【七夕】ポニーテールとＳＵＭＯ｜リアクション

【七夕】ポニーテールとＳＵＭＯ

「フレーフレー！」
　最初は戸惑っていた風鳥院鷲羽だったが、すぐに慣れたのか楽しそうにポンポンを振っている。
　夢宮瑠奈はその姿を見届けてから川を見やる。
　遠くから眺めているだけでも気持ちの良さそうな川。
「頑張れー！」
　吉祥寺黒子や神薙焔の威勢のよい声援を背に、瑠奈は川を目指した。
　一番土俵に近いところでは薄野五月が笹船を折っていた。
　しかもキラキラと光る笹で。
　瑠奈は思わず覗きこむと、五月は「……笹舟です」と静かに言った。
「綺麗！……だけど、どうして笹舟なの？」
　瑠奈は首をかしげる。
　五月は
「笹には魔除けの力がある、というお話もあるみたいですよ」
「へぇ、そうなんだー」
　瑠奈はしばらく五月が舟を折っていく様子、そして川に浮かべる様子を眺めてから、
（こんないい自然だもの、見ておかなくちゃ損だよね）
　もっと景色を楽しむために川の上流を目指した。
　お気に入りの緑の浴衣を濡らさないように注意はする。
　けれど川の中の光る石を見つければ喜び、カップルの邪魔をしないようには気を使う。
（岩場が険しくなるかな？　滝はあるかな？）
　期待に胸を膨らませ、瑠奈はこの世界を満喫していくのであった。

　美しい笹林を見ても、味気なく感じた。
　七夜あおいに相撲をさせなくて済んだのはよかったのだが、あれこれとしている間に、彼女自身を見失ってしまったのだ。
『修くん、頼りになる』
　頬染め。
　みたいなのを期待していたわけじゃない。と言ったら嘘になる。ちょっとは期待していた。
　でもそこまではなくても、ホッとしていたり、喜んでいたり……そんなあおいの姿や、せめて悲しそうな顔以外を見たいなと思っただけなのだ。
　なのにいつの間にか居なくなってしまって。
　修はがっくりと肩を落として、笹林を眺めていた。
「――！」
　すると遠くから、よく知っている、間違えるはずのない声が聞こえてくる。
　たすけて。
　確かに、そう聞こえた。
　あおいが助けを求めている。
　修の頭からサッと血の気が引いていくのを自覚した。