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もうひとつの卒業、桜色のにゃあ
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いっしょにお弁当を――これからも・1
猫の毛並みは、桜の花びらの色だった。やわらかなその色合いは、陽光を受けるときっといっそう美しく映えるだろう。
けれどもいま、猫は薄曇りの空を背に、開けはなたれた窓枠に静かに座っている。
前足をきっちりとそろえ、猫は彫像のように動く気配を見せない。眠気をさそうような春風が吹きぬけても、ひげがわずかにゆれるだけだった。
室内には白衣を着た男性がいる。猫の存在には気づいていないようだ。
前髪はぼさぼさと目にかかり、猫背のせいでやや小さく見えるその背中はどこか頼りなげだ。それなのに彼には妙な魅力があった。薄汚れてくたびれた白衣も、雑にむすばれたネクタイも、本人の無頓着さを語っているはずなのに、不思議と目が離せない。
たとえば、何気なくのぞく手の甲だ。日焼けもなく、すべすべとした肌で目を引く。彼の無造作な見た目からは想像もつかないほどつややかなのだ。目元が隠れているせいで印象が曖昧になるが、動作の合間にこぼれた横顔は、よく観察すれば意外に整っていることにも気づかされよう。温かみと、優しさも感じられる顔立ちだった。
もし彼が髪を整えて、スーツをビシッと着こなしたら――と想像してみるのも面白かろう。しかしそれは何かちがうのではないか。いまの彼の不器用な優雅さこそが、どこか愛くるしく魅力的なのだ。猫が飽かず彼を観察しているのは、それと気がついたからだろうか。
「そろそろ尽きてきましたね……また買わないと……」
独り言をつぶやきながら、男性は戸棚の奥からコーヒー粉末の缶を取りだした。ドリップ用の紙パックを取り出し、スプーンでコーヒー粉末をすくう。ざっくりはかり取った分量はちょうどいいように見えたが、不満だったらしく一度全部缶に戻し、ふたたび丁寧に、ゆっくりとすくい上げた。
「よし」
今度は上出来だったらしい。彼は紙パックを広げ、音もなく粉末を流しこんだ。職人のようにたしかな手つきだ。
部屋の一角では湯が沸いていた。でもそれは日常的な光景とは言いがたい。三脚に金網、そこに乗せられたガラス製のフラスコ――化学実験で使うような装置を使っていたのだから。熱源だってガスバーナーであり、そばには赤い液体の入った細長い温度計も用意されている。
彼はミトン越しに慎重にビーカーを取り上げ、温度を計測した。赤い目盛りをじっと凝視し、数秒そのままの姿勢でいる。
理想の温度になったのだろう、彼の肩の緊張がほぐれたのがわかった。ビーカーからのぼる湯気がただよう。
猫のひげがぴくんと震えた。
コン、コン、というノック音が静寂を破ったのだ。
猫は窓枠から外へと軽やかに飛び降りると、一度だけ窓を振り返ってから姿を消した。尾をぴんと立て、未練を感じさせる後ろ姿だったが、それも一瞬のこと、猫は寝子島高校を後にし、次の目的地へと歩き出した。
室内に視点をもどそう。彼は落ち着いた声で応じた。
「どうぞ、開いていますよ」
扉が少し軋(きし)む音とともに、少女が顔をのぞかせた。
薄絹のように滑らかな黒髪が、肩から背に流れている。細身の身体を包む制服は、彼女の清楚さを際立たせているようだ。伏し目がちな瞳は淡く青みがかった黒、ふと視線を落としたいま、静かな湖面のような光をわずかに帯びた。少女らしい丸みを帯びた頬と小さな唇は、いまにも壊れてしまいそうなほど儚(はかな)い。
「尚輝先生、こんにちは」
「こんにちは、御巫さん」
ちょうどコーヒーを淹(い)れていたところです、と告げると、
五十嵐 尚輝
は近くの丸椅子をすすめた。
だが
御巫 時子
は椅子に座ろうとしなかった。両膝をぴったりつけた直立不動の姿勢で、まっすぐに尚輝をすえて言う。
「今日は、おりいってお話がありまして」
声に強い意志が宿っている。唇をきつく結び、目の奥に熱をたたえているのもうかがえよう。だが、そのわりに彼女の指先は小さく震えてもいた。
しかし尚輝は気がついていないようで、「どうかしましたか?」 という口調は平素とまるで同じだった。
「卒業式まで、あとわずかです」
「ですよね」とうなずいたところで、あっ、と尚輝は言った。「そういえば今日、休校日でしたね」
尚輝は休みの日でも特に予定がなければ学校、というよりはここ化学準備室にこもりがちなので、あまり気にならなかったらしい。
「それで、僕にお話というのは?」
「ああそれは、それは……ですね」
笑う尚輝に機先を制された格好となり、いくらか迷ったものの時子は丸椅子に座ることにした。
これではどうにも言いにくい。そこで時子はおろした荷物から包みを取り出し、ささげもつようにして両手で尚輝にさしだしたのだ。
「お弁当、作ってきました……!」
「学校、お休みですのに?」
「いいんです。せっかく桜の花も咲いたことですし」
よくよく考えれば文脈の通らない話かもしれないが、尚輝には十分だったらしい。
「それはご丁寧に、ありがとうございます」
尚輝は深々と頭を下げ、
「どういたしまして。どうぞご賞味ください」
時子も、満足でいっぱいだったのだからそれでいいではないだろうか。
せっかくの休校日だ。化学準備室から化学室へ移ってつつみを解いた。
化学室のほうが窓が大きいからだ。競い合うように咲く桜の花を。ここからなら一面に眺めることができる。
ふたつの弁当箱を並べた。
桜色の弁当箱は時子のもの、一回り大きな若竹色のものは尚輝用だ。
ふたをあけるとかぐわしく、食欲をそそる香りがひろがった。
たぶん最後のお弁当だから特別なメニューに、との考えも頭をよぎったが、最後だからこそあえて、スタンダードな内容にすることに時子は決めた。
弁当の中身は、まるで彩りの見本帳のようだ。黄色あざやかな卵焼き、華を添える赤はプチトマト、しゃきしゃきの水菜とブロッコリーが、新鮮な緑を提供していた。肉は一口サイズのハンバーグに牛肉の佃煮、さらにグリーンアスパラのベーコン巻きだ。ポテト多めのふっくらポテサラは、尚輝の好みの和風味に仕立ててあった。俵おむすびはおかかを入れて、しっとり海苔で巻いてある。卵焼きやベーコン巻きはもちろんハンバーグに佃煮、ポテサラまですべて、時子が材料から選んで手作りしたものだった。卵焼きの甘さ加減から佃煮の濃さ、そしてポテサラの隠し味まで、細部にまで配慮がゆきとどいている。
「いただきます」
「めしあがれ。そして私もいただきます」
尚輝と時子は、微笑みとあいさつをかわして箸を取った。
「いつもありがとうございます。今日も食べられるなんて思いませんでした」
ふふ、と時子は笑みくずれる。
「サプライズ、です。尚輝先生は、きっと学校にいらっしゃると思って」
卵焼きを一口し、「ああおいしい……」と尚輝はしみじみ告げた。
時子は尚輝のことが好きだ。
こんな風に、嬉しそうに弁当をほおばる姿は特に。
食事のお供は淹れたてのコーヒーだった。香り高くコクがあって、安物の豆で淹れたものとは到底思えない。掃除洗濯はもちろん家事はよろず苦手な尚輝だがそこは研究者、実験道具を使えば最高の力量を発揮するのだった。もともと上手だったがますます腕をあげ、このところは名店にも負けないものを提供できるまでにいたっている。この最高のコーヒーを、専用のビーカーでいただくのもすっかりおなじみの光景となっていた。
「でも、これが最後になりそうですね」ぽつりと尚輝が言った。「こうして御巫さんと一緒に、学校でお弁当をいただくのは」
深く考えての発言ではなかったかもしれない。だが、時子の心臓は一瞬止まった。
尚輝先生。
先生がおっしゃった
最後
、という言葉はどこにかかるのでしょう。
学校で
、の部分ですか?
お弁当
、の部分だなんて言わないでください。私、卒業後だっていつだって先生のためにお弁当を作りますから。
……まさか……
御巫さんと一緒に
、の部分じゃないですよね?
尚輝に問いかけたくなる。実際、声に出そうになったくらいだ。けれどもこらえた。そんな風に迫られたら、きっと尚輝は答に窮してしまうだろう。
だから静かに深呼吸して、時子はこう告げることにした。
「私、尚輝先生と一緒にお弁当を食べる時間が好きでした」
ちらりと若竹色の弁当箱に視線を向ける。
水菜はあらかた消えていて、アスパラのベーコン巻も尚輝は食べ終えていた。ポテサラはあと半分くらい。プチトマトは残っているが、これもきっと完食するだろう。
「お野菜が苦手でも、いつも残さず食べてもらえて嬉しかったんですよ」
「たしかに僕は野菜嫌いです。お恥ずかしい……」尚輝は照れ笑いした。「でも、御巫さんが心をこめて作ってくれたものだから、残すなんてできませんよ」
頭に手をやる。照れたときの彼のクセだ。
「……それに、御巫さんの作ってくれるお弁当だと、不思議と野菜もいやじゃないんです。本当ですよ。僕の嗜好にあわせてくれているみたいで。前に申し上げたかもしれませんが、最近の僕の栄養補給は、ほとんど御巫さんのお弁当だった気がします」
褒めすぎです、と時子は言ってさらに聞く。
「お野菜は克服されましたか?」
「克服どころかまだその途上、というか入口にさしかかったばかりかもしれませんけど。でもおかげで僕、これまでよりずっと体調がいいです。御巫さんと知りあう……より前と比べて」
野菜も食べかた次第だと学び、以前よりはずっと食べられるようになったと尚輝は言った。
「嬉しいだけじゃなくて、ちょっと、誇らしいですね。ささやかながら先生の健康のお役に立てて」
「ささやかなんてことないです」
尚輝は時子を見た。箸は置いて両手は自分の膝の上だ。
「御巫さんのおかげで……僕は……僕は……、その……」
勢いこんだもののここで言葉が尽きたらしい。しばらく迷ったように空咳してやがて、
「生まれ変わったような、気がします。大げさでなく」
と尚輝はしめくくった。
「尚輝先生……」
許されるのなら、時子は尚輝の両手に自分の手を重ねたかった。
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シナリオタイプ(らっポ)
ゴールドシナリオ(200)
グループ参加
なし
シナリオジャンル
オールジャンル
定員
50人
参加キャラクター数
26人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2024年11月04日
参加申し込みの期限
2024年11月11日 11時00分
アクション投稿の期限
2024年11月11日 11時00分
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