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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
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早咲きの桜と、あなたと
春爛漫……と呼ぶには気が早いけれど、日中は過ごしやすい暖かさになってきた。
元気一杯な菜の花が春の訪れを告げたかと思えば、そろそろ桃の花も咲こうという頃。花屋でバイトをしている京極 花音にとって花はとても身近な物で、店で扱っている花は元より、そうでない花も心温まる存在だ。
それはきっと、花が好きだった母の影響もあるだろうが――暁月 静の存在も無視できない。
（昨日は水仙を買いに来てくれたんだよな……春咲きの物は冬咲きより大きいって話を興味深く聞いてくれて）
ただのちょっとした豆知識だ。それでも彼女は、細かい違いを知れて嬉しいと喜んで、受け取った水仙を愛おしそうに眺めていた。
（その静さんの、なんて可愛いことかっ！） 
拳を握り、心に録画した静の微笑みを何度も再生してみるのだが、生憎と今日はバイトが休み。ようやっと彼女の名前を知れた花音には、デートに誘うどころか偶然出会えそうな場所すらわからない。
いや、おそらく……バイト先、つまり花屋の常連である静は、切り花だけでなく野に咲く花も愛でることだろう。以前も秋の花で彩られたエノコロ岬で偶然見かけたこともあるし、植物園でも会ったことがある。
（まあ、植物園はチョコ作りにだったけど、やっぱり花が好きなんだろうな。……ってことは、だ）
ガラリとおんぼろアパートの窓を大きく開けて、九夜山を見上げる。広大なあの山で、花の綺麗な場所を特定するのは難題だろうが、いずれ彼女をエスコートするならば、多種多様の花が見られる九夜山しかない。
（いや別に、静さんは花が好きだから偶然会えるかも……とか、そんな下心があってじゃなくて！）
彼女に説明できるくらい、野山の花にも詳しいか下調べと言うとこだ。今は。そう、今日のところは。
「っし！ そうと決めたら、行くか！」
相当な方向音痴ではあるが、九夜山は見えている。山へ行くのに迷子にはなるまい。
手つかずだった課題を放り投げ、花音は目指す。まずは山の歩ける道――ハイキングコースを。
なんとか獣道には迷い込まず、遊歩道を進んでこられた花音は、実に達成感のある顔で花畑に立っていた。
（早咲きの桜を見に来た人たちのおかげで、大惨事にはならなかったな）
しかも、いい話まで聞けた。なんでもこの花畑の先には、花に関連したメニューが食べられるんだとか。そんな可愛らしい上、静との話題に打って付けな店を見逃す手はない。
（もうすぐ花見の時期だし、静さんをデートに誘っ……いや、軟派な意味では無く、同じ花好きとして!!）
今日は少し煩悩が過ぎるのではないか。帰りに滝に打たれて帰ったほうが良いのではないか。雑念を振り払いつつ話題の喫茶店に入店した花音は、メニューにざっと目を通し『ご希望の花があれば、ご相談下さい』の文字に驚いた。
例えば注文した人をイメージした花や、花言葉など意味を込めたオーダーに対応すると書いてある。
「あの、この花言葉って……なんでもいいんスか？」
「言葉のイメージに合う花かを最終的に決めるのはお客さんだけど、できるだけ希望に合わせるよ」
「じゃあ、その……恋愛成就みたいなヤツって……いや、ないッスよね、さすがに」
「…………あるよ」
店主はにやりと笑って厨房に入ると、花音のためのメニューをすぐに用意して戻ってきた。
皿に並んでいるのは、３つの小さなタルト。赤・ピンク・白のガーベラを模しており、飲み物には青いミニバラを添えたローズスカッシュ。
しかし、花言葉に詳しくない花音には、これだけ出されてもよく分からない。唸る花音を微笑ましく思いながら、店主はカードを渡してきた。ＱＲコードがプリントされていて、九夜山で見られる見頃の花スポットや花言葉なんかが見られるサイトに繋がるらしく、花音はありがたく受け取りサイトを見てみる。
（えっと、まずガーベラは……）
赤は『常に前進』や『チャレンジ』、ピンクが『熱愛』、そして白は『希望』となっている。恋愛を成就させるには、諦めず希望を持って邁進しろということだろうか。では、青薔薇はというと――。
（夢、叶う!?）
思わず花音は立ち上がり、大きな声で店主に礼を言っていた。その様子をクスクス笑う者もいたが、構うものか。こんなに背中を押して貰って、礼も言えないような男では静をデートに誘えない。
「あ、やっぱり！ 京極さんの声に似てるなって思ったんですよ」
雑貨コーナーを見て回っていたという静に声をかけられ、さっそく御利益があったと舞い上がる花音は、緊張して彼女に席も勧められない。けれど、彼女は「いいお店ですよね」と言いながら花音のテーブルを見た。
「あれ……？ 京極さん、これって」
「いや、これは！ 最近作ったブーケで印象に残ってた組み合わせでっ！」
「そうなんですね。その人、告白かプロポーズに行ったのかな……ふふ、素敵な花束」
１本のバラは『あなたしかいない』、そして３本のガーベラは『愛しています』と、そんな意味を持つ。
それに花音が気づくのは――もう少し、先かもしれない。
元気一杯な菜の花が春の訪れを告げたかと思えば、そろそろ桃の花も咲こうという頃。花屋でバイトをしている京極 花音にとって花はとても身近な物で、店で扱っている花は元より、そうでない花も心温まる存在だ。
それはきっと、花が好きだった母の影響もあるだろうが――暁月 静の存在も無視できない。
（昨日は水仙を買いに来てくれたんだよな……春咲きの物は冬咲きより大きいって話を興味深く聞いてくれて）
ただのちょっとした豆知識だ。それでも彼女は、細かい違いを知れて嬉しいと喜んで、受け取った水仙を愛おしそうに眺めていた。
拳を握り、心に録画した静の微笑みを何度も再生してみるのだが、生憎と今日はバイトが休み。ようやっと彼女の名前を知れた花音には、デートに誘うどころか偶然出会えそうな場所すらわからない。
いや、おそらく……バイト先、つまり花屋の常連である静は、切り花だけでなく野に咲く花も愛でることだろう。以前も秋の花で彩られたエノコロ岬で偶然見かけたこともあるし、植物園でも会ったことがある。
（まあ、植物園はチョコ作りにだったけど、やっぱり花が好きなんだろうな。……ってことは、だ）
ガラリとおんぼろアパートの窓を大きく開けて、九夜山を見上げる。広大なあの山で、花の綺麗な場所を特定するのは難題だろうが、いずれ彼女をエスコートするならば、多種多様の花が見られる九夜山しかない。
（いや別に、静さんは花が好きだから偶然会えるかも……とか、そんな下心があってじゃなくて！）
彼女に説明できるくらい、野山の花にも詳しいか下調べと言うとこだ。今は。そう、今日のところは。
「っし！ そうと決めたら、行くか！」
相当な方向音痴ではあるが、九夜山は見えている。山へ行くのに迷子にはなるまい。
手つかずだった課題を放り投げ、花音は目指す。まずは山の歩ける道――ハイキングコースを。
なんとか獣道には迷い込まず、遊歩道を進んでこられた花音は、実に達成感のある顔で花畑に立っていた。
（早咲きの桜を見に来た人たちのおかげで、大惨事にはならなかったな）
しかも、いい話まで聞けた。なんでもこの花畑の先には、花に関連したメニューが食べられるんだとか。そんな可愛らしい上、静との話題に打って付けな店を見逃す手はない。
（もうすぐ花見の時期だし、静さんをデートに誘っ……いや、軟派な意味では無く、同じ花好きとして!!）
今日は少し煩悩が過ぎるのではないか。帰りに滝に打たれて帰ったほうが良いのではないか。雑念を振り払いつつ話題の喫茶店に入店した花音は、メニューにざっと目を通し『ご希望の花があれば、ご相談下さい』の文字に驚いた。
例えば注文した人をイメージした花や、花言葉など意味を込めたオーダーに対応すると書いてある。
「あの、この花言葉って……なんでもいいんスか？」
「言葉のイメージに合う花かを最終的に決めるのはお客さんだけど、できるだけ希望に合わせるよ」
「じゃあ、その……恋愛成就みたいなヤツって……いや、ないッスよね、さすがに」
「…………あるよ」
店主はにやりと笑って厨房に入ると、花音のためのメニューをすぐに用意して戻ってきた。
皿に並んでいるのは、３つの小さなタルト。赤・ピンク・白のガーベラを模しており、飲み物には青いミニバラを添えたローズスカッシュ。
しかし、花言葉に詳しくない花音には、これだけ出されてもよく分からない。唸る花音を微笑ましく思いながら、店主はカードを渡してきた。ＱＲコードがプリントされていて、九夜山で見られる見頃の花スポットや花言葉なんかが見られるサイトに繋がるらしく、花音はありがたく受け取りサイトを見てみる。
（えっと、まずガーベラは……）
赤は『常に前進』や『チャレンジ』、ピンクが『熱愛』、そして白は『希望』となっている。恋愛を成就させるには、諦めず希望を持って邁進しろということだろうか。では、青薔薇はというと――。
（夢、叶う!?）
思わず花音は立ち上がり、大きな声で店主に礼を言っていた。その様子をクスクス笑う者もいたが、構うものか。こんなに背中を押して貰って、礼も言えないような男では静をデートに誘えない。
「あ、やっぱり！ 京極さんの声に似てるなって思ったんですよ」
雑貨コーナーを見て回っていたという静に声をかけられ、さっそく御利益があったと舞い上がる花音は、緊張して彼女に席も勧められない。けれど、彼女は「いいお店ですよね」と言いながら花音のテーブルを見た。
「あれ……？ 京極さん、これって」
「いや、これは！ 最近作ったブーケで印象に残ってた組み合わせでっ！」
「そうなんですね。その人、告白かプロポーズに行ったのかな……ふふ、素敵な花束」
１本のバラは『あなたしかいない』、そして３本のガーベラは『愛しています』と、そんな意味を持つ。
それに花音が気づくのは――もう少し、先かもしれない。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2024年09月24日
- 参加申し込みの期限
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- 2024年10月01日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2024年10月01日 11時00分
