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授業風景 ～３年普通科の場合～
●授業後／３年生教室前にて
せーんーぱーいー！
遠くから聞こえてくる声に、壁際の席に座っていた坂内 梨香は窓から首を出して廊下を見た。
「あ！ 梨香せんぱーい！ お疲れ様でーす！」
そう言って駆けてくるのは深民 実々だった。ああもうまたそんなに走って危ない……！ とヒヤヒヤしながら深民を見守る坂内であったが、さすがに先ほどの額への一撃が効いたのか、深民は今度は転ばないようにと白衣の裾をまるでドレスのようにつまんで持ち上げている。
と、そんなマイペースな深民のおでこに一枚の絆創膏が貼ってあるのに気付いた。
「そのおでこどうしたの？ まさかさっきの怪我？」
「ん？ あ、そうなんですー。でももう大丈夫ですよ！ ちょっと切っただけですから……へへ、でも眼鏡が無事でよかったぁ。私、子供っぽく見えないように伊達眼鏡でキリッとさせてるんです」
「ぜんぜんキリッと見えないわ」
得意げな顔で言う深民に、さすがに坂内は突っ込んだ。
ええ、そんなぁ。その言葉に眉を寄せて口をとがらす様子が既に子供っぽいのだから仕方がない。
「うーん。あ、そうだ！ それなら先輩がちょっとかけてみてくださいよぉ」
「え？ 私が」
なんで、と言う間もなく、深民は小さく背伸びをすると坂内の顔に眼鏡をかけさせた。
視界を歪めることのないただのガラスレンズの向こうで、深民が顔を輝かせてこちらを覗きこんでる。
「わー！ 先輩似合いますよ！ 超おとなっぽいです！」
「え、ええ……？ そうかしら？」
そう言われると悪い気はしない。教室の窓ガラスの映り込みを見て、坂内は自分の顔をこっそりと確認してみるのだった。
……うん、悪くないかも。
教室を出た海原 茂は、見知った人影が教室の前にいるのに気がついた。
あれは、と目を細めてみると、先ほど会話した御巫 時子が小さく頭を下げるのが見えた。
「海原先輩、お疲れ様です」
「ああ、御巫もお疲れ様だ。……えーっと、俺の名前の由来の話だったな」
海原の言葉に、ええ、と御巫は嬉しそうに頷く。
「大した由来じゃないぞ？ 俺が生まれた日……庭の草がぼうぼうに茂っていたんだ」
改めて言うとなると気恥しい。ごほん、とわざとらしく咳をすると、海原は言った。
「……はい？」
さすがに予想外の言葉に、御巫は思わず首を傾げる。
「……いや、だから、今言ったままの理由だ。……大したことないと言っただろう」
生真面目そうに見えて、案外この先輩は親しみやすいところがあるのかもしれない。
そんな海原の様子に、御巫は思わず笑みを浮かべつつ頭を下げた。
「ふふ、面白い由来なんですね……。ありがとうございます」
休み時間にはさすがに堅苦しさを少しだけ緩める風紀委員の二人組。
矢萩 咲と北風 貴子が会話をしていると、お疲れさーん、と軽い調子で声をかけられた。
「ん？ あれ、あなたは……」
北風が顔を向けると、そこには派手な金髪の後輩――八十八旗 信彦の姿があった。
「あなた、一年生でしょう？ ここは三年生の教室です」
すかさず矢萩がきっぱりとした口調で言うが、八十八旗は気にした様子もなく肩をすくめる。
「失礼致しました先輩。けれどたまには下級生との交流も大事じゃないですか？」
たとえば授業の話とか。八十八旗はさりげなく話題をつなげる。授業の話、となると真面目な二人は表情からかすかに警戒心を薄れさせたようだった。うん、我ながらいい話題の流れだぞ……と内心で自画自賛しつつ。
「今日の授業は名前の由来だったんですよね？ 北風先輩のお名前は貴いと書いて貴子！ 正しく気高い君にピッタリの名前だね！」
「そ、そう……？」
臆面もなく褒められ、さすがの北風も少し嬉しそうな表情を見せる。
「ちなみに俺の名前は信彦。信は忠実であること、彦は容姿や才覚に秀でた男子の美称。彦星なんかがまさにそうだね」
どうです？ 俺にぴったりの名前でしょう。
爽やかに笑って八十八旗がそう言ったときだった。
どーん！ と大きな音が響いたかと思えば、教室のロッカーから掃除用具が飛び出してくる。
驚いて三人がそちらに目を向けると、モップや箒にまみれてそこに伏していたのは後木 真央の姿だった。
「う、うわっ、あれは同じ学年の……？」
「ちょ、ちょっとあなた！ そんなところで何やってるの？！」
ぎょっとして駆け寄る矢萩に、長時間ロッカーに身を潜めて疲れ果てた後木は後木は小さく呻く。
「ううう……真央ちゃんの名前は神社で決めてもらっちゃったので、センパイたちの感動巨編を聞きたかったの……だ……」
そこまで言うと、限界、というように後木はぽふっと突っ伏した。
せーんーぱーいー！
遠くから聞こえてくる声に、壁際の席に座っていた坂内 梨香は窓から首を出して廊下を見た。
「あ！ 梨香せんぱーい！ お疲れ様でーす！」
そう言って駆けてくるのは深民 実々だった。ああもうまたそんなに走って危ない……！ とヒヤヒヤしながら深民を見守る坂内であったが、さすがに先ほどの額への一撃が効いたのか、深民は今度は転ばないようにと白衣の裾をまるでドレスのようにつまんで持ち上げている。
と、そんなマイペースな深民のおでこに一枚の絆創膏が貼ってあるのに気付いた。
「そのおでこどうしたの？ まさかさっきの怪我？」
「ん？ あ、そうなんですー。でももう大丈夫ですよ！ ちょっと切っただけですから……へへ、でも眼鏡が無事でよかったぁ。私、子供っぽく見えないように伊達眼鏡でキリッとさせてるんです」
「ぜんぜんキリッと見えないわ」
得意げな顔で言う深民に、さすがに坂内は突っ込んだ。
ええ、そんなぁ。その言葉に眉を寄せて口をとがらす様子が既に子供っぽいのだから仕方がない。
「うーん。あ、そうだ！ それなら先輩がちょっとかけてみてくださいよぉ」
「え？ 私が」
なんで、と言う間もなく、深民は小さく背伸びをすると坂内の顔に眼鏡をかけさせた。
視界を歪めることのないただのガラスレンズの向こうで、深民が顔を輝かせてこちらを覗きこんでる。
「わー！ 先輩似合いますよ！ 超おとなっぽいです！」
「え、ええ……？ そうかしら？」
そう言われると悪い気はしない。教室の窓ガラスの映り込みを見て、坂内は自分の顔をこっそりと確認してみるのだった。
……うん、悪くないかも。
教室を出た海原 茂は、見知った人影が教室の前にいるのに気がついた。
あれは、と目を細めてみると、先ほど会話した御巫 時子が小さく頭を下げるのが見えた。
「海原先輩、お疲れ様です」
「ああ、御巫もお疲れ様だ。……えーっと、俺の名前の由来の話だったな」
海原の言葉に、ええ、と御巫は嬉しそうに頷く。
「大した由来じゃないぞ？ 俺が生まれた日……庭の草がぼうぼうに茂っていたんだ」
改めて言うとなると気恥しい。ごほん、とわざとらしく咳をすると、海原は言った。
「……はい？」
さすがに予想外の言葉に、御巫は思わず首を傾げる。
「……いや、だから、今言ったままの理由だ。……大したことないと言っただろう」
生真面目そうに見えて、案外この先輩は親しみやすいところがあるのかもしれない。
そんな海原の様子に、御巫は思わず笑みを浮かべつつ頭を下げた。
「ふふ、面白い由来なんですね……。ありがとうございます」
休み時間にはさすがに堅苦しさを少しだけ緩める風紀委員の二人組。
矢萩 咲と北風 貴子が会話をしていると、お疲れさーん、と軽い調子で声をかけられた。
「ん？ あれ、あなたは……」
北風が顔を向けると、そこには派手な金髪の後輩――八十八旗 信彦の姿があった。
「あなた、一年生でしょう？ ここは三年生の教室です」
すかさず矢萩がきっぱりとした口調で言うが、八十八旗は気にした様子もなく肩をすくめる。
「失礼致しました先輩。けれどたまには下級生との交流も大事じゃないですか？」
たとえば授業の話とか。八十八旗はさりげなく話題をつなげる。授業の話、となると真面目な二人は表情からかすかに警戒心を薄れさせたようだった。うん、我ながらいい話題の流れだぞ……と内心で自画自賛しつつ。
「今日の授業は名前の由来だったんですよね？ 北風先輩のお名前は貴いと書いて貴子！ 正しく気高い君にピッタリの名前だね！」
「そ、そう……？」
臆面もなく褒められ、さすがの北風も少し嬉しそうな表情を見せる。
「ちなみに俺の名前は信彦。信は忠実であること、彦は容姿や才覚に秀でた男子の美称。彦星なんかがまさにそうだね」
どうです？ 俺にぴったりの名前でしょう。
爽やかに笑って八十八旗がそう言ったときだった。
どーん！ と大きな音が響いたかと思えば、教室のロッカーから掃除用具が飛び出してくる。
驚いて三人がそちらに目を向けると、モップや箒にまみれてそこに伏していたのは後木 真央の姿だった。
「う、うわっ、あれは同じ学年の……？」
「ちょ、ちょっとあなた！ そんなところで何やってるの？！」
ぎょっとして駆け寄る矢萩に、長時間ロッカーに身を潜めて疲れ果てた後木は後木は小さく呻く。
「ううう……真央ちゃんの名前は神社で決めてもらっちゃったので、センパイたちの感動巨編を聞きたかったの……だ……」
そこまで言うと、限界、というように後木はぽふっと突っ伏した。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2013年12月07日
- 参加申し込みの期限
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- 2013年12月14日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2013年12月14日 11時00分
