆さ吊りにされたまま、地上のロベルト・エメリヤノフに怒鳴りまくる霧生さん。かなりお怒りのご様子だ。
「僕にそう言われても……あっ、巨大化する過程で、
　他のお弁当の麺とか取り込んだのかもね！　よくあることだよ」
「ねーよ！　うぅクソ、手足に触手が巻き付いて気持ち悪りぃ……」
「あっ霧生、いいねそのポーズ！
　理想の美少年が傷つき喘ぐ様子……アッ何か興奮してきた！」
「てめぇ後でタダじゃすまさねーからな！？」
「分かったわかった、マジメに助けるよ……
　お気に入りの美術品（霧生）が壊れたら大変だしね」
　借りてきた竹刀でビシバシと巨人の足を打つロベルト、すると触手の締め付けが緩み始めた。美少年に関わることなら、彼の身体能力はその下心パワーで飛躍的に上昇するのである！
「ぷぎゃ！」
　あっ、そのロベルトがボールの下敷きになった！
「ロベルトー！？」
　そう、ボールだ。あのジャイアント戌井の大量のライスボールが、添木 牡丹たちをはるばる追っかけ、この野球場までなだれ込んできたのである！
「た、助けて下さいですぅー！」
　戌井 創をおんぶしたまま、その先頭で必死に逃げ回る牡丹。そしてロベルトが倒れたため、再びギリギリと霧生を締め付け始める触手！
「ぐあっ……こっ、この！」
　その触手の１本が、自分の指に絡み付こうとしているのを見て……ぷちーーんと霧生の中で何かが切れた！
「てめぇこの……指を怪我でもしたらどうすんだ！」
　その１本を咄嗟に歯で噛み千切り、
　ブチイッ！　──その切断音が、霧生の裡なる能力を呼び覚ます。
　ブチ、ブチと触手を１本引き千切るたびに、彼の身体能力が上昇し、そのパワーがさらに新たな触手の破壊音を生み出す。ろっこん【破壊の旋律】がもたらす相乗効果で、霧生深雪──触手弁当の全てのスパゲッティを引き千切り、脱出に成功！
「よくも俺をあんな恥ずかしい目に……お返しだ！」
　そしてスチャッと金属バットを握り直すと、グラウンドに雪崩れ込んできた全てのライスボールを、目の前の巨人に向かって打ち返し始めた！
「右腕！　左腕！　お次は首！
　オラオラどうした、もうへばったか！
　お次は胴体だ、しっかり捕りやがれ！」
　ろっこんを上手く利用した驚異的な身体能力の向上で、たちまち自分の痛弁を穴だらけにし……
　ドシャドシャー！とマウンドに崩れ落ちる、ジャイアント霧生！　ついでにライスボールと化したジャイアント戌井も一石二鳥で粉砕し、霧生深雪、ここに２体の痛弁を撃破！
「勝った……やったぞ、霧生！
　さあこの弁当を受け取ってくれ！！　そして食べてくれ！！」
　そしてマウンドに散乱した弁当を指さすロベルトを、しこたま殴り付けることも、勿論忘れない霧生だ。


【中庭】

　ギャイーーーーーン！

　ビック凛の手から、千鳥 雅人と堂島 直樹の活躍によって救出された雨寺 凛。しかしその彼女を狙って、なお執拗に巨人の攻撃は続いていた。巨大ギターを校舎の窓にぶつけて、（物理で）爆音を出すビック凛、
「キャーーーーーーッ！？」
　降り注ぐそのガラスから凛を守って、必死に逃げ回る千鳥と堂島。そこにまた、ひょこひょことやって来たのは桃原 空音だ。堂島たちから説明を受けてようやく、
「ええっ、おぱんつ見せてくれないこっちが本物の凛ちゃんなの？」
「だからさっきからそう言ってるでしょ！？
　あっちは（指さし）空音ちゃんが作ってくれたお弁当なんだってば！」
「痛弁の……おまじない？　何それ（きょとん）
　Σ えええーーー！？　おおおまじないなんて知らなかったんだよ！！」
　こんなことになった事情を聞かされ、仰天する空音だ。
『リィ……？』
　その空音の大声を聞いたビック凛が──何故か凛を追うのを止め、不思議そうにその場で立ち止まった。その巨大痛弁の様子にも気付かず空音の方は、
「えっと、このままじゃ勝てそうにないから……プロテインで対抗！
　いっぱい飲んでこれであたしも……Σ って、大きくならないじゃん！
　もう！！　こうなったら玉砕覚悟で突撃だー！！」
　と闇雲に突っ込んだ空音が、ぼふっと巨人の足に大の字で激突した。
　その空音めがけてビック凛が手を伸ばし──
「きゃっ、だめぇ！　逃げて、空音ちゃん！」

　──おずおずと巨人がその人差し指で、空音のアホ毛頭を撫でた。
「へっ？」
　ぱちくりと目を開けて、もう攻撃してこないビック凛を見上げる空音。
「……こ、これはいったい、どうなってるのだ？」