【七夕】ポニーテールとＳＵＭＯ｜リアクション

【七夕】ポニーテールとＳＵＭＯ

　楽しそうに囀っていた小鳥たちも静まり返り、寝子島神社を神聖な空気が包み込む。
「ひがぁしぃ～」
　張りのある行司の声が聞こえてきて、雨寺凛はほ～と息を吐いた。
（ああ、元の世界に戻ってきたんだ……）
　夢宮瑠奈はどっしりと構えた力士を見て改めて「頑張れ……！」と声援を送っている。
　そんな彼女らを見て、薄野五月は夢を見ていたような気分から覚める。
「あれは……夢ではなかったんでしょうか？」
　首を傾げると彼女の掌の中のコツンとした感触に気がついた。
　ゆっくりと手を開く。
　それは――石。
　桜貝ではないけれど、ぼんやりと光る石が五月の掌に収まっていた。

　神事の相撲がはじまり、
「美弥子さん、お疲れ様でした」
「わ、ありがとう！」
　御巫時子は美弥子に声をかけてから、縁日に向かった。
　綾辻綾花、神薙焔も同じく縁日に向かう。
　桃川圭花も彼女らに続こうとするが、なかなか足が動いてくれない。
　先の出来事が夢なのか、それとも現実なのか。
　それが、圭花にはよくわからなかったから。
　浴衣は綺麗に元通りであったし、髪型もポニーテールではなくなっている。
　そんな悩みを抱えたまま、少しずつ少しずつ喧騒の中に身を移すと、すぐにそんなことはどうでもよくなったという。

　元の世界に戻ってきた。
　その瞬間、八神修の肩がすぅっと軽くなった。
　隣には七夜あおいが居る。
「ただいま、かな？」
　そう言って首を傾げるので、
「おかえり」
　と修は微笑んだ。
「――と、一足先に１６才だな」
「え、どうして……」
　言葉以上にあおいの表情が問いかけてきた。
「え、そりゃ覚えてるさ、だって」
　だって、好きな人の誕生日なんだから。
　喉に引っかかって、言葉が出てこない。
　そんなときぴょこんとアホ毛が跳ねた。
「あおいちゃんどこ行ってたのー？」
　不安そうに七夜あおいに声をかけている野々ののこ。
「え、っとちょっと人混みに流されちゃって」
「そうなの？」
「あ、美弥子ちゃんはあっちに居たよ」
「本当？」
　闖入者に感謝するべきか否か。
　でもやはり、修は感謝する。
　まだ口にできない理由を胸に仕舞いこんで、
「またな」
「うん、またね」
　愛しい人の背中をそっと見送った。

　相撲が終わり、土俵際からさぁっと人が引いていく。
　まわりに屋台は出ていたけれど、魂行凪はそのどれも覗く気にはなれなくて、意味もなく空を眺めた。
　よく晴れた、綺麗な空だった。
　きっと夜になれば美しい川が見えるだろう。
　凪は確信して、隣の夏神零の横顔を見つめる。
「どうしたでござ、」
　近すぎて、零の顔がよく見えなかった。けれど目がまんまるになっていることはなんとなくわかる。
「な、な、な、」
「零……行こ……」
　今日の零は慌ててばかり。疲れてるのかな。
　凪はぼんやりとそんなふうに思いながら、零の手を握り、土俵を後にした。

　この日、ある人々は不思議な七夕を味わった。
　おかしな――愉快ではない――夢を見たような気分だ。
　けれど現実ではまだ七夕は始まったばかり。
　始まったばかりであった。
　

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あとがき

担当マスター：つるこ。
ファンレターはマスターページから！

お疲れ様でしたぁああああああああああああああ！！！

まさにそんな感じのシナリオだったなと、つるこ。は思います。
だいぶ見切り発車な感じでガイドを出して、
想像以上に『ええええええええええ』みたいな反応を頂いて、
途中追記が出たりして、
一体どうなるんだろうとドキドキしながらアクションを待っていた日々が懐かしいです。
いやぁ、なんていうか、皆さんはやっぱりすごいと思います！！！
私の想像とか予想とかはるかに超えるアクションが満載で、もうとっても楽しかったです。（血反吐
結果的にコメディで熱血バトルで恋愛で、実にカオスな感じになった気がします。あくまで気が。
まだまだこんなのぬるいぜ！　という声がどこかから聞こえてきそうですが、そんな声も含め、叱咤激励お待ちしております！
コメント欄、ダイアリーを是非ご活用ください。
ということで、細かいことは個別コメントで書かせていただくとして、
今回はこの辺りで失礼致します！
皆さんありがとうございました！

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