- 0
- 0
- 種族
-
- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
LIQUID -Star Chronicle- 風花の英雄譚
【サイドクエスト：『風渡り』（１）】
「くっはーーー！！ くうううう、五臓六腑に染み渡るうーーー！！」
「オッサンくさいよ、マーナ……」
アオイ（プレイヤー：仙藤 蒼）は苦笑いを浮かべた。馬乳酒を盛大にあおるマーナ（プレイヤー：斎藤 愛）の、この幸福に満ちた顔ときたら。彼女は実生活においてもなかなかに酒豪であるらしい。
「いつかアオイとも飲めたらいいな。寝子島でさ」
「私も興味はあるけど、あと４年は待ってもらわないとねー」
「待つ待つ！ まあここでならそんなこと気にする必要もないわけでね。そーら飲めー！ シャローテもウーピーちゃんも、ほらほら！」
黙っていれば大人びて淑女然としたシャローテはまだしも、ウーピーことオートマタのＵＰＷ２が杯を持った絵面などはかなり犯罪的なのだが、リキッド大陸に未成年者飲酒禁止法は存在しないようだ。問題はないだろう。現に周囲には馬乳酒をたしなむ年若い遊牧民の少年少女の姿もあった。
「う。け、けっこうクセがありますわね……」
特有の強い酸味にシャローテが遠慮もなく顔をしかめると、多彩な色を配された民族衣装を身につけた男が陽気に言った。
「まあまあ、飲んでりゃそのうち慣れるって！ どんどん飲んで、食べて、歌って踊って、われわれの旅路の無事を祈っておくれ。それが＜風渡り＞の祭りというわけさ！」
彼の笑みは魅力的だ。飾らず朴訥で、文明の垢に擦れていない、大陸の自然とともに在る男の真に無垢なる笑顔だった。
風渡り。彼ら遊牧民は、この夜通しの宴を経て、夜明けとともに旅立つ。モンスーンに乗り、吹けば今にも砕けそうな……なんとも簡素で原始的な飛行船を駆り、コーフィルに広がるコロン大砂丘をひと息に飛び越えるのだ。ここピーベリ平原には馬や牛、羊たちの食む質のよい草が生い茂るが、長く滞在しすぎると家畜たちが食い尽くしてしまう。彼らが季節ごとに移動を繰り返すのは、新たな草々が生え伸びる猶予を持たせ、持続的な遊牧生活を営むためだ。
彼らは日の出とともに、遠くモカタリ丘陵へと旅立つ。
「よく考えてるんだね、自然のことを」
「うん？ どうだかねえ。昔っから、長いこと、そうやって暮らしてきたからねえ」
事もなげに言ってみせた男に、アオイはどこか、なにか偉大なものの片鱗を感じ、畏敬の念をそえて杯をかかげ、馬乳酒をあおった。
「ほう、やっているね。どうも、魔女です」
「あっ。タビガラスさんだ」
ふらりとやってきたタビガラス（プレイヤー：旅鴉 月詠）は有名人である。あらゆる利便設備を詰めこんだ彼女のハウジングエリアの利用者は多く、エキセントリックに過ぎるサービスの数々に魅了される者は後を絶たず。伝説となったハウジング王選手権での優勝はその知名度をさらに押し上げ、いまや『LIQUID』内に知らぬ者はないほどだ。アオイも幾度となく彼女の名を耳にし、多くの友らに囲まれる姿を見かけたことがあった。
「やあ、よく来てくれたね」
遊牧民の男が笑みを浮かべ手を差し出すと、タビガラスはそれを握り返し、いつもながらの無表情を保ちつつ告げた。
「さっそく準備にとりかかろう。今日のキャンプファイヤーは天をも焼くぞ」
「ははは、そりゃあ豪勢だなあ！」
ずしんずしんと重たく地を踏みしめやってきたのは、＜メカチキンコマンドー君＞。クラフトマスター系クラスが扱うロボットだが、タビガラスの組み上げたそれはなぜだかトサカを持つニワトリの姿をしていた。しかもゴリゴリのマッチョだ、ロボットなのに。山のようなクラフト素材を両手に抱え上げ、堂々たる姿に遊牧民らは拍手喝采。あまりの筋肉質にアオイはちょっとばかり引いた。
「さてここに用意しましたのは希水の花です。今季はそこらじゅうの水辺でこの良質な魔力結晶が手に入るわけで、大変助かりますね」
ナントカクッキングめいたやけに慇懃な物言いで、さっそく作業を開始する。タビガラスがまず請け負ったのは、先に述べたキャンプファイヤーの設置。それに焼肉用のグリルも。遊牧民は風渡りに際し、余剰となった肉を提供してくれた。それらをこんがり焼いて美味しくいただくのが祭りの通例だ。
「ロボたち、頼むよ。設計図どおりに組み立ててくれたまえ」
タビガラスが手をかざすと、小さなヒヨコ型ドローンたちが無数に出現し、ブループリントに従って資材を組み上げ始める。彼女はロボットフォートレスであり、＜陣地作成・工場＞のスキルを利用して大規模なオブジェクトのクラフトが可能なのだ。
そうして瞬く間に組み上げられたキャンプファイヤーは、これまた巨大なチキン型だった。
「うむ。これでひと晩は燃え続けるだろう」
「なぜその形にこだわるの……」
思わず飛び出したアオイのツッコミもよそに、点火。砕いた希水の花の粉末を着火剤として炎はごうと燃え上がり、青く沈みゆく空を七色の輝きで染め上げた。
空へ染みわたるような歌がこぼれ出したのは、その時だ。
「くっはーーー！！ くうううう、五臓六腑に染み渡るうーーー！！」
「オッサンくさいよ、マーナ……」
アオイ（プレイヤー：仙藤 蒼）は苦笑いを浮かべた。馬乳酒を盛大にあおるマーナ（プレイヤー：斎藤 愛）の、この幸福に満ちた顔ときたら。彼女は実生活においてもなかなかに酒豪であるらしい。
「いつかアオイとも飲めたらいいな。寝子島でさ」
「私も興味はあるけど、あと４年は待ってもらわないとねー」
「待つ待つ！ まあここでならそんなこと気にする必要もないわけでね。そーら飲めー！ シャローテもウーピーちゃんも、ほらほら！」
黙っていれば大人びて淑女然としたシャローテはまだしも、ウーピーことオートマタのＵＰＷ２が杯を持った絵面などはかなり犯罪的なのだが、リキッド大陸に未成年者飲酒禁止法は存在しないようだ。問題はないだろう。現に周囲には馬乳酒をたしなむ年若い遊牧民の少年少女の姿もあった。
「う。け、けっこうクセがありますわね……」
特有の強い酸味にシャローテが遠慮もなく顔をしかめると、多彩な色を配された民族衣装を身につけた男が陽気に言った。
「まあまあ、飲んでりゃそのうち慣れるって！ どんどん飲んで、食べて、歌って踊って、われわれの旅路の無事を祈っておくれ。それが＜風渡り＞の祭りというわけさ！」
彼の笑みは魅力的だ。飾らず朴訥で、文明の垢に擦れていない、大陸の自然とともに在る男の真に無垢なる笑顔だった。
風渡り。彼ら遊牧民は、この夜通しの宴を経て、夜明けとともに旅立つ。モンスーンに乗り、吹けば今にも砕けそうな……なんとも簡素で原始的な飛行船を駆り、コーフィルに広がるコロン大砂丘をひと息に飛び越えるのだ。ここピーベリ平原には馬や牛、羊たちの食む質のよい草が生い茂るが、長く滞在しすぎると家畜たちが食い尽くしてしまう。彼らが季節ごとに移動を繰り返すのは、新たな草々が生え伸びる猶予を持たせ、持続的な遊牧生活を営むためだ。
彼らは日の出とともに、遠くモカタリ丘陵へと旅立つ。
「よく考えてるんだね、自然のことを」
「うん？ どうだかねえ。昔っから、長いこと、そうやって暮らしてきたからねえ」
事もなげに言ってみせた男に、アオイはどこか、なにか偉大なものの片鱗を感じ、畏敬の念をそえて杯をかかげ、馬乳酒をあおった。
「ほう、やっているね。どうも、魔女です」
「あっ。タビガラスさんだ」
ふらりとやってきたタビガラス（プレイヤー：旅鴉 月詠）は有名人である。あらゆる利便設備を詰めこんだ彼女のハウジングエリアの利用者は多く、エキセントリックに過ぎるサービスの数々に魅了される者は後を絶たず。伝説となったハウジング王選手権での優勝はその知名度をさらに押し上げ、いまや『LIQUID』内に知らぬ者はないほどだ。アオイも幾度となく彼女の名を耳にし、多くの友らに囲まれる姿を見かけたことがあった。
「やあ、よく来てくれたね」
遊牧民の男が笑みを浮かべ手を差し出すと、タビガラスはそれを握り返し、いつもながらの無表情を保ちつつ告げた。
「さっそく準備にとりかかろう。今日のキャンプファイヤーは天をも焼くぞ」
「ははは、そりゃあ豪勢だなあ！」
ずしんずしんと重たく地を踏みしめやってきたのは、＜メカチキンコマンドー君＞。クラフトマスター系クラスが扱うロボットだが、タビガラスの組み上げたそれはなぜだかトサカを持つニワトリの姿をしていた。しかもゴリゴリのマッチョだ、ロボットなのに。山のようなクラフト素材を両手に抱え上げ、堂々たる姿に遊牧民らは拍手喝采。あまりの筋肉質にアオイはちょっとばかり引いた。
「さてここに用意しましたのは希水の花です。今季はそこらじゅうの水辺でこの良質な魔力結晶が手に入るわけで、大変助かりますね」
ナントカクッキングめいたやけに慇懃な物言いで、さっそく作業を開始する。タビガラスがまず請け負ったのは、先に述べたキャンプファイヤーの設置。それに焼肉用のグリルも。遊牧民は風渡りに際し、余剰となった肉を提供してくれた。それらをこんがり焼いて美味しくいただくのが祭りの通例だ。
「ロボたち、頼むよ。設計図どおりに組み立ててくれたまえ」
タビガラスが手をかざすと、小さなヒヨコ型ドローンたちが無数に出現し、ブループリントに従って資材を組み上げ始める。彼女はロボットフォートレスであり、＜陣地作成・工場＞のスキルを利用して大規模なオブジェクトのクラフトが可能なのだ。
そうして瞬く間に組み上げられたキャンプファイヤーは、これまた巨大なチキン型だった。
「うむ。これでひと晩は燃え続けるだろう」
「なぜその形にこだわるの……」
思わず飛び出したアオイのツッコミもよそに、点火。砕いた希水の花の粉末を着火剤として炎はごうと燃え上がり、青く沈みゆく空を七色の輝きで染め上げた。
空へ染みわたるような歌がこぼれ出したのは、その時だ。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
-
- 2025年05月07日
- 参加申し込みの期限
-
- 2025年05月14日 11時00分
- アクション投稿の期限
-
- 2025年05月14日 11時00分
