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さゆるとじゅんは山寺の墓地を訪れていた。
薄曇りの空の下、竹藪はざわめき、乾いた笹の葉がカサカサと音を立てる。湿った土の匂いが鼻をかすめ、空気は重く冷たい。
崩れかけた石塀と竹藪を背に、古びた卒塔婆や苔むした墓石が無造作にならぶ光景は、忘れられた土地のように静まり返っていた。山鳥の声は遠く、ときおり、どこからともなく吹き抜ける風が墓石の隙間を通って低くうなる。
九鬼姫の墓だけは、そんな景色の中でも不自然なほどくっきりと浮かび上がっていた。
墓石が新しいということもある。だが、じゅんの言うことには、
「店長やキャストたちが定期的に来てるからね」
とのことだ。たしかに、よく掃き清められている。
ふたりで墓とその周りを軽く掃除した。墓石が小さいこともありすぐに終わった。
購入した花を墓前に手向け、さゆるが線香に点火する。
「こういうの、あいつ好きだったから」
じゅんは駄菓子を供えた。コミカルなイラストがプリントされたスナック菓子の小袋、鱈のすり身ながら鰻の蒲焼きっぽく仕立てたもの、プラスチック缶入りのラムネなど、どれもコンビニでも手に入る安価なものだが、九鬼姫の好物だったという。
「信心深いほうじゃないんだけどね」じゅんはため息した。「それでも、冥福を祈らずにはいられない」
ならんで手を合わせた。
さゆるは目を閉じ、祈る。
……九鬼姫さん、どうか私を、私たちを見守ってください。
一分ほどそうしていただろうか。
「なに?」
じゅんのバッグから電子音が鳴った。
「知らない番号? なんだろ」スマートフォンを取り出し、じゅんはしばらく考えこんでいたが、「客かもしんない。ああもう、面倒くさい。ごめん、さゆる。ここにいて」
電話番号まで教えてる馴染み客はあんまないのに、とブツブツ言いながらじゅんは墓場から出て行く。石垣の裏に姿を消した。「ハーイ、まみちゃんだよぅ。電話待ってたぁ~」とじゅんの声色が営業用に変化しているのを漏れ聞き、さゆるは苦笑気味に首をすくめた。
振り返ったさゆるは、墓石のそばに小柄な人影があるのに気づき、驚いて立ち上がった。
「あなたは……!」
見覚えがある。
九鬼姫
ではないか。姫カットに切りそろえた長い黒髪、振り袖に雪駄履き、病院着で昏睡していた姿ではない。遺影で見た生前の姿そのままだった。腕組みして墓石にもたれるようにしている。
ありえないとわかっていながらも、さゆるは恐る恐る問いかけた。
「九鬼姫さん、ですか?」
「そなた、わらわが見えるのか」九鬼姫も驚いたらしい。怪訝な表情をしている。
「見えます。でも」
さゆるは言葉を濁した。
九鬼姫の姿はおぼろだ。なかば透けている。それどころか、何度か消滅しかかっては像を復した。
「ああ、『これ』のことか。そちの思うとるとおりじゃ。あやつ……まみ子には見ゆる気配もなきようじゃがの。よほどそちは、霊の縁(えにし)が濃い身のようじゃて」
九鬼姫は、ほつりと力なく笑った。
「されどそれも程なく果てようぞ。……さて、そちは、まみ子(※じゅんの源氏名)の恋ひ人であろう?」
「はい。さゆると言います」
「存じておる。葬儀の折に見たぞ。間近に見てもほんに別嬪(べっぴん)じゃのう」
「あなたとこうして向かい合うのは初めてですね。できればお元気なころにそうしたかった」
「わらわもそう思う」
九鬼姫が相好を崩すのがわかった。
「あと、そう畏(かしこ)まって話さなんでもよい。友のように話してくりゃれ」
「友のようにと言われましても……」
「まみ子に話すときと同じでよい。というか、頼む」
それで、と九鬼姫は言った。
「わらわに話したいことがあるのじゃろう? ゆえにそちには、わらわが見えておるのであろうぞ。ちがうか? さゆる」
「だったら」と断った上で、さゆるは思いを口にした。「聞いて。九鬼姫さん。私、自信がもてないの。今夜からの仕事に」
九鬼姫は黙って先をうながす。さゆるはつづけた。
「あなたの穴を埋められるなんて己惚れてはいないわ。私は未熟だし。不安だらけでどうすればいいかわからなくて」
はははと九鬼姫は声を立てた。
「誰もわらわの穴埋めなど求めておりゃせん。未熟もまた一興じゃ。忘れるな、仕事とは申せ――」
期せずして九鬼姫は、昨夜さゆるが口にしたのと同じ言葉を口にした。
仕事、と。
だがその先はちがう。
「まずは己が愉しむことじゃ。そちが心より興じてこそ、客人とも歓(よろこ)びを分かちあえるものよ。それでこそ、面白き宴となろう」
「あたし自身が……楽しむ?」
「さよう。そういう場所であろう? あの店は」
無論、常にとはいくまいがの、と言って九鬼姫は微笑を零(こぼ)した。
さゆるは薄曇りの空を仰ぐ。
どこかで、雲間がほどけた気がしたのだ。
「九鬼姫さん」
「九鬼でよい。友は皆そう呼ぶゆえ」
「九鬼。あなたの墓碑銘、『九鬼姫』なのね。『
八幡 かなえ
』ではなく」
九鬼姫は、ふっと肩をすくめた。
「同様のこと、他の者にも言われたことがあるのう」
ほんの少し得意げに続ける。
「そは仮の名を置いたまでのこと。己が名という気がせなんだ。……されば生きておった頃より、墓に刻むは『九鬼姫』と決めておったのじゃ。皆にもそう頼んでおった。わらわにはもう、『八幡かなえ』は要らぬゆえの」
このときふいに九鬼姫の声が跳ねた。
「そうか」何かがひらめいたのだろう。手を打つ。「その手があったわえ!」
「その手? どういう」
さゆるの問いは届かなかった。九鬼姫はもう姿を消していたのである。目で探すがどこにもいない。気配すら。跡形もなく。
「なんか探してる?」
振り返ったさゆるの視線が、じゅんの穏やかな笑みにぶつかる。
「電話は」
「終わった。っていうかまちがい電話だったよ。なのに昔のアニメのこととか話しこんじゃってさ。それで、さゆるはどうしたの」
驚きと、少しばかりの照れを隠せずに、さゆるは言った。
「えっと……彼女。九鬼と話してて」
不思議がられるかと思ったが、じゅんはくすりと笑った。どこか、うらやましそうに。
「よかったね。報告できた?」
「ええ。それに」
さゆるはうなずいた。
「背中を、押してもらえた」
九鬼の声が、風にまぎれて聞こえた気がする。
――「それでよい」と。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
桂木京介
シナリオタイプ(らっポ)
ゴールドシナリオ(200)
グループ参加
2人まで
シナリオジャンル
日常
オールジャンル
定員
5人
参加キャラクター数
5人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2025年02月18日
参加申し込みの期限
2025年02月25日 11時00分
アクション投稿の期限
2025年02月25日 11時00分
参加キャラクター一覧
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