【七夕】飛べ、天の川！　ラブラブ♪ランデブー！｜リアクション

【七夕】飛べ、天の川！　ラブラブ♪ランデブー！

【カオス注入タイム】

『萌えなＢＬにたくさん出会えますように♪』

「よし！」
　竹に短冊を吊るした響タルトは力強く頷いた。

　数十分前まで金魚すくいで奮戦していた響。
　だが祭りの盛り上がりにテンション上がった彼女は、自然と言葉を漏らした。
「うん、ＢＬが足りないよね」
　彼女は大真面目に、この祭りに男色要素が足りないと考えていた。
　その発想はなかった。
「だったら僕が見付けるっきゃないよね♪」
　そういうことになった。
　響の願いによって、彼女は夜鷹っぽい戦闘機のごとく力強い推進力で大空へ突き抜けていった。

　藍色の浴衣を着込んだ民谷鋭二はねこったーに流れている噂話を確認すると、意気揚々と九夜山展望台へ向かう。
「こいつは――神魂の仕業ですな」
　民谷は野次馬である。
　騒動があると決まって傍観し、その中で翻弄される人々を観察するのが大好きなのだ。
「成程、噂はだいぶ広まってるみたいだな。これは観察するネタに尽きなさそうだ。どれ、俺も益々の野次馬ライフの充実を願って、短冊を吊るしておこう」
　早速彼は短冊を手に取ると、迷いなく願いをしたためた。

『もっと面白いものが見たい』

　その願いは、民谷の体を浮上させるのに充分な願いであった。
「さて、何が拝めるかな？」
　期待を胸に秘め、民谷は天を仰いだ。

　大田原いいなは空を飛ばずに、物陰に潜み続けていた。
「ふむ、コレは誠に面白いことなのじゃ……。観察と行動分析の結果、あの笹に短冊を吊すと何やら神魂絡みの厄介事が起こるようなのじゃ！」
　ニタリ、とドス黒い笑みを湛える大田原。
　その手には、彼女の主砲とも言うべきアイテム、ロケット花火が握られていた。
「ここに陣取れば、りあじゅーどもをこの笛花火でもって爆発四散ッ！　ナムアミダブツッ！　そしてその一部始終を観察するのじゃ！」
　彼女のもう片方の手には、最新式のタブレット端末が掲げられていた。
　この端末から、クラウドサーバーへ観察記録をアップし続けようというのだ。
「何が原因で神魂が乗っかったのかは分からぬが、斯様に繁盛していれば、叔母上も苦労した甲斐があったというもんじゃの！　そして、儂が適当な時間にりあじゅーを帰す。うむ、まさに合理的な方法なのじゃ！」
　独り満足する大田原だが、よもや親族の茶目っ気がこの事件を引き起こしたとは夢にも思っていないであろう。
　だが、その満足も長くは続かない。
　大田原は“伸びきった”自身の手足を眺めて憂う。
「しかし……、叔母上は何故、儂にこの浴衣を着せたのじゃろうか？」

　大田原は自身のろっこん『TRANSEMUTE』によって、外見年齢２０歳程度の大人の女性に変身していた。
「着せられるのが嫌で暴れたら、例の如く伸びたまま戻らぬし、はぁ……」
　大田原――変身時の名をデネボラと呼ぶ――は、居心地が悪そうに身を屈める。
「――これを着ると、儂が１人でいるような気がしてしまって嫌なのじゃよ」
　今日は余計にな、と付け加えるデネボラ。
　見渡せば、カップルや友人たち、家族連れなど『団体様』がそこかしこを闊歩している。
　彼女は孤独を嫌った。苦手であった。
　それゆえに、今のシチュエーションは正直言って虫の居所が悪い。
　最悪といっていい。
（こんな時、彼奴ならどうするのかの……？）
　一瞬脳裏に浮かぶ、顔。
　ほんのひと月前まで顔を合わせば罵り合っていた、あの顔が。
　だが、すぐに首を振って浮かんだ顔を打ち消した。
（儂もどうかしておる。今は目の前の観察対象へ攻撃するのじゃ！）
　デネボラは近付いていくる新たな標的を見定めながら、導火線へ今にも着火させんとウズウズしていた。