アホー！　～そしてカラスは闇夜に哂う～｜リアクション

アホー！　～そしてカラスは闇夜に哂う～

「飛行部隊の構えは二段構えですよぉ」
　クローネに接近した荒太郎、その背に乗った、幽は不敵に微笑んだ。
　蓮と同じく、ひとである彼の狙いは、クローネの風きり羽根。

「荒太郎殿、今じゃ！」
　カエルいいなは荒太郎に合図を送ると、カラスの頭を八艘飛びしてフクロを抜け出し、クローネに飛びかかる。
「クローネ、ぼくが相手だ！　女の子には手を出しちゃいけないんだけど、悪もんは別だよー！　くらえっ！」
　荒太郎もまた、幽のために値千金の時間を作り出そうと、神に挑む。

　表情を引き締めたいいなが、伸ばした指が滑らかな濡れ羽色に掛かる、そう確信した時。
　一寸、浮き上がった、軽い体。
　ニタリと哂ったカラスと、視線がかち合い、寒気が走った。

　一番最初にいいなの指に触れたのは、一枚抜かれて放たれた、カラスの黒い羽根。

　近接していた幽が、フクロに入った蓮ごと荒太郎が、その他、クローネの周りに居た者達が引っくり返る。
　そうして仰ぎ見たのは、20歳前後の妖艶な人間の女性の姿に変貌した、クローネだった。
　豪奢な羽根マフラーが、見事な肢体を飾っている。

　――儂の……＜ＴＲＡＮＳＭＵＴＥ＞！！？
　愕然と、いいなは身を震わせる。

　クローネはいいなの神魂を暴走させる事で巧みに操り、その能力を一時的に得たのだ。

　――神魂を……こんとろおる、されておる……！

　いいな自身が大人の姿（彼女はデネボラと名乗っている）にならずに済み、また目の前のクローネの姿とは、全くの別物であるのが、いいなにとってはせめてもの救いだろうか。

「あ～ら、残念だったわねぇ？」
「……うぐぅ、貴様ぁ……許さん、許さんぞ……！」
　いいなは呪いの言葉を、喉から搾り出した。

　――まずい。ジェットコースターで頑張ってる皆のためにも、クローネの注意をこちらに向けて時間を稼がねぇと！

　風雲児轟は意を決して、クローネに向かって叫ぶ。
「俺は寝子島の平和を守るヒーロー、超新星戦士【ザ・シャイン】！
　クローネ、なぜこんな事をしている？　頼む、もうこんな事はやめてくれ！」

　黄色いぴよこの翼が、頭を振って訴える轟に並んで人型を取る。情報拡散し戻ってきた、桜井ラッセルだ。
「よお、クローネ！　流石にもう覚えたよな？
　うるっさいカナリアの俺だけど、前回の質問の回答くれよ。お前は何を望んでるんだ？」
　余裕綽々のクローネの動きに神経を尖らせながらも、ラッセルは追求の姿勢を崩さない。

「あはっ……いいわぁ、じゃあ教えてアゲル～」
　喉を鳴らして笑いながら、クローネは上を向き、そうしていかにも能天気な声を上げた。

「新入生の誓い。落神、クローネぇ～」

「「「！！！？」」」
　それを聞き、かつ覚えていた者は、皆一様に耳を疑い、顔を上げた。
　これは、ののこが地上に落ちてきた日の。
　そう新入生の誓い……。

「あたしはぁ、寝子島で……仲間と一緒に、楽しく過ごしまぁす♪

　屋上で昼寝してぇ～
　ワイングラス回しながら
　仲間とくだまきまぁす
　暇な夜はバーで酔いつぶれまぁす
　ウィスキーでぇす

　飲み屋で歌いまぁ～す
　悪戯して、皆を苛々させまぁす
　ろっこんを暴走させまぁす
　失敗もさせまぁす

　もっと弱いもの苛めしたいでぇ～す
　しちゃいまぁす
　皆の困る顔が見たぁ～い
　もっともっと、たぁくさ～ん
　とにかくえっとぉ、世界を混乱させたぁい

　フフン♪
　混乱、さ、させまぁ～す」

「「「クローネ！！」」」
　怒声が上がる。

　そして……。