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もうひとつの卒業、桜色のにゃあ
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いっしょにお弁当を――これからも・2
「ごちそうさまでした」
「おそまつさまでした」
食事は終わり、弁当箱のふたは閉じた。
「お弁当といえば」
と時子は言う。
「最初は尚輝先生の体調が心配で持って行ってたんですよね。顔色が悪かったり、食事を食べ忘れることがあるって聞いていたから」
尚輝は表情をゆるめた。
「そうですね。三日食事を忘れて倒れたこともありました。大学院のころですけど」
「三日も、ですか」
「ええ。救急車に乗りました。栄養失調で」
笑い話ではないのだが、つい尚輝も時子も笑ってしまった。尚輝ならありそうな話ではないか。
尚輝は窓の外の桜に目をむけた。
「僕はあまり、食事を楽しいと思ったことがなかったんです。学校の給食も苦手なものだらけで……。お腹が満ちたらそれでいい、くらいの考えでしたから」
でも、と尚輝の声に明るさがともった。
「御巫さんと食事するのはとても楽しいです。いろんなことを話せるし」
「ふふっ、私もです」
時子の声が甘やかな調子を帯びる。指先でテーブルの端をなぞりながら、ぽつりと言い足した。
「いまでは私、先生と一緒に食べることが、楽しくてかけがえのない時間になってます」
――でも、これが最後。
時子はその言葉を、空に溶けていく桜の花びらのように飲みこんだ。春の陽光は穏やかで暖かいはずなのに、心の内側には冷たい風が吹いている気がした。
最後。共有された事実をふたたび言葉にする必要はない。それがどんなに心を抉(えぐ)る結果になるか分かっているから。告げることで救われるのでは、とかすかな期待を抱いてしまう自分が悔しい。けれど、その声に従ったところで楽になどならない。むしろ、切り出した瞬間に目の前の風景すら色を失ってしまうような気がした。
どうしようもない感情が、時子の胸の奥でうめいている。
話題を変えよう。
「先生が、お昼に実験器具でコーヒーを淹れて待っているのも好きでした」
「風変わりなやりかたですよね。でも手慣れた器具を使うとうまくいくので」
尚輝は少し間をおいてから、ふと思い出したように言った。
「あ、そうだ。コーヒー」
「どうかしました?」
「今日、不思議だったんです。コーヒーを淹れているときにですね……自分でもびっくりしたんですが、僕はなんとなく、ふたり分を用意してたんです」
「それって」
尚輝はかすかに肩をすくめた。
「たぶん、いやまちがいなく、自分と御巫さんの分です。今日、休校日なのは頭ではわかっていたはずですが」
視線をそらしながら、尚輝は静かにつづけた。
「僕は……御巫さんが来てくれる、って、一方的に期待してたのかもしれません。期待は……かなったわけですけど」
「尚輝先生っ」
時子の声がはじけた。胸の内側が燃えさかるように熱い。焔(ほのお)たぎる溶鉱炉に、石炭をくべつづけているかのようだ。
時子の手は意思を持ったように勝手に動き出し、尚輝の冷たい手を包むように上から重ねていた。触れた瞬間、彼の手の冷たさが自身の熱と溶け合い、じんわりと溶けあっていくのがわかった。
「私、卒業してからも先生と一緒にご飯を食べたいです」
言葉に乗る呼吸は、不思議なくらい整っていた。けれど時子の内側では、感情の波が何度も押し寄せ、足元をさらっていく。
「ランチだけじゃなくて、夕食も。一緒に食べる時間を作りたいです。外食もいいですけど、私、先生のところに行ってご飯を作るのも楽しみにしています」
視界の端で春の陽射しがゆれる。眩しさに目を細めるその動きさえ、どこかもどかしい。時子は尚輝の顔を、ただまっすぐに見つめることしかできなかった。
「尚輝さ……いえ、尚輝先生、これからも私と時間を分かち合ってくれませんか?」
尚輝の背がぴんと伸びた。無意識の反応のようにも見えたけれど、前髪の下の瞳がかすかに震えたのを時子は見逃さなかった。けれどもたちまち彼の眉は、困惑したようにわずかに下がる。
「でも、ご迷惑……じゃないんですか」
ああ。
彼のそんなところが、どうしようもなく好きなのだと時子は思った。胸の奥で燃える感情は、彼の言葉で少し沈みかけ、でも次の瞬間にはまた炎をあげた。
「そんなことないです」
時子は即座に否定した。口ではなく、心臓が声を出したような気がした。そうして子どもを諭すように、けれど決して押しつけがましくない語り口で彼女は静かに言葉をつむいだのだ。
「言いましたよね? かけがえのない時間だって」
「僕にとっても、そうです」
その言葉がどれほどの重みを持つのか、時子は理解していた。尚輝の真摯な口調と、次第に力強さを増す指先から伝わってきた。そうだ、時子は気づいてしまった。尚輝が、自分の手をそっと握り返していることに。
「それに、先生のお部屋、物が散乱しないように定期的にお片付けに行きたいです。もっとも、一緒に片付けた時間も、私にとっては大切な思い出ですけれど」
「お願いします。あ、いや、もちろん散乱しないよう気もつけますけど……」
卒業すれば、もう教師と生徒の関係ではなくなる。
その先に待つ関係を、恋人同士と呼ぶのにためらう必要はないはずだ。
けれど尚輝はどうだろう。その自覚があるのだろうか? 時子の胸の中でそんな思いがかすかに膨らんだのは、このときだった。
「……あっ、僕うっかり! し、失礼しましたっ!」
尚輝は突然、声を裏返して狼狽した。どこか幼さを残しているように見える。互いの手が絡み合い、指先までもしっかり触れ合っていることに尚輝はようやく悟ったらしい。
「あの、えっと……!」
言葉にならない声を漏らしながら、尚輝は勢いよく飛び上がった。その拍子に丸椅子がぐらりと揺れ存外に大きな音を立てて倒れた。それが尚輝の焦りをますますさそった。
時子は一瞬きょとんとしたものの、すぐに笑みをこぼした。尚輝の不器用さをどうしようもなく愛おしく感じてしまう。
時子は息をととのえるように視線を外し、ふいに窓辺に歩みよった。神託を授かる巫女のように慎ましやかな歩みだったが、ゆるぎない決意も宿っていた。
「尚輝先生、外……風が出てきましたね」
場を和らげるためのささやかな一言だ。しかし本当は、嵐の前触れの静けさにも似た、緊張と安堵が入り混じるひとときだった。
「本当に」
尚輝も照れ隠しのように肩を並べて立つ。ぎこちなくも素直な仕草に、彼らしさがにじんでいる。
窓の外に広がる桜の木々。柔らかな薄紅色の花びらが風に誘われ、空に舞い上がっている。まだ満開にはわずかに早いけれど、先駆けるように散る花がひらひらと踊っていた。
風が運ぶ花びらが数枚、窓枠をこえて室内へと舞いこんだ。
時子は花びらを眺めながら、小さく手を握りしめた。手のなかに未来への鍵を握りしめるかのように。
「それから、尚輝先生――」
言うならいましかない、この一瞬を逃さないと、内なる何かが告げていた。
「卒業旅行、一緒に行ってくれませんか……私と」
時子の瞳は真剣そのものだった。想いは、そのまま尚輝の胸にとどいたにちがいない。
尚輝は驚いたように時子を見たがすぐに応じた。
「どこへ行きたいですか」落ち着いた声だ。もしかしたら、時子の考えを読んでいたのかもしれない。
「沖縄、なんてどうですか」
夏に、尚輝が同僚たちと行った場所、時子が同行を切望していたがかなわなかった場所だ。日帰りはありえない。つまりそれは、婚前旅行という意味合いにもなるだろう。
しかしやはり、尚輝はにこやかに応じたのだった。
「いいですね。海のきれいなところで、コーヒーでも淹れましょうか」
声に混じる微笑みが、時子の胸の鼓動をさらに早めた。
「はい! そのときは、私が一緒にお弁当を作りますね」
時子の声ははずんでいた。それは春を唄う鳥の囀(さえずり)りのようで、尚輝の耳にも心地よく響いたにちがいない。
やわらかな沈黙が訪れた。言葉はなくても、そこにはたしかなものが流れている。花びらが舞い落ちる音すら聞こえそうな静けさの中、春の風がふわりと吹き抜けた。
桜の花びらは、ひとつひとつが小さな誓いのようだった。舞い上がり、ただよい、そして新たな季節へとつながっていく――その未来を信じるように。
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担当ゲームマスター
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阿瀬春
墨谷幽
シナリオタイプ(らっポ)
ゴールドシナリオ(200)
グループ参加
なし
シナリオジャンル
オールジャンル
定員
50人
参加キャラクター数
26人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2024年11月04日
参加申し込みの期限
2024年11月11日 11時00分
アクション投稿の期限
2024年11月11日 11時00分
参加キャラクター一覧
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