アホー！　～そしてカラスは闇夜に哂う～｜リアクション

アホー！　～そしてカラスは闇夜に哂う～

　ののこ救出に奔走する者もいれば、逆の者もいる。
　カラスの縫いぐるみとなった、大天使天吏は以前テオと接触した際に、彼女が愛する鳥を他の者が追い掛け回すのを目撃し、少なからず疑問を感じていた。
「私は、鳥を虐める人が大嫌い……」
　抑揚のない声を落とすと、天吏は飛び立ち取り巻きのカラスに接触を図る。
　しかし、互いに言葉は通じない。
　小首を傾げ、それならばののこを誘惑しようとコースターに近づくが、どれがののこか判別が出来ない。
　天吏は、クローネをまず探す事にした。

　そしてこちらも、我が道を行く男、骨削瓢。
　彼は猫鳴館地下帝国（地下通路）の守り神与作像に身を変え、戦いは他人にやらせて鶴嘴かついで先を行く。

　――あっしの求める混沌世界。それを実現するため、落神を潰してみたらどうだろうかねぇ？

　今回もブレない瓢は、ジェットコースターのレールを鶴嘴で破壊し、脱線させるべく行動を起す。
　もっとも。これだけ人目がある場所での、あからさまな妨害という分かりやすい敵対行為は、すぐに新たな妨害という形で阻まれたのであるが。

「おのれ！　俺のかわいい嫁である、うさぎさん達を傷つけるつもりか！？　容赦はしないぞ！」
　激おこぷんぷん丸なのは、愛するうさぎさんの化身、行梨謡である。
「あんなの、ただの縫いぐるみだよぃ」
「俺のうさぎさんに！　俺の嫁(妄想)にっ！！
　俺の、うさぎさんへの愛を、舐めるなよッ！　――くらえっ、らびっしゅ！！！しゅ！！！」
　相変わらず無駄に良い声のエコーが木霊して、謡は瓢に拳を突き出す。

「おぉっと、とんだ邪魔が入っちまいやしたねぇ」
　のらくらと攻撃をかわしながら、瓢は後退する。
　が、走ってきたジェットコースターは避けられなかった。ついでに謡も巻き込まれたのは、ご愛嬌だろうか？
「らびっしゅ！！？しゅ！！？」

　瓢を道連れに、親指を立てた謡の姿は溶鉱炉……は無かったが、真っ逆さまに沈んでいく。

　木っ端微塵になって転がって尚、瓢は痛くもかゆくも無かった。
「ふむ……ののこを落としても、似たような結末だったかねぇ？」
　全く持って、つまらない。だがそれなら何故、クローネはののこを狙う？

　いや、そもそもクローネは……――？？？
　上部の欠けた頭を、ようやく目先以外の事柄が掠めたが、瓢はもう指先一つ動かせない。