Halcyon Days.｜リアクション

Halcyon Days.

　今日の講義をすべて終えた、卵城秘月は大学を後にしながら、うーん、と大きく伸びをした。

（今日は少々ハードだったね）

　柔道整復師を目指して勉学を続ける秘月の『大学講義』は、いわゆる座学だけではない。マッサージの実習があればそれだけ体力を消耗するし、新しいマッサージ方法を知れば友人同士で試したくなるのも、この道を志すものならきっとあるあるだ。
　マッサージは、素人でも何となくやれる気軽さがあるように見えて、奥が深い。身体の構造をしっかりと学び、どのように揉み解したり、刺激を与えたりすることで被施術者により良い効果をもたらすか、知識を積み上げるとともに数をこなして身体で覚えていくしかないという、スポコン的な一面もある。
　ゆえに秘月もまた同級生や、時に後輩なんかとも空き時間や昼休みに実習室を借りて、お互いにマッサージをし合ったりもする訳で。そうやって身体をしっかりと動かせば、必然的にお腹の方も大変空いてしまうものだから。
　大学から志桜里の道場に向かう道すがら、コンビニに立ち寄った秘月はスポーツドリンクとプロテインバーを購入する。プロテインバーにせよスポーツドリンクにせよ、最近は様々な種類が出ているし、味の方も千差万別なので色々試すのも楽しい。
　今日は、新発売！　とポップが貼られていたラズベリーレモン味のプロテインバーに、甘さ控えめのスポーツドリンクを合わせた。それを、コンビニから出てすぐのところにあるベンチに座って黙々と食べ始めた。

（これからさらに運動するからね、腹ごしらえはしっかりしておかないと）

　運動前にあまり食べ過ぎるのも良くないが、空腹で運動すればエネルギー切れで倒れてしまう事もある。そのため、低脂質なものを必要な運動エネルギー分だけ摂取するのが良いのだとか。
　そんな事を考えながら、秘月は甘酸っぱいプロテインバーを丁寧に咀嚼して、飲み込んでいく。それだけでは口中の水分が奪われるので、適示スポーツドリンクで水分も補給して。
　最後の一欠けらを咀嚼して、飲み込んだら軽食もおしまいだ。

「――さて。志桜里君との稽古に向かおうか」

　そうして秘月は立ち上がると、コンビニのゴミ箱に食べ終えたプロテインバーのゴミを捨て、スポーツドリンクの方はまだ飲み切っていないのでカバンに仕舞い。今日も頑張ろうと、気合を入れて道場までの道を歩き始めた。

このページにイラストを設定する