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ヒゲ猫ペンシルと、魔法商店街のはじまりの香り
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【"Lore"】
「なんや、アンタ? けったいなやっちゃなあ」
偉大なる開拓者が姿を消し、入れ代わるようにふらりと現れた希代の魔法使い、ヒゲ猫ペンシルが街へと居着いてから、しばらく経った頃のことだった。
「やあやあ! どうも。僕は白檀 カオル。香水びんの付喪神だよ。なにやら困っていると聞いてねえ、微力ながら君たちのお手伝いをさせてもらえたらとね。くふふ」
「……怪しいな」
「聞いたって、誰にだい? そりゃあ我が魔法商店街は、いつだって都合のいい救いの手を求めちゃあいるけどね」
「ははあ、それならちょうどいいや。墨小路 綾麻呂伯爵だよ。僕の魔法の腕前を認めて、紹介してくれたわけ」
その名をヤツが出したことで、街の者たちはいくらか警戒を解いたらしい。それに、街は困窮していた。度重なる襲撃に、誰もかれもが疲弊していた。おかげでヤツはすんなりと入り込むことができた。ああまったく、そのとおりさ。ヤツの魔法を認めた、というのはヤツが発する虚言ではない、数少ない真実のひとつだったよ。
「あの人が認めたってのか。てめえみてえなうさんくせえヤローをかよ?」
「ん? ペンシル、どうしたんや。そんなに毛を逆立たせて?」
ペンシルの……いや、もういいだろう。吾輩の尾の立ちようを見て胡乱に思ったことだろうが、それでもヤツを迎え入れないという手はなかった。人当たりは良かったしな、外面を取り繕うのにヤツはよほど苦心したことだろう。おまけに吾輩に次ぐ魔法の使い手となれば、喉から手が出る人材であったわけだ。
ふたたび吾輩の前に現れた白檀 カオルという人物は、女ではなく、背格好も顔つきもまるで違う、それでいてあの懐かしい香りをたしかに身にまとう、初めて見る青年の姿をしていた。
「……やめてくれ」
吾輩が思うに、ヤツの姿は、これまでのあらゆる記憶が入りまじったものであったのではないか。たとえば、ヤツが生前に食らったどこかの誰か。ヤツを払おうとした祓魔師か侍か……ヤツを崇め奉った信仰の使徒かもしれない。人間たちの日常に入り込み餌食としたか、哀れにも苗床とされた子どもであったかもしれない。あるいは吾輩や、彼女や……ヤツがこれまでに対峙してきた者たちの姿と、時代や場所の変遷とともに様々な姿や名で認知されてきた虫妖としての曖昧さ、茫漠にして不確かな存在であることが結びつき、このような形として出現したのではないだろうか。
「やめて……やめて」
「ま、そういうことなら歓迎するよ。いくらかあやしくたってかまやしないさ。あたしゃ夕顔 サキだ、ここの顔役みたいなもんさね」
「……犬塚 ハウルだ。妙なことしでかしやがったら、喰いちぎってやるぜ」
「ウチは山田 エレキ、ほんでこっちのカワエエにゃんこが……」
そうだ。
ヤツは、吾輩の記憶から生みだされた"Lore"だ。
「うあああああああああっ!!」
姿見の像をも揺らすような絶叫が霊界の赤い空をふるわせた。
自我の証明が崩壊してゆく苦悶は筆舌に尽くしがたいものだろう。理解には及ばないが、同情はする。
「くあっ、ああああああ!! うあああああああああ!!」
同情か。結局彼女の言うとおりだったな。今吾輩の心を占めるこの感情をきっと、彼女は哀れみとか許しとか呼ぶのだろう。
ヤツは、彼は出現して以降、街の者たちにそうと悟らせぬまま溶け込んだ。此度の夕顔の予言に引っかかることがなかったのは、そういうわけだ。ずっと前からそこにいたのだからな。
「白檀さんが、"Lore"だった……の?」
「どうやらそうらしい」
つぶやいた城山やヒューバート、綾辻やその肩を抱いた早川や、
「……そんな」
あるいは初瀬川や佐和崎には衝撃も大きかっただろうか。はじめに彼から変質の魔法を教わった者たちだから。
「あっああああああ」
集うみなの前で、狂乱がためか、彼は姿見をやみくもに殴りつけた。驚いた倉前が飛び退き、差し伸べようとした志波の手は振り払われる。
「だったら……だったら、せめて! 僕の願いをかなえておくれよ!!」
脇目もふらず殴りつける。無駄だ、破壊できやしない。どんな衝撃であろうといかなる魔法であろうとな、できるならとうにやっているさ。姿見はいつとも分からぬ昔からそこにあった。動かすことのできた者はひとりとていない。
「彼女をよみがえらせて……だって僕は、知らなかったんだ。食べたらなくなってしまうだなんて。そんなこと、誰も教えてくれなかったじゃないか。僕も僕の仲間たちも、食べてお腹を満たして、排泄をして、交尾をして、眠って、また食べて、それだけだった。ほかになにも知らなかった……あんなにも美しいものが、この世にあっただなんて。あんなにも素敵な香りを、僕は胸いっぱいに吸い込んで、そうしたら目の前が真っ白になって、気が付いたら……気が付いたら、彼女は動かなくなってた」
「白檀さん……」
稲積は歩み寄ろうとしたようだが、それをブラックウッドと犬塚が止めた。無理もなかろうさ。
残念ながら願いはかなわない。かなえば良かったと吾輩もそう思うよ、心の底から本当にな。しかし無為なことだ。そもそもなぜ、"遠きもの"に与すれば望みがかなうなどと思いこんだのだろう。芽生えた意思が純粋に願ったがゆえにだろうか。あるいは……吾輩がどこかでそう願ったことなのか。
"遠きもの"はわれわれを覗いている、常に、今もな。たとえばムービーやアニメーションとしてかもしれない。あるいは小説やコミックとして目にしているのかもしれない。あるいは……インターネットとやらのどこかに掲載された物語としてかもな。ずっと昔は洞窟に描かれた壁画であったのだろうから、世の中も変わったものだ。
"遠きもの"は意思の総体であるがゆえに、それ自体に悪意も害意もない。無論、善意も。ただ尽きぬ好奇心があり、留まることのない流れというものがあるだけだ。それらがやがてひとつの帰結を見い出し、形となったものが"Lore"……ところや時代によって都市伝説とか怪異とか呼ばれるものが生み出されるわけだ。
「……僕は」
かなわぬことを、彼自身も悟っているのだろう。
「僕は、じゃあ……なんなんだ? いったい?」
無慈悲な霊界の風が哭いていた。寂寥もたらし、見つめるみなの胸の内でむなしい音を立てた。
「人間じゃない。あやかしでもない。虫の一匹でもない、生き物でさえない! とるに足らない噂話。そっと風にまぎれて消えていくだけの……だったら僕は、なんだったんだ? なんのために僕は……この世になにも残せず、生命としても、記憶としてすら残れない。いずれみんな忘れていく。ちっぽけな僕のことなど……」
「覚えています。俺たちがずっと、あなたを」
憶することなく、八神は彼の肩に手を添えた。不思議な気分だ。そうすることがさも当然のように思えるんだ。あれほどの憎しみが、まるで……彼女の言葉と、寝子島の者らが溶かしてしまったかのようだ。
ああ、そうだな。彼らが覚えているさ。
「あなたみたいな派手なひとを、忘れられませんよ。きっといつまでも覚えている」
「またこの街に来たときに、ふと思い出すんですよ。あんな楽しいひとがいたなって。いろいろ教えてもらったなあって。あなたの顔を」
倉前もうなずき、笑みを見せた。みながそうして笑っていた、少しさみしげに。
たしかに、それは彼がみなの中へ残した証なのだろう。魔法の巧みな扱いを教え、彼特有のユーモアが場を和ませ、いつしか刻み込まれていった。彼の存在は彼の思う以上に残るだろう。吾輩も? 言わずもがな、口にするのは野暮というものだよ。
「……くふ」
もはや愛おしくさえ思える赤茶けた砂塵に乗って、彼は音もなく失せていった。言葉はなく、しかし穏やかだった。立つ鳥跡を濁さず。ヤツにしては上々だったな。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
墨谷幽
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
ホラー
バトル
神話・伝説
定員
10人
参加キャラクター数
9人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2025年01月17日
参加申し込みの期限
2025年01月24日 11時00分
アクション投稿の期限
2025年01月24日 11時00分
参加キャラクター一覧
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